第14話 調査と報酬
森を慎重に進み、ようやく八匹のゴブリンの死体がある場所まで戻った。
そしてすぐに、八体のゴブリンをアイテムボックスに仕舞った。
「え~と、これで倒したゴブリンは……、あれ?
アイテムボックス内に、十九匹のゴブリンの死体がある。
確か、俺の倒したゴブリンは……十五匹。
後の四匹はどこから……、あ! 薬草採取の時のやつか」
どうやら、処分するのを忘れていたようだ。
でも、倒した場所が違うから一緒には報告できないか……。
仕方ない、アイテムボックスに仕舞ったままにしておこう。
そろそろいい時間だし、今日中に帰るならこれでゴブリン退治はおしまいだな。
そう思い、俺は森を出るために引き返していた。
慎重に森を進み、もうすぐ出られるというところでゴブリンに出会った。
それも五匹。
森の外を窺っていたゴブリンに、出会ってしまったみたいだ。
『ギャッ!』
「何で!」
持っていた銃を構え、すぐにゴブリンに向けて撃つ!
パンパンと乾いた音を響かせながら、ゴブリンを倒していくのだが、反撃がないわけではない。
棍棒を振り回しながら、ゴブリンが迫ってきたときは肝を冷やしたが、屈んで避けて至近距離から銃を撃ち、ゴブリンを倒していく。
そして、何とか五匹のゴブリンを倒した。
「ふぅ、何とか倒せた……」
もうすぐ森を出るここで、ゴブリンから討伐証明の片耳を取っておこうか。
と、思ったのだがナイフを持っていないことに気づく。
そこで、ゴブリンが使っていた錆びた剣を使って耳をそぎ落とすことにした。
森で倒したゴブリン十五匹をアイテムボックスから取り出し、その中のゴブリンが使っていた錆びた剣も取りだす。
「……これで、そぎ落とせるといいんだけど」
錆びた剣を振り、ゴブリンの耳を落とせた。
一応切れるようで安心した俺は、どんどんゴブリンの耳をそぎ落としていく。
そして、二十匹のゴブリンすべての耳をそぎ落とすとアイテムボックスに仕舞う。
もちろん、死体も耳も仕舞った。
耳を入れる袋がなかったからだ。
とにかく時間もないと思ったので、森を出た後、畑の管理小屋を目指した。
すると、俺の前にこの依頼を受けた冒険者らしき姿があった。
「それ、本当ですか?!」
「ああ、森の中でゴブリンと戦っていて、感じたんだよ。
いつもより、数が多いってな」
「そうだな。
いつもは二、三匹でいるゴブリンが、五匹でうろついているのもいたな」
「五匹……。
もしかすると、ゴブリンの上位種が生まれたかもしれないな」
「上位種? ホブゴブリンとかいうやつか?」
「もしくは、ジェネラルかキング。
これは、冒険者ギルドに報告して調査が必要だ」
「なら、当分ゴブリン討伐依頼は、中止か?」
「中止だな。ギルドの調査が終わるまでは……」
「そうか……」
冒険者と、管理小屋の職員の会話から、森の中でゴブリンの数が多くなっているらしい。
確かに、俺の倒したゴブリンも五匹でいた集団もいたな。
ということは、あれが異常な集団ということなのか。
知らずに倒していたが、もし知っていたら避けていたかもな……。
前にいた冒険者がいなくなり、俺の番になった。
「森でのゴブリン討伐を終えました~」
「ああ、お疲れさまでした。
どうでした? ゴブリンの様子は」
「三匹でいたときは、倒しやすかったんですけど、五匹となると難しくなりますね」
「あ~、やはり五匹でうろついている集団がいましたか。
先ほど、その報告を聞いて調査が入ることになると思います。
ですから、しばらくの間、ゴブリン討伐の依頼は中止になりますので」
「そうなんですね……」
「ああ、それと、これを渡すのを忘れていました」
そう言って職員は、話をしていた窓の下から黒い布袋を取り出した。
「これは、ゴブリンの討伐証明になる耳を入れる袋です。
これをお渡しするのを忘れていて、申し訳ないです」
「いえ、俺も耳を入れるものが貰えないか、聞くつもりでしたから」
「では、こちらをどうぞ」
「ありがとうございます」
布袋を受け取り、管理小屋を離れてコルバナの町へ戻る。
町へ戻る道中に、ゴブリンの耳をアイテムボックスから布袋へ移していく。
俺は町への帰り道、街道を通りながらあの森に上位種のゴブリンがいるという話を思い出していた。
確かに、五匹の集団でいたが難なく倒せた。
本来のゴブリンとの戦闘は、剣や魔法での戦闘となるはず。
ということは、一匹ずつ戦い、その間に他のゴブリンが仲間を呼んで増えていくという構図になるわけだ。
確かに、ゴブリン戦は大変だな……。
コルバナの町の北門に到着し、門番にギルドカードを提出。
身分証明ができたら、そのまま町に入ることができる。
町に入った俺は、すぐに冒険者ギルドへ向かった。
冒険者ギルドに入ると、大勢の冒険者でごった返していた。
コルバナの町の冒険者って、こんなにいたんだな……。
とりあえず、受付へ行くと列ができていた。
俺は並ぶのは好きじゃないんだが、しょうがないと割り切って列の短いところへ並んだ。
列の身近に所は、俺の前に三人しかいなかったのですぐに受付嬢の所まで到達した。
「今日もお疲れ様です。さて、どうされましたか?」
「ゴブリン討伐依頼の報告に来ました」
「では、討伐証明の部位を納品してください」
「えっと、ここに出して大丈夫ですか?」
「ええ、こちらのトレーの上にお願いします」
そう言われたので、アイテムボックスから黒い布袋を取り出しトレーの上へ置いた。
「では、ギルドカードをお願いします」
俺のギルドカードを取り出し、トレーの横へ置く。
「では森島様、討伐証明部位を数えてまいりますので少々お待ちください」
そう言って、受付嬢は黒い布袋の載ったトレー事、奥へと入っていった。
そして、ものの三分ほどでカウンターに戻ってきた。
「お待たせしました。
ゴブリン、二十匹分の証明部位を確認しました。
では、こちらが報酬の銀貨二枚になります」
「ありがとうございます」
そうお礼を言って、銀貨二枚を受け取る。
あのゴブリンとの戦闘で、銀貨二枚は低い気もしないでもないが、今回はレベル上げを優先したからな。
「では、またのご利用をお待ちしております」
そう一礼して言われ、俺はカウンターを離れて冒険者ギルドを出ていった。
とりあえず、このお金で明日の新人講習に備えるか……。
読んでくれてありがとう。
これからも頑張ります。




