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愛する男女の異世界物語 〜因果と愛の理由〜  作者: コリコリノチカラ
第一章「兄妹」
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第6話 山乗り越えて山

朝に投稿してみる。それと、初めて傍点使ってみました。読みやすくするというよりかジョジョみたいな使い方してますけど


 俺は恵まれている方だった。

 実家は裕福で、家族は心身共に健康。仲もいい。弟や妹がとても優秀だから、長男として俺が頑張って家を支えなければというプレッシャーもなかった。


 ただただ、俺は。恵まれていた。そんな人生だった――。


~•~•~•~•~•~•~•~•~•~•~•~•~•~•~•~•~•~•~


 ケン君が叫んだかと思うと、ケン君は背負っていた人を投げ捨てて、私の背中を守るように立ってた。


「ヴッ……!!」

「ケン君!?ケン君!!」


 倒れるケン君を見て、私は全身の痛みとか疲労なんて忘れて、倒れる前にケン君を支える。その時視界に入ったのは、お腹辺りからドクドクと流れ出る赤黒い血。


「ケン君!?しっかりして!!ケン君!!」

「グフッ……」


 ケン君は口から血を吐きながら、虚な目で私の顔に手を差し伸べる。まるで今から死ぬみたいに。


「そ、そんな……!ちょっと、ねえ!死んじゃダメ!ヤダ!ケン君!」


 私の言葉はケン君に届かない。

 なんとか!なんとかしないと!とにかくまずはあのクソみたいな核の射線から外れなきゃ!


 ミミズの核が見えない位置までケン君を運んで、次に、荷物をバッと開いて魔道具を探す。


 魔道具!魔道具を探すんだ私!怪我を治せる魔道具があったはず!アレを、アレを使えば……!あった!これだ!この水色の石みたいなヤツ!確かこれを水に漬けて、その水を怪我してるとこに浸せば……!


 飲み水が入った筒にその魔道具をぶち込んで振る。

 早く!これどんぐらい入れてればいいんだったっけ!振らない方がいいのかなあ!?あー!もー!ヤバイ!


 ケン君のお腹からは血がどんどん出てる。まずいまずい……このままじゃ死んじゃう!ケン君が死んじゃう!


 焦りながら筒の蓋を開けると、その水は青白く光り輝いていた。

 よしっ!雰囲気からして多分できてる!この水をかければ!なんとか……!


 仰向けに寝かせてあるケン君のお腹に、光る水をかける。でも、血と混ざってなにがなんだか分かんない。


「……どうなの!?これ!効果あるのか分かんないよ!これで本当に治るの!?ねえ!誰か!」


 当然教えてくれる人なんてここにはいないし、水ももう全部かけてしまった。

 どうしよう!血はちょっと止まったような気もするけど、このまま放っておいたら、多分、多分、ケン君は……!ケン君が……!


「な、なんとか……なんとかしないと……!」


 まずいまずいやばいやばい。焦ってきた。涙も出てきた。どうしようどうしよう。涙が邪魔で前が見えない。

 ダメだ。落ち着け私。一回落ち着かないと何もできなくなるぞ。一旦落ち着こう。目を閉じて深呼吸を……。


「はあ、はあ、ふう、ふう……ふぅ……ふぅ……」


 よし、大丈夫……。落ち着いた……。なんとかケン君を助ける方法を……。

 呼吸を整えて、目を開けた。すると、


「えっ。なに、コレ……」


 ぼんやりと、ケン君の身体に綺麗な円形の模様がたくさん刻まれているような、気がする?……目で見えているのとは少し違うような。でも見えているような。不思議な感覚。とにかく、そこに何かがあるのが分かる。


 よく感じ取ると、その綺麗な模様の内の1つ、ケン君のお腹辺りにあるそれが、悲鳴を上げるように活発になっているのが見えた。


「これは……」


 特に理由もなく、それに手をかざしてみた。なんとなく、なにかできるような気がして。

 すると、自分の体内をめぐるなにか力みたいなものが。それが身体の内から主張をしてくるような感覚に襲われた。


 この感覚……どこかで……。


 そうだ、レフ君に眠らされた時!あの時も確か、こんなような力を感じて……!頑張ってみたら起きれたような気がする!その時とおんなじだ!


 よく分からないけど、とにかく今は自分の内に力を感じる。なにかできそうな、力が……!やってみるしかない!


「ン”ン”ッ……!」


 どこに力を込めているのか意識もできないまま、とにかく頑張る。目標はケン君のお腹の辺りで荒ぶっているそれ。それをなんとか止めるなり応援するなりできれば……!


()()()……!」


 ――!


 私の手の平が青白く光りだした。これは……!多分、なんかできてる!


 直後、ケン君の中で荒ぶるそれがキュイィィィンと高速回転を始めた。

 おおっ!な、なにこれ!大丈夫かな!大丈夫だよね!?まあいいや!いけ!そのままだ!頑張れ私!


 半分やけになりながらそのまま頑張ると、ケン君のえぐれたお腹からムチムチィィ……と音がして、それと同時に肉が再生を始める。

 なっ……!気持ち悪い!けど凄い!治ってる!なんか分かんないけど治ってる!よし!このまま!このまま……!


 そのまましばらく力を込め続けた。多分2、3分ぐらいだったと思う。ケン君のお腹は元に戻った。一度無くなってしまったヘソも復活した。皮膚も真っ赤だけどちゃんとある。見た目はちょっとした火傷程度にまでマシになった。


「はあ、はあ、はあ……治った……」


 凄い……この力。まだよく分かんないけど、きっと魔法だよね。こっちの世界に来たから、私にも魔力が宿ったんだ……。

 自分の手の平と治ったケン君のお腹をしばらく眺めて、実感する。


 ……はっ。そうだ。まだ安心してはできないんだ。ちゃんと井戸から上に上げて、安静にしてないと……。


 仰向けに転がるケン君を担ぐ。地面には小さな血の水溜まりができてるけど、ケン君はなんとか生きてる。ミミズから剥がした人は、申し訳ないけどここで放置。私でも今の状態じゃ2人は無理。


「くっ……ケン君って、こんなに重かったっけ……」


 血の分軽くなってるはずなのに、かつてないほど重くなったケン君を背負いながら、一歩一歩、洞窟の外へと歩いた。


~•~•~•~•~•~•~•~•~•~•~•~•~•~•~•~•~•~•~


 ……? 気分はあまり良くない。だが、ここは……?


 目を覚ますとそこはベッドの上だった。木造の家の中にいる。取り敢えず起き上がるが、状況が読み込めない。

 そうしていると、ドアの向こうから足音が聞こえてきた。


 ガチャ


「……わっ!起きてる!こ、こんにちは。ちょ、ちょっと人呼んできますね!」


 知らない少女が入って来たかと思ったら、そのまま出て行ってしまった。なんなのだろうか。まあいい、今のうちに記憶の整理を……。


 確か、井戸の中に機械のミミズみたいな奴がいて……。そうだ。魔物を倒し終えた後、レーザービームみたいなのが腹を……。


 自分の腹を見ると、包帯が巻かれている。触っても特に痛みはない。思ったより大丈夫だ。撃たれた時は風穴が空いたような気分だったが、それは流石に思い込みだったのだろう。てっきり死んだかと思った。


 にしても、ここは村の家だろうか。この木造の感じがそれっぽい。さっき知らない人が入ってきたが、村の人はもう助かったのだろうか。外から音も聞こえるし、律がなんとかしてくれたのだろうか。


 そんなことを思っていると、扉の向こうからタッタッタと、駆け足の音が聞こえてきた。


 ガチャッと扉が開く。


「……ケン君!よかったあ!やっと起きたよも〜う!」


 安堵の表情を見せながらヘナヘナとして、バフっと律が抱きついてくる。そんなに心配されるほど俺は寝ていたのだろうか。


「大丈夫そう?お腹大丈夫?」

「ああ。多分大丈夫」


「よかったあ。心配したよお。ケン君丸3日寝てたんだよ?」

「え。3日……」


 3日は凄い。驚きだ。別に頭を打ったわけでもないだろうに。よくもそんなに眠れたものだ。

 3日か。色々と状況も変わっていそうだな。


「さっきの知らない女の子は、井戸の下にいた人か」

「そう。村の人がだいぶ戻って来れて、ようやく今日中には全員引き上げられるかなってとこ」


 やはり。結構進んでいる。


「そうか。それは良かった」

「うん。で、3日もあったから色々話さなくちゃいけないことがあるんだけど……」


 律は何から話そうかといった様子で考える。


「まずは、私のこと守ってくれてありがとね。ケン君が守ってくれなかったら私、どうなってたか分かんない。ありがとう」

「ああ……別に」


 礼には及ばないというか、3日も休んでむしろ律に負担をかけて申し訳ない。俺はただ律の前に立っただけで、何もしていない。


「もう。なにその反応。ケン君そんなんだから彼女できないんだよ?」

「は?知るか」


 なんだこいつ。関係なさすぎるだろ。彼女どっから出てきた。


「も〜。ま、いいや。怪我治ったんならその包帯とろっか。よく分かんないからテキトーに巻いといたやつなんだけどね」

「テキトー……」


 まあ仕方ない。律は医療従事者でもなんでもないし。俺も包帯は取り敢えず巻いとくのがいいのかな、ぐらいにしか思ってない。

 

 律に手伝われながら腹に巻かれた包帯を取った。俺の腹はいたって綺麗。怪我の跡らしきものがうっすら赤くあるだけ。想像以上に綺麗だ。


 これは……もしかして俺、全然大したことないのに勝手に思い込みで気絶したのか?なんか……やだな。こう言ってはなんだが、もっと大怪我であってほしかった。


「なんか、全然大したことないな」

「いやいや!最初凄かったんだよ?この辺丸ごとエグれてて、ヘソとか無くなってたんだから!」


「……え?嘘だろ」

「ホントだって。あの時血とか肉とかもう、ドロドロしててホントに焦ったんだから」


 おいおい。そんな訳あるか。確かに大怪我であってほしいとは思ったが……。だって、そんなの3日で治らないだろ。いや、アレか。確か怪我を治す魔道具みたいなのがあったはず。こんなに凄い効果があるのか。中々な性能してるな。


「じゃあ、あの魔道具でここまで治ったのか。凄いな」

「ううん。それがね。治したの私なの。凄いでしょ」

「……ん?」


 それはどういうことだ。律は自慢げに言っているが。魔道具で治したんじゃないのか。


「私、なんか凄い回復魔法が使えるみたい。遠隔白魔法とかいうんだって」

「えぇ……」


 なんだこいつ。そんなことサラッと言われても。しかし、律ならまあ、できるんだろうなあ。何故ならできてしまう人だから。


「ケン君が撃たれたとき、ケン君の身体になんか魔法陣みたいなのが見えてね。それをこう……頑張って操ってみたら治ったの」

「はあ……」


 そう言われても分かるもんじゃない。とにかく律はこの世界でも凄いということらしい。


「ついでに他の魔法も割と使えるようになってさ。炎と水と風の、基本って言われる魔法はもう大体マスターできたの。凄くない?」

「凄いな」


「炎魔法・生成」

「おお……」


 律が軽くそう言うと、指先からライターぐらいの炎が出た。指先でゆらゆらしている。


「凄いでしょ。次、水魔法・生成」


 火を消して、今度は手のひらに水の球を出現させた。ぷかぷか浮いている。炎と違って消せないらしく、そのまま自分の口に放り込んだ。飲めないんじゃなかったのか、それ。


「そして風。風魔法・生成」


 片手をこちらに向けてそう言った。扇風機の強ぐらいの風が起こる。レフ君のやつとはまた少し風の質が違う。あっちのは穴から吹きこんでくる風といった感じだったが、律のは窓から入り込んでくる風のような感じ。


「風だな」

「どう?ケン君が起きたら見せてやろうと思ってたんだあ」


「相変わらず凄いな、律」

「でしょ?」


 なんかもう、流石としか言いようがない。勇者かよ。このままの調子でそのうち魔王とかも倒すんじゃないだろうか。


「あっ。そうだ。ケン君お腹空いてない?今、村の人が炊き出しみたいなのやってるけど、食べる?」

「ああ……じゃあ、食べる」


 お腹は、正直空いているのかいないのか分からない。だけど多分、身体は弱っているはずなので食べた方が良さそう。


「歩けそう?」

「ああ」


 律が手を差し出すのでその手を借りてベッドから降りるが、全然律の手を借りなくても大丈夫そうだ。問題なく歩けた。


 ――――


 家を出ると、色んな音が聞こえた。工具で木を加工しているような音だったり、えっちらおっちら言いながら何かをしているような声だったり。


「今、村の人たちが井戸から人を持ち上げてるとこ。ようやく人力エレベーターができて、それで頑張ってるの」

「へえ」


 この声はそういうことか。ぱっと見男が多いのも、多分力仕事ができそうな人を優先的に引き上げたんだろう。


「最初はホント大変だったよー。ケン君はアレだったし、私も満身創痍だったからさ。レフ君とかビックリしちゃって」

「そうか」


 それはそれは大変だっただろうな。俺は怪我で寝てるし、自分も満身創痍、元気なのは子供のレフ君だけ。想像するだけでキツい。


「あっ。噂をすれば。レフ君だ」

「本当だ」


 丁度、俺が起きた時に扉から出てきた少女に話を聞いているところだ。レフ君はこちらに気づいて、駆け足で向かってくる。


「お兄さーん!……よかった、起きたんだね!」

「ああ。お陰様で」


「レフ君も頑張ったんだよ?私に黙って1人で井戸潜って、最初の1人助けて帰ってきたもんね?」

「うん!そうだよ!」


 なんと、中々凄いことをするヤツだ。


「そうか、凄いな」

「へへへ」


 レフ君は嬉しそうにしている。


「あの機械ミミズは大丈夫だったのか」

「あー、アレ壊れてたよ?」


「壊れたのか」

「うん、そうなの。私たちが行った時の魔物とか光線とかで体力使い果たしたみたいで、壊れてた」

「そうか。なんだったんだろうな」


 あの機械じかけのデカいミミズみたいなヤツ。あいつが村の人たちが消えた原因だろうが、そもそもなんだあれ。よく考えてもよく考えなくても、意味が分からない。


「その辺りはまだ何も。今は村の人たちを助けること優先でやってるから、後々だね」

「そうか」


 まだしばらくはやることがありそうだな。


 ――――


 村の炊き出し場までやってくると、男女数人が釜で大きな鍋を煮ていた。


「おおっ、レフに律さん!こちらはお兄さんかい?」

「あ、はい。律の兄です。健一です」


 陽気そうな男の人が俺を見て話しかけてきたので、答える。


「起きたんだねえ。よかったよかった。俺たちはみんなあんたたちに助けられたんだ。これぐらいしかできないけど、好きなだけ食べていいぞ」

「ああ、どうも……」


 汁物が入った器とさじを差し出してきたので、受け取る。

 見た目は色が薄い豚汁だ。匂いも美味しそう。


 ひと口飲むと、しっかり塩気も旨味もあって、温かくて美味しい。レフ君のやつとは大違いだ。具もよく分からない野菜だが、味が染みていて美味しい。


「どうだ?」

「美味しいです」

「そうか、よかったな!いくらでも食え!」


 その後、一杯飲み切ったらすぐ次を差し出してきて、断れずに結局3杯飲んだ。美味しかったけど、あまりそんな一気に飲んで腹は大丈夫だろうか。


 ――――


 井戸の方では、ガタイのいい男たちが集まっていた。井戸の屋根の辺りに大きな滑車が取り付けられ、人力の昇降機ができている。3人がかりでそれを引き上げており、側には休憩している人や、木で何やら作っている人もいた。


「――イヨシっ!!おい!できたぞー!縄巻くやつ!縄巻くやつできた!」

「ちょっと待てお前!今引き上げてる最中だろうか!」


 傍で作業をしていた男は、どうやら縄巻くやつを作っていたらしい。大きなタイヤ状の形をしていて、縄を引っ掛けて巻き取れるようになっている。

 それが完成して嬉々として報告しているが、残念ながら縄は忙しい。


「できた!これで引き上げが楽になるぞ!ねえ!縄巻くやつできた!縄巻くやつ!」

「「「うるさい黙れ!」」」


 ……なんだこの人たち。仲良いな。


「おっ!律さん!その人は?」

「あ、律の兄の、健一です」


 休憩している人が声をかけてきたので、答える。


「ああお兄さんか!よかったなあ!無事だったか!」

「ええ、お陰様で」


「ありがとなぁ、俺たちのために。これで死にでもしたら申し訳なくてたまらんからな!ハッハッ!」

「いえ、俺は別に何も……」


「まあまあそう言うな!村の人はみんな感謝してるからな!代表して言っておこう、ありがとう」

「どうも……」


 特に頑張った訳でもないから気まずいが、好意を受け取らないのも失礼なので受け取っておく。


「よかったねケン君。みんな感謝してるって」

「まあ、頑張ったのは律とレフ君だけどな」

「……お兄さんって卑屈だね」


 別に卑屈ではないだろう。事実ほとんど寝ていただけだ。


 ――――


 レフ君の家で休憩。


「割と順調みたいでよかった」

「うん!この調子ならみんなもうすぐ戻れそうだよ!」

「ケン君も無事起きたし、よかったよかった」


 この調子なら村の復興は問題ないだろう。


「後はあの機械ミミズと、俺らの帰り方だな」

「そうだね」


 あの機械ミミズの正体は一切不明。村の人たちも何が何だか分からないらしい。そして、日本への帰り方も不明。

 村の人たちと俺らが入れ替わってこの世界にやって来たのかと思っていたが、どうやらそうではないらしい。まったく別の問題だとしたら、俺たちの方は何も解決していない。


「でもそっちの方は今どうすることもできないし、とりあえず置いとこ」

「まあ……そうか」


 今は村の復興が第一。律は村の人から慕われているようだし、今後協力してくれそうな人が増えたと思えばプラスだろう。


「それよりさ……わたし思うんだけど、ケン君にもあると思うんだよね。秘められた力」

「ん?魔法のことか」


 あれは律だからできたことだと思うが。なんか既にレフ君と同じくらい魔法使えそうな感じだったし、遠隔白魔法とやらに関してはとにかく凄い。センスがあるんだろう。


「いや、魔法というよりフィジカルの方」

「え。フィジカル、無いぞ俺」


 見ての通り俺は細いし運動もできない。日光にすらあまり当たっていない。


「可能性はあるでしょ?だって私が魔法使えたし、少なくともこっちの世界来て身体に変化は起きてるじゃん」

「まあ……でもなんでフィジカル」


 フィジカルなんて言葉、律を抽象化してできたようなもんだろう。俺には無いぞ。


「だって私のこと庇ったとき、ケン君の動き凄かったから。私でも対応できなかったあの速さのビームに横入りしたんでしょ?あの時の動き私より速かったよ?」

「最初森で僕が眠らせたときも、なんか結構すごかったね」


「それは……確かに、俺にしてはよくやったと思うが」


 あんまり覚えていないが、多分必死だったんだろう。


「私が思うに、身体の方はもうだいぶ強いんじゃないかな。後は脳の問題というか、動かす側の問題だと思うの」

「はあ……」


 そう言われましても。うまく身体を動かせないのが俺だし。


「だからさ。ちょっと一回やってみない?」

「え?」


 ――――


 どうしてこうなった。


 表に出て、俺は律と向き合っている。そしてその律は――


「いい?私、ケン君の身体が強いと思ってやるから。本気になってやらないとまたしばらく眠ることになるよ」


 ガチガチにファイテングポーズを取って、俺を目で捉えていた。


ちなみに、いきなり律視点が出てきましたが、あれは魔法の使用を描写したかったからです。この物語の魔法感が伝わったらいいなと思います

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