第15話 講習準備
冒険者ギルドを出た俺は、その足で冒険者の必需品を購入するため冒険者御用達の道具屋へ行った。
屋台のおじさんの話では、よく冒険者たちが利用している道具屋だそうだ。
それは、冒険者ギルドの向かいにある道具屋で、確かに冒険者が良く利用するので冒険者御用達と認識されているらしい。
「ここが、道具屋なのか」
道具屋の前にきて、そう口にした後、俺は中へ入っていく。
店の中に入ると、冒険者と思える人たちが何人か棚に並べられた品を見ている。
必要な物や補充する物を選んでいるのだろう。
俺は店内に入り、まず見て回る。
すると、初心者冒険者のコーナーが作られていた。
そこには、丁寧なポップで初心者冒険者が必要な品が説明されている。
『冒険者になったなら、これだけは持っていけ』
『これは、討伐には欠かせないぞ』
『薬草採取では、これを使うことで報酬が増える』
など、たくさんのポップで購買欲を掻き立てている。
また、初心者必要セットなるものも紹介されていた。
「万能ナイフ、ロープ、タオル、などをひとまとめに収納可能なリュック。
これを初心者セットとして販売、か。
え~と、価格は銀貨一枚……」
リュックの色も選べて、人気商品らしい。
俺は、青色を選ぶとカウンターへ持って行き、購入した。
「まいどあり~」
道具屋を出ると、明日の初心者講習に備えて南門に近い宿を使うことにした。
でも、宿を使うのは泊まるためではない。
扉召喚をするためだ……。
南門に近い宿を見つけ、中に入る。
すると、カウンターにいたおばさんが声をかけてくれる。
「いらっしゃい、泊まりかい? それとも食事かい?」
「素泊まりでお願いします」
「食事はいいのかい。
ならば、銅貨三十枚だね」
「ではこれで……」
「……はい、ちょうどだね。
これが鍵だよ。
部屋は、二階の一番奥だ。トイレは、同じ階にある」
「ありがとう」
鍵を受け取り、二階への階段を上がり一番奥の部屋へ移動する。
そして、部屋の前で鍵を開け、中へと入った。
部屋の中は、ベッドにクローゼットがあり小さな机と椅子がついている、シンプルな部屋だった。
広さは、おそらく六畳ぐらいだろう。
扉に鍵をかけ、俺はすぐに自分のステータスを確認する。
ゴブリンをあれだけ倒したのだ、レベルが上がっていておかしくはない。
「……よし! レベルが六に上がっている。
これで体力も魔力も上がるな!
……でも、召喚できる扉は増えていなかったか。
次に召喚できる扉の種類が増えるのは、どれくらい上げた時なのか……」
さらに、スキルも増えていなかった。
相変わらず、異世界言語理解とアイテムボックスに扉召喚の三つだけだ。
……まあ、増えないのはしょうがない。
今あるスキルで、何とかしていくしかないしな。
では次に、消費した弾薬とメンテナスのために扉を召喚する。
「【ガンショップの扉 召喚】」
そう唱えると、床に魔法陣が現れ、そこから分厚い扉が出現する。
出現しきると、俺はドアをゆっくりと開けた。
「いらっしゃい、主」
「おう、ロバート」
ここの店長のロバートの姿を確認して、カウンターに使づく。
そして、ホルスターから銃を抜くとカウンターの上に置いた。
さらに、アイテムボックスから使いきって空になったマガジンを二つ置き声を掛ける。
「銃のメンテナンスと、補充をお願いする」
「了解、主。ちょっと待っててくれ……」
そう言って、カウンターに置いた銃と空のマガジンを持って奥へと移動した。
その間に、俺は店内を見渡すと棚に銃が並べられていた。
「あれ? 新しい銃が並んでいる?」
「ああ、気づいたかい主。
主のレベルが上がったからな、取り扱える品が増えたんだよ。
もっとも、まだ初心者のレベルではあるがな?」
「へぇ~」
そう言われて、並べられている棚を見に行く。
そこには、散弾銃と呼ばれる銃が二つ並べられていた。
「……これって、散弾銃か?」
「よく知ってるな、主。
それは、クレー射撃でよく使われる散弾銃だ。
狩りには使えるが、戦いむきではないな。装弾も二発と少ない。
が、威力はある。
俺としたら、散弾銃よりショットガンの方がおすすめだな」
「それが棚に並ぶには、後いくつレベルをあげればいいんだ?」
「さあな~。
ほい主、メンテナンスと弾薬の装填、終わったぞ。
それと、装填積みのマガジンを五つ追加で持っていきな」
「ありがとう、ロバート。
またレベルが上がったら、召喚させてもらうよ」
「一回ごとの戦闘で、メンテナンスはした方がいいぞ、主」
「了解」
ロバートから銃を受け取り、腰のホルスターへ入れる。
そして、出したマガジン二つと追加の五つを受け取って、アイテムボックスへ仕舞った。
その後、ガンショップを後にする。
扉を出ると、ガンショップの扉が送還される。
そして、次に呼び出した扉は自宅のマンションの扉だ。
「【自宅の玄関扉 召喚】」
そう唱えると、再び床に魔法陣が出現し玄関扉が現れた。
完全に現れたことを確認すると、俺は扉を開ける。
「おかえりなさいませ、主様」
「ただいま、アニス」
「では主様。まずは、アイテムボックスに入っている食材をキッチンで出してもらえますか?」
「ああ、分かった」
そう返事をして、玄関で靴を脱ぎキッチンへ移動する。
キッチンに来ると、アニスが指示を出した。
「ここに、買ってきた食材を並べてください。
ああ、小麦は床に袋ごとお願いします」
「あいよ」
そう言われ、俺はアイテムボックスから朝市で購入した食材をすべて出した。
たくさんの食材を見て、アニスは満足げだ。
「これで、主様に美味しいものを作ってあげることができます。
では、お風呂を用意しておりますので主様はゆっくりと、疲れを癒してくだし」
「ありがとう、アニス」
俺は、寝室に移動し着替えを持って風呂場へと移動する。
その移動時に、キッチンの様子が見えたが、アニスはすでに料理に取りかかっていた。
それも、鼻歌を歌いながらだ。
楽しそうで良かった……。
読んでくれてありがとう。
これからも頑張ります。




