第11話 納品と朝市
持っていた棍棒を振り回してくるゴブリンの攻撃を、何とかしゃがんで躱し、ゴブリンの横へ移動することができた。
すぐに銃を構えて、ゴブリンの頭を狙って引き金を引く!
パンパンと乾いた音が響くと、ゴブリンが前のめりに倒れ動かなくなった。
どうやら、全弾命中したようだ。
さすが、命中補正のあるベレッタM9タイプのファンタジー仕様だ。
百発百中の銃なんて、普通はありえないぞ?
「これで、ここにいたゴブリンはすべて倒したか?」
ぐるりと周りを警戒するも、何かが出てきたり襲いかかったりはしてこない。
どうやら、倒してしまったようだ。
倒したゴブリンを、このままここに放置しておくわけにもいかないので、アイテムボックスの中に四体すべてを仕舞い、薬草の群生地を後にする。
来た時と同じ、獣道を通り森を出ると、コルバナの町へ向かった。
南門で、冒険者ギルドのギルドカードを出して門番に挨拶する。
「おはようございます」
「おお、おはよう。
森から来たってことは、昨日は一晩森で過ごしたのか?
ゴブリンに襲われなかったか?」
「はい、大丈夫でした」
「そうか、今回はたまたまだろうが、十分気をつけるんだぞ?」
「はい、ありがとうございます」
そう挨拶を交わし、南門を通り抜ける。
コルバナの町中は、すでに人々が動き出していて朝から活気があった。
すれ違う人たちの話を聞いていると、どうやら朝市なるものが開催されていてこんなに人がいるようだ。
朝市か、薬草採取の報酬をもらったら足を運んでみるのもいいな……。
そんなことを考えながら、冒険者ギルドに到着した。
冒険者ギルドの中へ入ると、大型掲示板の前に大勢の冒険者と思われる人たちが貼られた依頼書を見て話し合っていた。
受ける受けないとか、報酬がどうのこうのと割のいい依頼を探しているようだ。
また、パーティーで行動している冒険者がほとんどで、ソロは掲示板前にはいないみたいだな……。
俺はその光景を横目に、カウンターに行き受付嬢に薬草を取ってきたことを報告する。
「お疲れさまでした。
では、こちらのトレーの上に採取してきた薬草を置いてください」
「分かりました」
俺はアイテムボックスから、薬草の束五つをトレーの上に置く。
「はい、薬草の束が五つですね。
では、ギルドカードを提示してもらえますか?」
「分かりました」
受付嬢の言うように、アイテムボックスからギルドカードを出し受付嬢に渡した。
「はい、では薬草の確認に少々時間がかかります。
あちらの椅子に腰かけてお待ちください」
「分かりました」
冒険者ギルドの受付近くには、椅子が並べられている。
俺のように、査定や確認に時間がかかる場合、受付で立って待つのではなく座って名前を呼ばれる体制を取り入れている。
そう、銀行などと同じような体制だ。
これならば、カウンターでの受付がスムーズに運び時間短縮になるそうだ。
昨日渡された、ギルドの冊子に書かれていた。
俺は椅子に座って、そんなことを思い出していると、すぐに俺の名前が呼ばれる。
すぐに立ち上がり、カウンターへ行くと査定が終わったようだ。
「お待たせしました森島様。
まず、こちらのギルドカードをお返しします。
それから、採取されました薬草はすべて依頼のあったものと分かりました。
そこで、薬草採取の依頼達成として、報酬の銀貨五枚が支払われます。
こちらをお納めください」
俺は、トレーに載った銀貨五枚を掴むと、受付嬢に質問する。
「ただの薬草採取にしては、報酬がいい気がするんだけど?」
「はい、実は今、薬草採取をする冒険者がいないのです。
薬草採取の依頼は、新人冒険者がこぞって受けていた依頼だったのですが、パーティーを組んだり、新人の講習会に参加するようになって受ける冒険者の数が減りました。
どうやら、講習会などで紹介されるギルドダンジョンの方に行かれる方が増えているらしいのです」
「ギルドダンジョン?」
「冒険者ギルドが、制御しているダンジョンのことです。
ギルドの方で制御していますので、出現させる魔物の強さを調整することができます。
さらに、レベル上げにも利用されることが多く、ますます薬草採取などの依頼が滞るようになったので、報酬を上げて対応しております」
「……なるほど」
「森島様、これからも薬草採取などの滞っている依頼を受けてくださいませ」
「分かりました。
冒険者としての経験を、滞った依頼で積ませてもらいますよ」
「ありがとうございます」
そう言うと、笑顔で受付嬢はお礼を言ってきた。
とりあえず、手に入った報酬で朝市に行き、食材を購入しよう。
これで、アニスに頼まれていた食材の確保ができる。
俺は、冒険者ギルドを出てすぐに、朝市が開かれている場所を聞きながら向かった。
「いらっしゃい、いらっしゃい!」
「野菜が安いよ~!」
「この肉どうだい? 今朝捌いたばかりだ!」
「こっちの鶏肉は、あとわずかだ!」
早朝から少し時間が経っているのにもかかわらず、活気はかなりある。
また、人も多く、こんなにこの町に人がいたとは思わなかったほど来ていた。
とにかく、俺も食材の買い物を済ませていこう。
まずは、米か小麦だな。
そう考えながら、朝市の中を歩きだす。
……そういえば、こんなに混雑しているとよくスリが出るというが、どうなんだろう。
この町、いやこの異世界に来て、犯罪者らしい犯罪者を見たことないからな。
そう考えるも、何事もなく、小麦を扱っている店の前に到着した。
「小麦の価格は、一袋銀貨一枚、か……」
この一袋というのが何キロ入っているのか分からず、少し躊躇してしまう。
でも一抱えほどの袋だから、十キロはあるかな……。
とりあえず、購入。
「お姉さん、小麦一袋ちょうだい」
「あら、お姉さんだなんて分かってるわね。
おまけしてあげる。……銀貨一枚ね」
「ありがとう」
「まいどあり」
小麦一袋に、少し入れてもらいおまけをもらった。
アイテムボックスに仕舞って、次は野菜だ。
「いらっしゃい!」
ざっと見た感じ、形がまちまちのものがほとんどだが、これは選んで買ってくれってことかな?
とりあえず、知っている野菜がないが一通り購入する。
料理するのはアニスだし、何が何か分かるだろう。
「おじさん、並んでいる野菜を一籠ずつください」
「お、いいのかい?
それじゃあ、おまけをしてやるよ」
「ありがとう」
「全部で………、銀貨二枚だな。
……はい、確かに、まいどあり!」
お金を渡し、野菜を受け取る。
結構な量だけど、すぐにアイテムボックスへ仕舞う。
おじさんが、驚いていたけど構わず他の店も見て回ることにした……。
読んでくれてありがとう。
これからも頑張ります。




