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愛する男女の異世界物語 〜因果と愛の理由〜  作者: コリコリノチカラ
第一章「兄妹」
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第2話 森の中を歩いた先には

割り込み投稿した場合、新着投稿順のソートで前に出ないことが判明しました。これは、どうやら最新部分掲載日のみをソートの基準にしているからっぽいです。無能ね、なろうソート君。


 物音が聞こえた気がして、目を覚ます。


 ああ……。なにか変な夢を見ていた気がする。律がなんか……。


 あ?知らない天井……?どこだ、ここは。


「あ!ケン君起きた?」

「――!律!」


 よかった……。ん?いや、あれは夢か。あ……?夢か?よく見ると律が、腰巻とポンチョみたいな、変な格好をして手でなんかしている。ん……?俺、裸だ。


「……夢、じゃないってことか」


「だだいまーっ」


 いきなり子供の声が聞こえて、誰か入ってきた。

 ――!アイツ!そうだ、確かアイツが!


「あ、おかえりー、レフ君」

「あ!お兄さん起きてる!」

「そう、今さっき起きたのー」


 ん……?なんか悪い雰囲気ではない。てっきりアイツが律をやったと思っていたが……違うのか?


「この子はレフ・エリン君。森で会った子ね」

「どうもー」


 レフ・エリン……。日本人の名前らしくはないが、普通に日本語を喋っている。年は10歳ぐらいだろうか。中性的だが、律もレフ君と呼んでいるし、多分男の子なんだろう。


「そう!で、ケン君!色々話さないといけないことがあるの!」


 律が興奮した様子で俺に言う。


「まずね、ここ、ケン君が言ってた通り異世界なの。それで、魔法とかあってね――」


 あまり話が入ってこない。異世界とか魔法とか、そんなことさらりと言われても。


「ちょっと待ってくれ。……異世界っていうのは」

「マジマジ。私もさー、最初そんなことあるのかなあって思ってたんだけどね?魔法見せつけられちゃって。信じざるを得なかったんだよねー」


 魔法……?騙されてないか?それ。律はあまり勉強が得意じゃないから。この前は「月の形ってなんで変わるんだろー。魔法なのかな?」とか言っていた。


「魔法って、どんなの」

「なんかね、風とか出せるの。手からヒュウーって」


 手からヒュウー……。確かにそれは魔法っぽいが……。


「このお兄さんも魔法見たことないの?」


 レフとかいう子供が話しかけてきた。この子が魔法を見せたということだろうか。


「そうなの。レフ君もう一回魔法見せてくれる?」

「いいよ!」


 どうやら俺に魔法を見せてくれるらしい。

 その子は両手をこちらに向けて、いかにも何か発動しそうな構えをとる。


「風魔法・生成!」


 その子がそう言うと、人が沢山のロウソクの火を一発で消そうとする時ぐらいの風が、俺の髪の毛をなびかせた。


「おお……」


 息を吹きかけた様子は無かった。何か隠せるような袖も無い。どうやってやったのか全く分からない。魔法と言われたら魔法なんだろうと思ってしまう。


「どう!?これが魔法だよ!風の魔法!」


 レフ君がわくわくしてそうな感じで俺に訊ねてくる。


「驚いたよ」

「……。あんまびっくりしてないじゃん」


「ケン君はそういう人なの。これでもちゃんとびっくりしてるんだよ?」

「つまんない!」


 あらら。律に見せたときに返ってきたであろう、面白い反応でも期待していたんだろうか。


「ここは魔法の世界ってことか」

「そうなの」


 森で目を覚ました時点でおかしな状況だった。魔法の世界に迷い込んだってことなら、説明がつく分妙に納得できてしまう。丁度この家も木の中というか、木そのものが家になってるみたいで、魔法っぽい雰囲気がある。


「で、レフ君に偶然会えたお陰で、今こうして泊めてもらってるってわけ」

「そうか……。そういえば、律は大丈夫なのか。レフ君を追いかけてたとき、危ない倒れ方をしていなかったか?」


「あれは、ボクが間違えてやっちゃって……。でも!この人すぐ起きて、お兄さんをここまで運んだぐらいだから元気だよ!」

「うん!私は全然問題ないよ」


 はあ。流石だな。心配の必要はなかったらしい。


「律が俺を運んでくれたのか……そうか。ありがとな」

「ケン君軽いからねー、全然大したことないよー」


 大したことあると思うが。人間にしては軽いとはいえ、50キロか60キロぐらいあるんだぞ。


「ケン君は大丈夫?どこかおかしいところない?」

「大丈夫。元気だ」


 逆に心配される始末。所々に擦り傷があって痛いが、血も出ていないのでなんの問題もない。


「じゃあちょっとこれ手伝って。なんかね、靴作る材料なんだって」


 律は何やら、植物の繊維を綯って縄にしたものを手に持っている。


「お兄さん、はいこれ。服の代わり!」

「……ありがとう」


 ベッドから出ようとすると、レフ君が大きめの布と紐を渡してくれた。腰に巻けということだろうか。適当に腰に巻いて、温泉上がりのようなスタイルで俺も律のを手伝う。


 これはツタ植物の皮だろうか。くたくたしていて柔らかい。1本1本では千切れやすい上に中途半端な長さなので、綯って長く丈夫にしようということだろう。


 レフ君は、取って来たであろう植物の使う部分を剥く係のようだ。刃物を持って作業をし始めた。


「えっとねー、こうやってやるの。こうするとほら、勝手にぐるぐる巻きつくでしょ?すごくない?」


 律のを見る限り、ヒモの両端を同じ向きで捻ることでお互いに巻きつく力を得ている。「すごくない?」とか言っているので、レフ君にでも教えてもらったのだろう。


「で、足りなくなったら追加のを差し込むカンジ。このときはねー、慎重にちまちまやらないと取れちゃうから気をつけてね」

「わかった」


 難しくはなさそうだ。とりあえずやってみる。

 適当に1つ取って、捻って、捻って……。適当に差し込んで、捻って捻って……。

 そんなに難しくはない。早さを求めればまた別だろうが。


「あ、ケン君上手ー。なんか私のより綺麗じゃない?」

「大して変わんないだろ」

「あ、そう?いやー、やっぱ私天才かも。なわなわ〜」


 どの辺が天才なのか全く分からないが、まあいい。


 にしても、異世界か……。なんの説明も装備なしにこんなところに飛ばされても困る。どうしてこうなったんだろうか。自然現象なのか、誰かが故意に引き起こしたのか……。


 疑問は積もりに積もるが、今はこうして単純作業をして、あまり頭は使わないようにしたい。でないと無駄に疲れそうだ。


「うーん。これって靴の材料なんだよね?どうなるんだろう。下駄?ぞうり?わらじ?」

「さあ」


 律がなんか言っているが、下駄ではないだろう。その中だと草鞋なんじゃないだろうか。魔法のある世界だからどうなるか分からないが。流石に下駄ではない。


「……律は、どう思ってる」

「下駄!」

「ごめん、そうじゃなくて、この今の状況について。普通ではいられないだろ」


「あ、そっち?うーん……。よく分からなすぎて分かんないけど、不安、かな。先が見えないし、どうやって帰ればいいのかも分かんないし……」

「そうか」


 律も不安か。俺も不安だ。


「大丈夫だよ!ふたりともきっと帰れるって!村に帰ったら大人たちが色々知恵を貸してくれるからさ!元の世界に帰る方法も!」

「ありがとね、レフ君」


 律がレフ君の頭を撫でてよしよしする。相変わらず、誰とでもすぐ打ち解けるというか、人たらしというか。


 そういえばこの子、1人なのだろうか。こんな巣みたいな家で。「村に帰ったら」とか言っているが、このぐらいの子供が村を出て1人で遠出するとは思えない。


「レフ君はここに1人で住んでるのか」

「うん、今はね」

「今は?」


「なんかね、そういう試練みたいなのやってるんだって。サバイバル訓練みたいな」

「うん。ボクの村ではこの年になると半月の間1人で暮らすの。途中で帰っちゃう子もいるんだけど、ボクはやり切るんだ!明日で丁度半月なの」


「へえ。偉いね」

「うん、ボク偉い!」


 半月の間、1人か。ただ適当に過ごすだけなら大したことなさそうだが、水だの食料だの確保しながらとなると今の俺でもできそうにない。大したものだ。


 ――――


「……よし!完成!どう?」

「うん、いい感じ!」

「いくらか歩きやすいか」


 数時間かけて、草鞋っぽい履物ができた。かなり不恰好でゴツゴツしている。履き心地はかつてないほど悪いが、裸足と比べれば数段マシだろう。非常にありがたい。


「じゃあご飯食べよう!どうせ今日で最後だから全部入れといたんだ!ふたりも手を洗ってねー」


 レフ君はそう言って外に出て行った。手はどこで洗うのか知らないが、とりあえず外についていく。


 外には台所があった。土っぽい土台の釜と、食材を切ったり剥いたりするであろう台。

 釜戸には鍋が置かれて、何かを煮ていた。覗くと、知らないものが盛りだくさん。見た目はグロテスクな肉じゃが。匂いは茹でたトウモロコシが少し臭くなった感じ。不味そうだ。


「手はどこで洗えばいいのかな?」


 律が訊ねた。一応、台の横にシンクみたいな水が溜まっているところはあるが、草鞋作りで汚れた手をそこで洗っていいのか分からない。


「あー、そうだ!せっかくだから魔法の水で洗う?」

「魔法の水?」

「なんか凄そうだな」

「別にすごくはないけど。ふたりとも手出して」


 俺と律は言われた通りに手を出す。


「水魔法・生成」


 風の魔法を使ったときと同じように両手をかざして、今度は水を生成した。空中の何もないところから水が湧き出て、ジョロジョロ垂れ流れてくる。手に触れると、ちゃんと冷たくて、水だ。


「すごーい!」

「凄いな」

「ふふん、魔法の練習も頑張ってるもんね!」


「……。ふ……wなんか出方おしっこみたい」

「え?」「おいおい」


 そんな小学生みたいなこと言うなよ。子供のレフ君も流石に引いてるだろ。


「いや違うの!冗談!冗談だからさ!……ふ、ふふっw」


 どうやらやら変なツボにハマってしまったようだ。律の口から、草が飛び出て見える。


 ――――


「さあ食べよう!」


 テーブルの真ん中の鍋を、3人で囲む。例の美味しくなさそうな鍋。律も俺と同じように思っているのか、真顔で見つめている。レフ君は自分の器によそって、さじで食べる。


「うーん……まあまあだね!」


 レフ君はまあまあだと言っている。美味しくはないんだろう。

 さて、俺らの分の器は無かったので、洗った木の板にぼてっと乗せて頂く。たまたまあったいい感じの棒を箸にして、いざ実食。


「いただきます」


 うーん……。柔らかくて食べやすい。豆と芋の間みたいな味がする。風味を感じないように息を止めれば不味くはない。腹が減ってる今なら、なんの抵抗もなく食べられる程度。


「すごーい、ホントに器用に食べるね!」


 レフ君は俺らの箸づかいを見て感心している。確かに、箸を使ったことのない人から見たらそうなのかもしれない。俺も小さい頃、箸の正しい持ち方を会得するのには苦労した記憶がある。


「うん、うん……」


 律はパクパク食べているが、あまり美味しそうではなかった。


 ――――


「じゃあ、明日は朝から村に帰るからね。おやすみー」

「はーい、おやすみー」


 明日のための支度を終え、日も暮れたので俺たちは寝る。あいにくベッドは1つしかないので、俺と律は床で雑魚寝。若干寒いし寝心地はかなり悪いが、まあ大丈夫だろう。割と寝るのは得意だ。


 ……色々ありすぎて濃い1日だった。思うところはあるが、眠れなくなるのであまり考えるのはよそう。はあ、明日はどうなることやら……。


 目を瞑り、俺は眠りに就いた。


 ――――


 朝。


「よぉし!村に向かって出発だ!」

「はーい、しゅっぱーつ!」


 元気のいい2人と共に、デカい切り株みたいな家を出発。森らしい森の中、道なき道を進む。


 この辺りの森は、俺たちが最初いたところとさほど距離は離れていないにも関わらず、景色が違う。統一感のある森っぽい森だ。というのも、ここら一帯は植生がコロコロ変わるらしい。レフ君が言っていた。今進んでいる森もすぐに景色が変わるようだ。


 しばらく歩くが、やはり歩きづらい。お手製の草鞋では、土が入ってきて気持ち悪いし、小石が入って痛い。2人の足手まといにならないように、できるだけ頑張るが……。


 ――――


「ケン君大丈夫?」

「大丈夫……でも疲れた」


 舗装もない自然の地を歩くこと数時間。とても疲れた。……が、律とレフ君は涼しい顔をしている。律はともかく、子供のレフ君にも負けるとは。なんということだ。


「レフ君、一旦休憩にしない?お兄ちゃんが疲れちゃったみたい」

「あー、うん。いいよ」


 その辺に生えた、馬鹿みたいにデカいキノコに腰をかけて休憩する。早く村に帰りたいであろうレフ君には申し訳ない。


「お兄さん体力無いの?」


 レフ君が訊いてきた。なんか煽られているように聞こえるのは、俺の受け取り方が悪いのだろうか。


「ごめん、運動不足なんだ……」


 運動どころか、日光にもあんまり当たらない生活をしていたからな。これだけ歩けただけでも結構驚きだ。


「ボクのこと追いかけてきたときはなんかすごかったのに」

「あれは……違う」


 そもそもあの時は別にレフ君を追いかけてた訳じゃない。律が危ないと思ったから、火事場の馬鹿力みたいに、自分の力以上の力が出ただけだ。俺は基本的に動けるヤツじゃない。


「あっ、そういえばケン君、私が倒れたときめっちゃくちゃ心配して駆けつけたてくれたって、マジ?」

「それは、マジ」

「うわー!なにー?もう私のこと大好きじゃんもーう!」


 なんだこいつ。人前でわざわざ抱きついてくるな。妹が倒れたら誰だって必死にもなるだろ。


「逆にお姉さんは凄いよね。あのときもすぐ起きちゃって。ボクびっくりしちゃった」


 逆に、て。まあ仕方ない。律はヤバいからな。


「あー、アレね?なんか気合いで起きれたんだよねー」

「気合いって……本当は精密な魔力操作が必要なはずなんだけどなー。やっぱり違う世界から来た人は違うね!」


 いや、主語が大きいぞ、レフ君。凄いのは律であって、地球人ではない。


「いやあ!それほどでもあるかなあ、やっぱ!」


 律は嬉しそうだ。なにより。


 ――――


 ひたすら歩いた。森の中のくせに景色がよく変わるので、飽きはしないが非常に疲れる。


「おっ!道だ!道に出た!」


 獣道みたいな道に出た。踏み固められていて、車輪の跡っぽいものもある。


「後はこの道をたどるだけだよ!ボクが一番乗りだもんねー!」


 おお……。レフ君がいきなり走って行ってしまった。よくもまあ、そんな体力が残ってたもんだ。元気な子だ。


「……律は行かないのか」

「ふっ。やめてよケン君。子供じゃあるまいし」


 なんだこいつ。小馬鹿にしたような言い方だが、つい最近おしっことか言って笑ってただろ。


「ケン君を1人にしちゃ可哀想だもんね」


 律が俺に寄り添ってくる。


「……俺は子供じゃないぞ」


 なんとも、度し難い気分。


 ――――


 木々のトンネルを抜けると、村らしきものが広がっていた。ぱっと見た感じ、想像よりも発展している。昨日泊めさせてもらった家は巨大な切り株をくり抜いたような家だったが、ここの家はちゃんと木材を使っていて、構造もイメージ通りの家に近い。


「おおー!なんか凄い、雰囲気あるね!」

「ああ」


 森と一体化しているところもあり、秘境の村という感じがする。ひっそりとしているところも、また。


「…………」「……」


「……なんか、静かすぎない?」

「ああ」


 もう村に立ち入っているが、人の姿どころか声も物音も聞こえない。流石にひっそりとしすぎている。


「静かにする文化でもあるのか」

「いやあ……?レフ君の様子を見たカンジ、そんな気はしないけどなあ」


 確かに。こんな静かな村で生まれ育っていたら、あんなハツラツな子にはならないだろう。


「おーい!レフくーん!?どこにいるのー!?レフくーん!」


 律が大きな声で呼びかける。……が、特に返事はない。大丈夫だろうか。


「レフくーん!返事してー!」


 もう一度、律が呼びかける。


「あっ!いた!」


 律が指さす方を見ると、そこには今にも泣きそうな顔のレフ君がいた。


ちなみに、私は肉じゃが、好きです

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