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愛する男女の異世界物語 〜因果と愛の理由〜  作者: コリコリノチカラ
第一章「兄妹」
25/33

第4話 闇の中には何が

何度律に起こされるのでしょうか


「――くん!――ケン君!」

「……?んぉ……?」


 律が起こしてきた……。なんだあ?まだ暗いぞ……。


「なに……」

「なんか音がするんだけど」

「え……?」


 仕方ないので、起きる。


「音?」

「うん、外から。ちょっと見に行かない?」

「ああ……」


 仕方ないので、律についていく。今日は満月で、外は比較的明るい。今気づいたが、夜空に月以外の星が無い。曇っている訳でもなさそうだが……。なんたることだ。


「あの井戸から……?」


 律は音を探っているが、俺は空の方が気になる。


「ねえ、ちょっと来てよ」

「はい……」


 仕方ないので、ついていく。俺も耳を澄ませると、確かに音が聞こえるような。


「やっぱり、この井戸からだよ」

「……」


 井戸に耳を傾ける。なんとも言い難い音だが、確かに聞こえる。なんだろうか。不規則にベコッベコッといったような音が。


「水が湧いてる音か」

「あー。言われてみればそう聞こえるかも」


 この井戸の水はかれていた。何かの拍子で水が一気に戻ってきたのではないだろうか。それで音が聞こえる、みたいな。


「ま、良いことなんじゃないか」

「うーん。そだね」


 俺たちはお布団に戻って寝た。


 ――――


 翌日。


「準備はこれぐらいでいいかな?」

「うん!なんとなくオッケーなんじゃない?知らないものも結構あるみたいだけど……」


 俺たちは遠出の準備をした。日持ちする食糧、水、防寒具、動きやすい服装。他に、魔物や獣用の武器など。

 

 レフ君曰く、この辺りは延々と森が広がっており、食糧はそこら中に転がっているという。なので食糧は非常食のみを持ち歩き、基本的には現地調達。


 そして、魔物はそれなりに出るらしい。ということで、撃退用の武器は必須。レフ君が俺たちを眠らせたあの謎の道具は、簡単に相手を眠らせることができる魔道具なんだとか。


 その魔道具と、あとは槍を持っていく。魔道具は相手の顔面に近づけないと効果が無く、リーチが相当短い。加えて、稀に眠らない魔物もいるとのこと。なので槍。というか、村には武器らしい武器が槍とナイフと弓矢ぐらいしかなかった。


 槍の扱いに関しては、律なら問題ない。持たせてみたところ「わあ!本物の槍だー!初めて握ったー!」とか言いながら、体の一部みたいに自由自在に振り回していた。流石。


 今日は、便利な魔道具の使い方をレフ君に教えてもらいつつ、もしかしたらということで村の人々の帰りを待つ。今日帰って来なかったら、俺たちはここを出る。


 ――――


「これは?この石みたいなのはどうやって使うの?」

「これはね、ケガを治す魔道具なんだ。あらかじめ魔力を込めたこれを水の中に入れて、そこにケガしたところをつけると治っていくの」

「へえ!すごーい!」


 俺たちは魔道具の説明を受ける。中々凄いことができるものだ。日本と比べて技術が劣っているとも言い切れない。


「これがあれば多少無茶しても大丈夫ってことじゃん」

「おい……」


 普段から無茶苦茶だろうに。それ以上ハメを外す気かよ。是非ともやめていただきたい。


「コイツは……」


 俺は小さい手鞠のような物を手に取る。白くて、デザインがとても綺麗。


「それも魔道具だよ。魔力を込めると光るの」

「へえ」


 魔力を込めると光ると言われてもな……。どうやればいいんだろうか。そもそも俺たちって魔力あるのか?

 試しに軽く握ってみる。


 ――!!眩しッ!


 それは白く激しく発光し、目に焼き付いた。


「うあ”ッ……」

「ハッハッハッ!!……じ、自滅っwケン君自滅してw自滅してて草ぁ!アハーッ↑」


 律がバタバタして喜んでいる。楽しそうでなにより。だが、そんなに面白いのか。そんなに面白いなら定期的に自滅してやろうか。


「大人がそんなにグッとやっちゃったらダメだよ。もっとじわーってやらないと」

「そうか……」


 そこまで力んだつもりはなかったのだが。多分、魔力制御的なヤツができていないんだろうな。そもそも魔力なんて出そうと思って握ってない。


 ああ。目がチカチカして手元の魔道具の模様もよく分からない。これの扱いには気をつけるとしよう。


 ……お?なんだ?アレ……。


「ん?ケン君どうかした?」


 俺の目線の先。例の大きな井戸の中から、白い光が湧き出ているように見える。いや、さっき光が目に焼き付いたせいか?しかし、それとは別に見えるような気もする……。


「目がチカチカしてよく分からないんだが……」


 俺は律たちの背後、井戸の方を指差す。


「うおっ!なに!?アレ?」

「え……!?」


 律もレフ君も驚いている。どうやら本当に井戸から光が湧き出ているようだ。

 数秒経って、その光は収まった。


「なになに今の?」

「見てみよう」


 俺たちは井戸の中を見に行く。

 馬鹿みたいに大きなこの井戸。初めて見た時からおかしいとは思っていた。水がかれていると分かった時も、昨夜変な音がした時も。そして、今回の謎の光。ここまでくると流石に無視はできない。


「見た感じ……別に様子は変わっていないね」


 前と変わらず、底は真っ暗でなにも見えない。


「あ、そうそう!レフ君には言ってなかったんだけど、昨日の夜この井戸からなんか変な音が聞こえたんだよね」

「えっ?本当?」

「うん。なんかベコベコって」


「そんなことが……なんかこの井戸おかしいよね?」

「うん。この井戸おかしいよ。やっぱなんかあるんじゃない?ケン君どう思う?」

「……様子を見に、中に潜ってみる価値はあるんじゃないか」


 もはやこの井戸の奥に、何もないはずがない。村の人たちがいなくなった事とか、俺たちがここに来たこととかに関わってくるんじゃないだろうか。


「よし!じゃあ潜ろう!」

「そうだな。一度考えるか」


 俺たちは予定を変更。井戸に潜って潜入する方針を立てる事にした。


 ――――


「まず、これを」


 井戸に、火をつけた松明を落としてみた。


 ――カランッ!カラカラ……


 返ってきたのは、乾いた衝突音。どうやら水はないらしい。ついでに火も消えていないようなので、酸素もあるはず。


「35メートルぐらいかな?」


 律が言う。手を離してから音が返ってくるまで大体2~3秒だったから、計算するとざっと20〜40メートル。律は計算なんてしないので感覚なんだろうが、多分そっちの方が正確だ。


「縄を垂らして、正確な深さも測っておくか」


 測れそうなものは測る。適当な長い縄の先に十分に重い石を括り付けて、下ろす。

 しばらく下ろすと石が底について軽くなるので、そこで印を打っておいて、引き上げる。というか、律に引き上げてもらう。


 引き上げてもらった石は、濡れていない。やはり水はかれているようだ。


「ケン君って身長いくつ?」

「多分、178」

「じゃあ私の方がキリよくていいよね。私170だから」

「ああ」


 律の身長を参考に、縄の長さを測る。


「20……21。だから、35メートルか」

「おお!ほらあ!ピッタリだあ!」

「流石」


 やはり律、感覚が鋭い。


「35メートルかあ。あんま降りたことないなあ」


 あんまってなんだ。少しはあるのかよ。まあ、律のことなのでいい。にしても、35メートルか。深い。俺とかレフ君は行って帰って来れるのだろうか。


「どうする。律は潜るとして、俺とレフ君は上で待つか」

「えっ、そんな!お姉さん1人で行かせるわけにはいかないよ!」

「そうだよお兄ちゃん!私が怖くて漏らしちゃったらどうするの!」


 それは、知らん。律が漏らしても俺は困らない。


「じゃあ、俺かレフ君のどっちかが律について行く。最低1人は上で待っていた方がいい」


 3人とも下に降りてしまっては、ロープに支障が起きたりした場合、最悪戻れなくなってしまう。地上からアプローチできる人は必須だろう。


「どうする、レフ君。律と井戸に潜るか、上で待っているか。どっちがいい」


 俺とレフ君、どっちが潜った方が合理的なのか、俺には判断がつかない。だから、子供にはやりたい方をやらせよう。


「……」


 レフ君は迷っている様子。


「ボクは……」


 かなり迷っている。どうした。上で待っている方が多分楽だぞ。


「んーと……」


 もしかして気を遣おうとしているのか。俺が非力だから、俺が行くより自分が行った方がいいと、そう思っているのだろうか。あるいは、自分が村の人々を助けたいという気が強いのか。


「もし怖いようなら、無理に行く必要はない」

「うん……ちょっと怖い……」


 そうか。怖いか。1人で半月暮らしたレフ君でも、怖いことはあるか。子供だし、苦手なことはたくさんあるよな。


「じゃあ、俺と律が井戸の中に潜る。レフ君は上で待機。何かあった時、上から助けてくれ」

「うん、わかった」


 俺たちは井戸を降りる準備をする。


 ――――


 準備したのは、45メートルぐらいの縄。人の体重を支えられるようにするために、村中から縄をかき集めてきてそれを一本にした。


 一旦、使えそうな物を下に降ろす。そのまま下に置いていってもいいものを選んだ。飲み水、非常食少し、ナイフ、槍、縄、それらをまとめた布製の袋。これを2つ。それと、傷を治せる魔道具を1つ。


 他には、例の光る魔道具。こいつは降りる時にも使う。魔力がなんたるかを知らない我々としては、予備として松明も欲しいが、残念ながら火を起こす道具が無かった。というのも、この世界の人間は魔法で種火が起こせるから、ライターに存在価値が無い。これが光らなくなったら終わり。


 縄を伝って垂直に上り下りすることになるので、軍手っぽい手袋。あとは滑りにくい靴と、動きやすい長袖長ズボン。


 眠らせる魔道具は1つしかなかったので持って行くのはやめた。基本、道具は井戸の底に放棄して戻ってくるつもり。今後リーナの街に遠出するときに使いたい。


「さて……」

「準備できたね!」


 降りる準備はできた。ここから、まず俺が先に下に行く。というか、荷物の時のように降ろしてもらう。


 そのための準備もした。縄が擦り切れないように、井戸の縁にはなめした皮を敷いて滑りを良く。縄の先端を輪っかにして、そこに両足を置けるように。光る魔道具は口に咥えても光ったので口に。


「大丈夫?ケン君。行けそう?」

「んぁ……」


 口に光源を咥えているので、喋りづらい。……にしても、縄に足をかける最初の段階で死にそうだな。しかし、流石にそんなマヌケな死に方はしたくないので、頑張る。


 縄を掴んで、真っ暗な井戸へと片足を突っ込む。そのままなんとか縄に足を乗っけて、半身は闇の中。


「ぉっくぇー」

「よし!オッケーだって、レフ君!私が調節するから、レフ君は私がいいって言うまで絶対に離しちゃダメだからね!」

「うん。わかってる」


 律とレフ君が協力して俺を降ろす。

 スル、スル、スル、と、だんだんと闇の中に。

 眼前には壁。石壁でもないのに、いい感じにひと繋ぎ岩の壁になっている。不思議だ。


 特にできることもないので、ロープを離さないようにだけ気をつけて、待つ。


 ――――


 足が地についた。ロープから足を外して、光源をチカチカ光らせて上に合図を送る。


「ケンく〜ん!だいじょうぶ〜?」


 上から律の元気な声が聞こえてきた。怪我もなく無事なので、もう一度適当に光源をビカビカさせておく。


「おほ〜。元気だ〜!」


 なんだその反応。まあ、喜んでるみたいで、何より。


「じゃあ、今度私行くからね〜!待っててねケンく〜ん」


 ふう。律は心配いらないだろう。もし仮にそのまま落ちても骨折で済みそうな人だし。俺は少し、この辺りの様子を見ておこう。


 ライトを握って、辺りを照らす。ぱっと見は想像通り、円柱状の空間だ。しかし、不可解なことが起きているこの井戸。何も無いはずはない。もう少し辺りを調べる。


「……あった」


 見つけたのは、怪しげな横穴だった。


ちなみに、35mはだいたい、自由の女神の身長ぐらいだそうです

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