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愛する男女の異世界物語 〜因果と愛の理由〜  作者: コリコリノチカラ
第一章「兄妹」
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第1話 目を覚ますとそこには裸

唯と智博の他にも、裸で眠る男女が……


 「――くん!――ケン君!」


 誰かに呼ばれて目を開ける。


「ん……」

「あ!起きた!大丈夫?」


 眩しい。……木漏れ日?それと、俺の顔を覗き込むこのシルエット、この声……妹の律だ。


「律……。あれ……?」


 外?木が見える……。よく分からない。まあいい、とりあえず起きるか。律がなにやら心配しているみたいだ。

 手をついて上半身を起き上がらせる。目に入ったのは、森と、妹のありのままの姿。


 !!?


「えっ……!ちょっ……」


 急すぎて思わずのけぞってしまった。目の前に妹の素っ裸がデンとある。そして気づいた。俺も律と同じく、布一枚すら纏っていないということに。


「はっ?……なんで?」


 一応妹でも局部は見られたくないので、そっと手で隠す。にしてもなんだこれは。おかしくなったのか?


「アッハッハッハッ!アーハァッ!ファーーッ↑↑」


 律が手を叩いて大喜びで笑っている。元気な律らしくて実に結構だが、なにがそんなに面白いのか。確かに俺の体は笑えるぐらいにダサいが、律は今更そんなことで笑わない。


「なに。俺はドッキリでも仕掛けられてるのか」

「いやあ、戸惑ってるケン君がなんかぽくなくて。あと、アソコもちゃんと隠すんだね!ハッハッ!」


 そうか。律は俺が焦るところを見てみたかったのか。見せてあげられたみたいなら、よかった。


「俺もちんちんは隠す。妹でも、女の人に見られるのは恥ずかしい」

「へえー。やっぱそうなんだー」


 やっぱそうなんだー、じゃないと思うが。寧ろ、兄を焦らせる為に外で裸になる律の方がよっぽど「へー」って感じだろ。まあでも、知りたかったならしょうがないよな。


「満足か」

「え?満足?どゆこと?」


 ん。予想と違う反応をされた。俺がなんかを誤解してるか、律がとぼけてるか。


「律は俺の焦る姿が見たかったのかと」

「……へ?え、ちょっと待って。もしかしてケン君……私がケン君を驚かせる為にこんなことしたって思ってる?」


 頷く。


「ええーっ!?ちょっとぉ!!私そんな気安く脱がないよ!!私のことなんだと思ってるの!もうっ!お兄ちゃんのバカッ!」


 ああ。律を怒らせてしまった。相変わらず愛嬌のある怒り方というか、冗談ぽいというか。自分が怒ることで悪い空気にならないように、気を遣っているんだろう。偉いよなぁ。

 にしても、そうか。流石の律でも裸を見せつけたりしないのか。俺の理解が足りてなかった。


「ごめん。なんでもやっちゃう律なら、そういうこともやるかなと」

「しないよ」

「そうか」


 思えば、律も20歳の大人だ。節操というものもちゃんとあるんだろう。……あれ。じゃあなんで律は裸なんだ。律……冷静になって見てもやっぱり裸だ。綺麗な体してるよなあ。


「ちょっとお兄ちゃん!ジロジロ見ないでよねっ!」


 ああ。ジロジロ見ていたら怒られてしまった。悪かった。でも、なぜ裸?


「律はなんで裸なんだ」

「分かんない」


 ええ?分かんない、とは。


「律。もしかして、自分がなんでここにいるのかとか、なんで裸なのかとか、ここがどこなのか、とか。全部分かんないのか」

「うん。そう。ケン君も?」


 頷く。


「あらら、やっぱり?」


 なるほど。どうやら身ぐるみを剥がされた上、直前の記憶も無く、森に捨てられたらしい。そんなことできるか?俺1人ならともかく、律相手に……。あり得ない。


「一旦この木登って周り見てみるね」

「あー、すごいな」


 律は近くにあった木に手をかけて、スルスルと登り始める。

 相変わらず律はたくましい。ヒョロガリで男らしくも女らしくもない俺とは違って、律は男らしくも女らしくもある。

 見た目からして凄い。並の男よりも筋肉量が多いらしく、それでいて女の人らしい丸みも帯びている。容姿に関して、律以上に魅力的だと思う人はいない。芸術みたいに美しくて、かっこいい。


「ちょっとケン君!下から覗かないでよねっ!」


 下から見守っていたら、律がお尻を押さえてなんか言い出した。覗く覗かないとかいう以前に、何も履いてないが……。いや、俺が悪い。普通は裸の妹を下から覗くのは遠慮するよな。見ないであげよう。


「うわあー!裸だとおっぱいが!揺れる!」


 ……。すごい発言。俺に対する恥じらいなんてないんじゃないだろうか。まあ律らしいが。もっと怪我とかに注意してもらいたい。


 そんな心配も必要なく、律は危なげなく木を登り切り、周りを見渡して降りてきた。


「どうだった」

「うーん、見える限りは山と森だった。少なくとも高い建物とかは近くに無さそうかな」

「そうか……」


 周りは森。しかもなんか変な森だ。1本大きめの木が真ん中に生えていて、そこから半径数メートルはちょっとした草しかない。で、その先はいろんな草木植物が鬱蒼としている。こんな場所は存在も知らない。


「律ならこの状況でも、余裕だったりするのか」

「いや、余裕で死ねるよ。結構寝てたのか知らないけど、思ったより身体が衰弱してるし、サバイバルなんて知識も経験もないし。精々イノシシを転がしたことあるぐらい」

「そうか……」


 律でも余裕で死ねるのか。それはまずい。それは非常にまずいぞ。俺はどうしたらいいんだ。


「大丈夫だよ!なんとかなるって!ほら、火が起こせれば寒さも凌げるし狼煙も上がるし、あとは……水があれば助けが来るまで全然生きられるでしょ?ほら!水見つけて火起こしたら勝ち!」


 ああ。律が俺を不安にさせまいとわざわざ元気にしている。俺のことなんて気にしなくていいのに。

 でも、少し安心した。火は律のパワーと持久力なら起こせるだろう。水は俺の血でも飲んでくれればいい。よかった。律が死ぬ心配はなさそうだ。


「ありがとう。気が楽になった」

「うん!じゃあ……とりあえずあっちに丘っぽいのがあったからさ、一旦そこ行って、ちゃんと周りの様子確認しよっか」

「ああ」


 律は、丘があるらしい方向に向かって進む。ただ、周りはどこも、垣根とまではいかないにしても草木が生い茂っている。掻き分けていかないと進めそうにない。


「ちゃんと私の後ろ着いてきてね」

「ああ」


 当然のように律が前だ。兄としては非常に情けないが、実際律の方が圧倒的にたくましいのだから仕方がない。


 俺は律が掻き分けた道を進む。お陰でほとんど何もしなくても比較的安全に進める。よくもまあ、裸でこんなところをズカズカ進めるもんだ。やはり格が違う。


「……んー?あれぇ?」


 数分進んだところで、律が何かおかしいことにでも気づいたかのような声を出した。


「どうした」

「なんか……おんなじようなトコに出たよ?」

「え」


 そこは、草が開けたちょっとした空間に大きめの木が1本生えているという、さっき見たような光景だった。


「……迷いの森みたいだな」


 森といえば迷うイメージがあるが、こんなにイメージ通り迷わせようとしている森があるとは。


「この木……さっきのとは別物だね。てことは、おんなじ場所ではないみたい」

「そうか」


 俺には同じに見えるが、律はさっき木を登ったから違いが分かるのだろう。まあ、あの短距離で一周したとは考えにくいから流石に同じ場所とは思わないが。


「異世界にでも来たか」

「えーっ?最近流行ってるあれ?トラックで轢かれて死ぬ奴でしょ?で、強くてニューゲームするやつ!」

「まあ、そう」


 この状況。もはやあり得ないとは言えない状況だ。しかし、俺はともかくとして律みたいな現実に生きている人間、加えてトラックで轢かれても死ななそうな人間にはあまり関係のない話。望んでもないのに訳のわからない場所に飛ばされるなんてこと、あっていいはずがない。


「まあいいや、とりあえず見晴らしの良さ――」


 いきなり、律が何かを察知したような素振りを見せて口を閉じた。気配を探るように集中している。なんのことだかよく分からないが、俺も邪魔しないように静かにする。


 律は俺に手で合図しながらゆっくりと慎重に木の影に隠れる。俺は誘導されるがまま隠れて、じっとする。


 なんだろう。熊でも出るのだろうか。そういえば、熊と律、どっちが強いんだろうな……。相手は人間じゃないし、流石に律の方が強いか。ルールも手加減の必要もないからな。俺という囮もいれば余裕だろう。


 少しの間じっとしていたら、木の向こう側から足音が聞こえてきた。

 ……あまり獣っぽくはないような気もする。人?いや、足音だけじゃなんとも言えないか。……結構近づいてきた。もう少しで草を抜けるんじゃないか?


「――ばあっ」


 草を抜ける音と共に、幼い声が聞こえてきた。

 その様子を、木の影から覗いて見ていた律。俺と目を合わせて「話しかける?」みたいな感じの合図を送る。俺が頷くと、律は木の陰から頭を出して、その足音の主に声をかける。


「あの、ぼく君?ちょっとい――」

「うわぁっ!!」


 急に現れた律に、その子はびっくりしてしまったようだ。驚いた声を上げて、駆け出す。


「あっ!ちょっと待って!ぼく君!」


 逃げたその子を律が追いかける。


「う、うわぁーっ!?」


 裸で追いかけてくる律に更にびっくりして、その子はさらに走り、生い茂る草の中に逃げてしまう。律もそのまま草の中に走って突っ込む。


 ……凄い。下手したら俺が運動靴を履いてグラウンドを走るよりも速いんじゃないだろうか。


 俺もはぐれないように追いかけようとするが、痛くて走るなんてことはほとんどできない。


「いて、いてて、いって……」


 ジャングルみたいに生い茂る草木が邪魔だし痛いし。でもとにかく見失わないように頑張って進む。


 ああ、まずい。あと少しで見失ってしまいそうだ。もうあんなに遠くに……。


 ――え……。えっ?


 スッと、視界から律が消えた。それも、見失ったというより、倒れたように見えた。律が。律が力なく倒れたように見えた。嘘だ。そんなはずない。律が……。


「律!」


 なんでもいい。とにかく急げ。走れ。痛みなんて気にするな。律に何かあってはいけない。走れ、速く!


「邪魔だ!邪魔だ!クソっ!なんだこの草!」


 目の前の邪魔な植物は、掴んでは力任せにブチ切って進む。不思議と簡単にブチブチ切れる。なりふり構わなければ、自分の体はこんなにも動くものなのか。


「律!」


 律の姿が見えた。律、大丈夫か!?


 その瞬間、傍から、逃げたあの子供が飛び出してきた。俺に向かって、手に何かを構えて飛び掛かってきている。


 このガキッ――!


 謎の道具らしきものを向けられたかと思うと、そこで俺の意識は飛んだ。


ケン君、妙に気持ち悪いですねぇ。ちなみに、ケン君の名前は健一です

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