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愛する男女の異世界物語 〜因果と愛の理由〜  作者: コリコリノチカラ
第(未定)章「ふたり」
28/33

第1話 朝

この章は1話あたり5分ぐらいで読めるように、短めで書くつもりです。


 日の出と共に、眠りから覚醒して、私は貴女に言った。


「昨夜は一睡たりとも眠れなかったなぁ。お陰で調子が良くない。キミはどうだい?」


 私は、そこにいる貴女に向けて言った。


「私は起きていたのよ。貴方の代わりに」


 なんと。貴女は起きていらっしゃったのか。それはそれは、失礼致しました。という気持ち。


「すまないね。昨夜は起きていたのか。私はぐっすり眠っていたから、気づかなかったよ」

「別に。気にしていないわ」


 そう言う貴女の声は、どこか悲しげ。何がどう悲しいのか、私は甚だ疑問ではあるのだが、それをわざわざ問うような無粋な真似はとてもできない。

 だから私は、別の話題を提示するのである。


「そうか。それにしても……いつもと比べて、貴女の顔色はどうも良くないように感じる。もしかして、よく眠れていないのでは?」


 普段の貴女はもっとこう、しっかりとは憶えていないが、とにかくハリツヤがあったはず。それが今は、まるで干した大根のような姿になっている。気がする。


「そんなことはないわ。まだ太陽が出ていないだけ。日に当たれば少しは顔色も良くなるわ」

「なるほど。それは確かにそうかもしれない」


 貴女に言われて、私は気づいた。太陽が大地の裏側で準備運動をしているではありませんか。これでは日の出などあり得ない。どうやら、日の出と共に覚醒したというのは、私の勘違いだったらしい。

 いやはやいやはや。貴女に言われるまで気づかなかったことが恥ずかしい。しかし、私は無意識のうちにそれを隠そうと、澄ました反応を返したのである。


「……これから私は寝床に潜ろうかと思うのだけれど。貴方もどう?」

「えっ?……あっ」


 先ほどの羞恥心の尾が引いた所為か、私は言葉に詰まってしまった。嗚呼、あまり良くない反応をしてしまったなぁ、と反省しつつ、貴女の問いに対して返答をする。


「遠慮しておくよ。私は覚醒したらお風呂に潜ろうかと思っているんだ。それこそ、貴女も一緒にどうだい?」


 狙いはもちろん、貴女の顔色を良くすること。貴女のその、干からびたカブのような姿を、普段のハリツヤのある姿に戻すことである。私がお風呂に潜るとか潜らないとか、そういうことは正直どうでもいい。


「うーん……そうね。じゃあ、私はお風呂に潜ることにするわ」

「そうかい。行ってらっしゃい」


 大体左の辺りからお風呂に向かう貴女を、私は笑顔で送り出した。


「……」


 独り、残された私。


「……」


 独り、取り残された私。


「……」


 独りというものは、寂しいものであると、改めて実感する。時間。こういう時間は存外大切である。なぜなら、私という存在は独りであり、それは寂しいものであるからだ。


「……」


 こういう時、私は考えることを趣としている。さて、思考を……。


 貴女は、何故お風呂に潜りに行ってしまったのか。貴女には、顔色を改善するには日光に当たるといい、という持論があったハズ。顔色を良く見せたいのであれば、わざわざお風呂に潜らなくても、太陽の準備が整うのを待っていればいい。


 何故、貴女はお風呂に潜りに行ってしまったのか。考えられるのは3つ。

 一、貴女が炎に魅せられてしまった。

 二、貴女が水に魅せられてしまった。

 三、貴女が風に魅せられてしまった。

 これらのうちいずれかだ。重複は原理的にあり得ない。


 では、ひとつずつ考えていくとしよう。


 一、貴女が炎に魅せられてしまった。

 これは、お風呂を沸かすのに炎が必要であることから、十分にあり得る。しかし、よくよく考えると、かつて貴女は炎に魅せられたことがない。よって、これはあり得ないのである。


 ニ、貴女が水に魅せられてしまった。

 これは、お風呂の有質量物質的構成要素に水が含まれていることから、十分にあり得る。しかし、よくよく匂いを嗅ぐと、かつて貴女は水に魅せられたことがない。よって、これはあり得ないのである。


 三、貴女が風に魅せられてしまった。

 これは、お風呂の無質量非物質的構成要素に風が含まれていることから、十分にあり得る。しかし、よくよくお風呂を覗くと、貴女は風に魅せられてはいない様子。よって、これはあり得ないのである。


 以上の3点から、貴女が、顔色を良く見せるには日光を浴びると良い、という考えを持っているにも関わらず、お風呂に潜りに行った理由は、以上の3点ではないということが明らかになった。


「……素晴らしい」


 私は思考するのである。深く、深く、潜って……。

 

何か感じてくれましたかね?

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