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愛する男女の異世界物語 〜因果と愛の理由〜  作者: コリコリノチカラ
序章「事変」
14/33

第14話 二度目の侵入


「――うぇっ?」

「ん?どした智博」


「なんか人が倒れてる。いっぱい」

「は?」


 唯も窓から外を覗く。通りにチラホラと、まばらに人が倒れている。


「マジじゃん」

「行くか」


 智博は走って部屋を出る。唯も智博の後を追う。

 階段を駆け降りて曲がると、フロントの傍にも宿の従業員だと思われる男がぐったりとうつ伏せで床に倒れていた。


「うわ。ここにも」


 智博は駆け足でその男の元へ行く。


「大丈夫ですか?おーい!大丈夫ですか!?」


 智博が男の肩を叩きながら声をかけるも、反応はない。


「息してる……?」


 唯が心配そうに言う。

 男の口元に耳を近づけると、微かにスースーという音が聞こえる。また、その音に合わせて体が上下している。


「大丈夫。息はしてるみたい。怪我とかはしてないかな」


 智博は、男の腕を担いでうつ伏せになっているのを「よいしょ」とひっくり返す。


「怪我も無さそう……だけど」

「コイツ寝てね?」


 男は気持ちよさそうな顔で分かりやすくムニャムニャしていた。


「これは完全に寝てるなあ。しかもなんだこの完璧なムニャムニャ具合!」

「なんかムカつく」


 心配しただけに、腹が立つ唯。


「これ、みんな寝てんじゃないの?」


 智博は外に出て、近くで倒れていた人の様子を見る。こちらも同じくぐっすりとしていた。


「うん。寝てる」

「なんなんだ……?」


「とりあえずダスターさんのとこ行こう」

「うん」


 ふたりは階段を駆け上る。


「ダスターさんも寝てる予感」

「うわあ。それあり得るね」


「ダスターさん!」


 勢いよく扉を開けて部屋に入る智博。ベッドには寝相よく仏頂面で寝ているダスターが。


「ダスターさん!起きて!」


 智博はダスターを揺すって、起こそうとする。しかし、何度揺すっても起きる気配はない。


「起きない……やっぱり普通じゃないぞこれ」

「どうする?水でもかけるか?」


 そう言う唯の手元には水の入ったコップが。冷えていて美味しい水だ。


「よしぶっかけよう。オラァ!」


 智博は唯から水を受け取り、なんの躊躇いもなくダスターの顔面にぶちまける。


「――!」


 水をかけられたダスター。パッと目を覚まし、ゆったり起き上がる。


「……え?」


 濡れた前髪を掻き上げて、何も理解できてなさそうな感じに、間抜けに呟いた。


「え。じゃないんですよダスターさん!!」

「なんかみんな寝てるんです!道で!倒れて!」


 ふたりはダスターに迫って、状況を説明した。


「なるほど、それはおかしいですね。すぐ準備して様子を見て回りましょう」


 3人はパパッと身支度を整えて、部屋を出た。


 ――――


「なるほど。これは……」

「どうなんですか?」


 表に出たダスターとふたり。さっきも見た通り、チラホラと人が倒れている。


 ダスターは手のひらで水の塊を生成し、近くにいたふくよかな中年男性の顔面にバシャリとかける。しかし、起きる気配はない。


「魔法で眠らされていますね。見たところ、かなり大きな規模……ヘタをすると、街全体が眠っているかもしれません。ちょっと様子を見に行きましょう」


 3人は街を駆け足で見て回る。


「誰かの仕業?」

「どうなんでしょう。誰かが盗みをはたらくためにやったとも考えられますが、流石にこの規模……誰かがワザとやったとは考えたくありませんね。強力な魔道具の暴走か、或いは未確認の自然災害か……」


 ――――


 昼間賑わっていた大通りまでやって来たが、何人か倒れている人がいるだけで、起きている人は誰もいない。


「……街全体が眠っていると考えてよさそうですね」

「マジかよ」


 誰も起きていないのを目の当たりにして、唖然とする。


「私の手には余る事件かも知れません……応援を呼んでおきましょう」


 するとダスターは、翠緑の宝石がはめ込まれた耳飾りを外し、それを宙に投げて剣で斬り砕いた。


「――あっ!!やっと居た!いたぞー!?」


 ふたりがダスターの行動を不思議に思っていると、背後から喉を痛めていそうな女性の声が聴こえてきた。


「ん?」「あれが応援?」

「いえ、違いますが……」


「よかったー!」


 その女性は怪しい足取りで3人に向かって走って来て、膝に手をついて息を整える。


「はぁ、はぁ。やっと立ってる人いたー!」


 息が整い顔を上げると、その女性の顔は疲れている様子で、何より目がギラギラのバキバキに充血していた。


「うわぁ。だ、大丈夫ですか?」


 智博がその様子を見て心配する。


「あ、うん。なんでかってね、この指輪がね、悪い男に眠らされないようにってね、友達からお土産で貰ったんだけどね、本当に効果があるみたいで大丈夫なのぉ」


 微妙に回っていない呂律で、左手の人差し指に付けられたシンプルな指輪を見せながら言った。


「いや、大丈夫じゃなくないですか……?体調終わってるように見えるんですけど」

「さっきまで、朝まで飲んでて、急にみんな寝ちゃったと思ったらこんなんで……。おにーさんたちは大丈夫!?」


「あー。なるほどね。まあ俺らはそういうのイケるクチなんで」

「こいつ、心配してた相手が酔っ払いだと分かって適当こきはじめたぞ……」


 唯がボソっとツッコむ。


「私も、大丈夫、ですよ。強いので」

「ん……?」


 言い方が少しおかしいように思い、ふたりがダスターを見ると、彼はまぶたを指で押さえて、変な顔で頑張っていた。


「おい!!」

「何が大丈夫じゃ!」


「すいません。動いていればもっと大丈夫なのですが」


「お兄さん!もしかして指輪持ってないの!?」

「ええ。あいにく……」


「じゃあ、コレあげる!こちとらちょっとさ、お酒が効いてて役に立てそうになくってさ」


 女性はふらつきながら指輪を外し、ダスターの手を引っ張って握らせる。


「あぅ……がんばって、ね……」


 儚げにそう言い残し、ギラギラしていた目がとろんと緩む。そのまま魂が抜けるように、ダスターの腕にぐったりと寄りかかった。


「……なんかすっげぇドラマチックに託していったな」

「酔っ払いが寝ただけなのに」


「貴女の想い……この私がしかと受けとりました」


 グッと指輪を握りしめて、感情を噛み締めるようにダスターが言う。


「ノらなくていいのに」

「カッコつけなくていいのに」


 ダスターは女性を道の傍にそっと置いて、羽織っていた上着をかける。


『指輪は返します。後でこの上着と交換しましょう』


 そう書き残したメモを、彼女にかけた上着のポケットに挟み、小指に指輪をはめる。すると、目がシャキンと開いた。


「おお……。これは中々いいですね。こんなものがあったとは」

「効いてそうですね」「よかった」


「さてと。この状況をどうするか、ですね。まずは原因を突き止めないことには……」

「あ。あたし思うんですけど、特に理由が分かんないんだったら、原因アレなんじゃないですか?」


 唯はおおよそ北を指す。その方向は3人がやって来た方向。川の上流であり、例の魔王の塔がある方向。


「……なるほど。確かに。この規模の魔法もあの塔の仕業であれば納得がいきますね」

「絶対アレだ。だってあれロクなもんじゃないもん」


「よし、行きましょう」


 ダスターは闇を出現させて、ふたりが入れる程の大きさのカゴを作った。


「えっ。俺たちも行くんですか?」

「あそこ危ないから行きたくないです」


「ああ、確かに。しかし……」


 ――何が起こるか分からないこの状況。おふたりを置いていった方が安全でしょうか。それとも、私の手の届く範囲にいさせた方が安全でしょうか……。ファルガバード様であれば間違いなく後者なのですが……。


 ダスターはしばしの間思案する。そして、出した結論は。


「ついて来てください。様子を見に行くだけです。攻略をするつもりはありません。私の手の届く範囲が最も安全ですので」

「……ホントですね?」


 唯は疑惑の目でダスターを見つめる。


「ええ。決しておふたりに怪我はさせません。ファルガバード様にも任されていますから」


「行ったとして、様子見て、どうにもならなそうだったらどうするんですか?」

「その時はウナレスの首都まで走って、そこの人になんとかしてもらいましょう。道も整備されていますので、私が頑張れば半日で着きます」


「さっき呼んでた応援は?」

「あれはいつ来るか分かりません。来ればどうにでもなるでしょうが、相当遠くですから、おそらく1日から2日かかるかと」


「なるほど」

「どうしますか。おふたりがここで待った方がいいと判断するのであれば、無理に連れていくつもりはありません」


「どうする?唯。俺は様子を見るだけなら行っていいと思うけど」

「そうだな……じゃあ、一緒に行きます。ちょっと見るだけですからね。中には入りませんからね?」


 ふたりは少々躊躇いつつも、ダスターの黒いカゴの中に入る。内側はブヨブヨで衝撃はある程度吸収される作り。


「では、参りましょう。」


 ダスターはカゴを背負って走り出す。

 

「うおぉー。速!」

「ハイレベルな人力車だ」


 ――――


 岩壁を蹴り破れるだけあって、ダスターの脚力は普通ではない。あっという間に街を出て、塔に向かう。


「……どうやらアタリのようですね。魔力が強まってきました」


 眠気に無理矢理抗い、ダスターの目は段々とギラつく。

 目の良い智博が塔をよく見ると、扉が開いているのが見えた。


「うわ。開いてるよ塔の扉。誰だよ開けたアンポンタンは」

「全くだ。立入禁止令とやらがでてたんじゃないのか。せめて閉めろよ」


「扉を閉めたら治まるのでしょうか」

「さあ……」

「やってみないことには……」


 ――――


 塔の近くまでやって来た一行。

 とても大きく重厚な扉は、中途半端に押し開かれている。そして、少し奥に武装した男が何人か倒れていた。


「あの人たちが開けたのか。全く。やばい魔物がいなかったから良かったものの……」

「運が悪かったら死んでるぞ」


「ふぅ……間違いなく、これが元凶……ですね」

「大丈夫ですか?ダスターさん」


 唯がダスターの顔色を伺うと、それは酷いものだった。赤く充血した白目に、バチバチに開いた瞳孔。目は大きく開いており、その下のクマは深い。


「うっわ!イッちゃってるよコレ。もう離れた方がいいんじゃ……」

「あれ、か……。あれなら……今、ヤってしまえば……」


 ダスターは唯の声が聞こえていない様子で、唐突に闇で作り出したハンマーを握り込んだ。そして、一歩踏み込んで塔に向かってぶん投げ、それはすごい勢いで扉に当たって塔の中に消えた。


「えっ。何やってんのこの人」

「これはもうダメだな。よし帰ろう」


 ふたりはダスターを引っ張って帰ろうとする。しかし、ダスターは動かない。


「もう無理ですよ!まずは離れないと!また寝ちゃいますよ!」

「そうですよ!」


 ふたりが懸命に引っ張ると、ダスターはふらっと姿勢を崩して力なく倒れた。


「あ。」「あ。」


 完全に寝てしまったダスター。


「もう!何が『私の手の届く範囲が安全』だ!寝ちゃってるじゃんか!」

「仕方ないなあ。俺たちで一旦引き離すしかないね」


 智博はダスターを背負おうと、彼の腕を肩に乗せる。


「よいしょ!!」


 が、全く動かない。


「え?ん?あれ、おかしいな」

「どうした智博」


「ちょっと待って。……フンッ!!」


 担ぎ直してもう一度踏ん張るが、まるで動かない。


「めーっちゃめちゃ重いんだけど!なにこれ。なにこの人。もしかしてデブ?」

「デブではないだろ……。でも、そんなことある?お前で無理ならもう無理だぞ」

「うん。無理。これは岩」


 智博は諦めて起き上がる。


「……どうしよう、唯」

「この場でなんとかして起こす」

「よし、そうしよう」


 唯はダスターの顔のそばで大きく息を吸い、智博は馬乗りになって手を構えた。


「ダスターさあぁぁぁん!!!起きろ!!!あーさですよぉー!!ホントに朝ですよー!!」

「寝るな!!寝たら死ぬぞダスター!!起きろぉ!!」


 耳元で叫ぶ唯と、全力の往復ビンタをかます智博。

 が、ダスターは起きない。


「……ダメだ、全然起きない」

「起きろー!!目を覚ますんだ!!ダスタァァァー!!!」


 智博はダスターの胸ぐらを掴んでゆっさゆっさ揺らそうとするが、服がぐちゃぐちゃになるだけ。ダスターの体もほとんど動かせていない。


 その後もしばらくダスターを起こそうと頑張ったふたりだが、残念ながら起きる気配はなかった。


「……。ダメみたいです。唯さん、どうしましょう」

「これ、マズいぞ」


「マズい……確かに。かなりマズいかもしれない」

「もしこのままみんな起きなかったら、飲まず食わずで街の人は全員死ぬだろうし、塔をなんとかしようにも頼れる人がいない……」


「よし!じゃあもう俺らがやるしかない!」

「は?おい、ちょっと待て!」


 手を叩いてやる気満々で扉に向かおうとする智博を唯が止める。


「無理だろ!言っとくけど扉閉めるだけでも無理だからな!ダスターさんの投げたハンマーが当たってもびくともしなかったの見ただろ!」

「違う、それは分かってるよ。あれよく見て、塔の中」


「ん……?どれ?」


 唯は智博が指さす先を見る。だだっ広い塔の内部。薄暗い中、床で倒れている人が手を伸ばす先。そこには、杯の上に球が乗っかったようなものがあった。


「なんだあれ」

「あれが発生源だよきっと。いかにもってカンジするし。ダスターさんはあれを壊そうとしてハンマーを投げたに違いない」


「ホントか?だとしたらだいぶノーコンだけどな」

「それはだって、意識朦朧としてたみたいだし。とにかく、あれさえ壊せばなんとかなるかもしれないでしょ?」


 智博は再び塔に向かおうとするが、またもや唯がその腕を両手で引っ張って止める。


「やめとけって。魔王が作った塔だぞ。どうせ中に入ったらヤベェことしてくるんだ。危なすぎる」

「でもだって。すぐそこにあって、あれを壊せば街の人々を救った英雄だよ?しかも俺たちは今回無敵!一切眠くならない!」


「でも、壊せるかも分かんないだろ」

「やってみる価値はあるでしょ?」


「待て。他に何かいい手が……」

「ある?」


「いや、思いつかないけど……」

「じゃあやろう。俺たちはこの塔にとっての天敵に違いない。催眠魔法が効かないってことはそういうことだよ」


「行くのか。本当に行くのか」

「行く」


「そうか。分かった」

「唯はどうする?」


「は?お前が行くならあたしも一緒に行くに決まってんだろ」

「よし、じゃあ行くぞ!いっちょ、街1つ救っちゃいますか!」


 ふたりは、見上げるほどデカい扉のそばまでやって来て、中の様子を伺う。


 中は薄暗いが、何故か奥までちゃんと見える。天井は相当高く、大きめの建物でもすっぽりと入ってしまうような空間。

 数歩先に武装した男が4人倒れており、そのさらに奥、部屋の真ん中に例の球がある。


「どう?ラスボスみたいなの隠れてない?」

「……いない。真ん中のやつ以外、なんもないね」


 唯が智博の傍にくっつく形で、ふたりは塔に入る。何かある訳ではないが、音を立てまいと小声で、歩き方も慎重だ。


「あっ。あれ。ダスターさんが投げたハンマー。そのまま残ってる」


 唯が、真っ黒くて大きなハンマーが床に転がっているのを見つけた。


「丁度いいね、アレでかち割ってやろう」


 智博はそのハンマーを手に取る。殆ど智博の身の丈ほどある大きなハンマーだが、智博はそれを自慢の筋力で持ち上げる。


「ヨイショ……!」

「扱えそう?」

「ギリ。……いや、むしろ丁度いいね」


 ニヤリと笑う智博。単純な破壊力勝負に、男の血が騒ぐ。

 杯に乗った球の前で、ハンマーを構える。


「ちょっと離れてて。飛んでくかもしれないから」

「よし、頑張れ智博!やってしまえ!」


 少し離れた位置から、唯の応援。智博の気合いは充分。


「シャ!こんな叩きやすい位置に構えやがって!ブチ壊してやるぜエェ!!」


 位置エネルギーと全身の筋肉を存分に活かした一撃が、球に向かって炸裂する。


「――ゥオラァッ!!!」


 ドガンッッ!!とハンマーと球が衝突し、智博の手には痺れるほどの振動が伝わる。球は硬く頑丈で、智博のハンマーを跳ね返した。……が、その形を留めるには至らず、見事にバリンと割れた。


「おおっ!!割れた!ナイスパワー智博!流石だな!」

「痛ってえー!腕痺れた!でもやったぜ!これで……止まったのかな?全然分かんないけど」


「分からん。どっちみちサッサと出るぞ。急に迷路にでもなったら堪ったもんじゃない」

「そうだね」


 ふたりが塔を出ようとした、その時。

 智博がかち割った球が乗っていた杯から、プクーっと風船のようなものが膨らみ始めた。


「アッ。絶対ダメやつコレ!唯、逃げるぞぉぉ!!」

「ヨシ!走れ走れぇぇ!!」


 膨らむそれを見るや否や、全力で撤退するふたり。躍動感に満ち溢れた見事な逃げ。


「う、うぅ……」


 扉の近くで倒れていた男の1人が、頭を押さえて身体を起こした。


「ヨッシァァ!!ナイス起床!後は任せたぜ戦犯!!」

「行け戦犯!!」

「……ふぇ?」


 何も理解できていない様子の男の横を、風のように駆け抜ける唯と智博。

 扉を通り抜けて外に出ると、今度はダスターが同じように起き上がっていた。


「あっ!!戦犯2!」

「任せた!戦犯2!」

「ん……?」


 あくまでも自分たちは戦犯ではないといった気概で、ふたりは駆け抜ける。


 しばらく走り続け、塔からはかなり離れた。


「ここまで来れば……!」

「はぁ、はぁ……なんとか……」


 ようやく立ち止まって、荒くなった息を整える。


「なんか最後ドッキリ入ったけど……取り敢えず街の人はもう大丈夫なんじゃないか?起きてたし……」


 唯は、倒れていた男やダスターが目覚めたことを思い起こす。街の人も今頃起きているに違いない。


「ねぇ、智博。……智博?」


 唯は顔を上げて智博を見る。彼はニキの街を唖然として見つめていた。


「ん?どした……?」


 唯も街の方を見ると、そこには明らかに不自然な、黒くて巨大な十字架が街に刺さっていた。街にあるどの建物より、数倍デカい。圧倒的存在感。


「なんだ……あれ」


 唯も智博と揃って呆然とする。すると、その真っ黒な十字架はギュッと真ん中で縮まり、黒い塊になった。


「おい!こっち来るぞ!」

「危ない!」


 黒い塊はふたりに向かって勢いよく伸びたかと思うと、そのまま頭上を通って塔の扉に流れ込んだ。


なんだこの黒いの

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