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鋼鉄の乙女は戦火を愁う  作者: ふらっぐ
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Steam of consciousness

それは答えなどなく、またそれゆえに答えはある。


それは無数のものであり、たったひとつしかないものでもある。

 ――――人は、死ぬと天国か、地獄に逝くのだと聞きました。


 その、少女の姿をしたものは、どこか色のない瞳で、しかしまっすぐに、青年を見ながら言った。


 ――――ならば、私はどうなのでしょう。どこかへ逝くのでしょうか。それとも、ただ、消えてなくなるのでしょうか。


 その声は、青年に問いかけながら、だが、自問するかのように、彼女は自分の胸に手を当てた。


 そして、感情のない表情で――――しかしそれゆえにどこか消え入るような儚さをもって、再び青年に視線を戻す。


 ――――そもそも、私は、生きているのでしょうか。


 青年は、ただ彼女の言葉に、微笑みを返す。


「……身体が活動しているということだけが、生きているということじゃない。生きるということは、一つの定義では決められない」


 その答えに、少女は不思議そうに首をかしげる。


「でも僕は、君がそう考えるということは、生きるということにとても近いことだと思う」


 青年の言葉に、少女は再びうつむき、胸に当てた手を軽く握りしめた。


 ――――わかりません。メモリーを検索してみても、そのような曖昧なワードは見つからないのです。


 表情も声色も変わらない少女の紺色の瞳が、かすかに揺らぐ。


「――――今は、それでいいんだ。きっと、いつか君は、答えにたどり着く。僕が保証するんだ、間違いない」

 優しく諭すように、青年は少女の肩に手を置いた。


 ――――はい。あなたの言葉は、私にとって絶対です。


「はは、そんなに固い言葉を使われると、僕のほうがかしこまっちゃうな。いいかい、そういう時は、こう言うんだ。『信じています』って」


 再び少女は首をかしげるが、すぐにうなずいて見せた。


 ――――はい。あなたの言葉を信じています、マスター。


 相変わらず固い表情に固い言葉。そこに思わず青年は苦笑する。


「まあ、いいか。でもきっと、君はそこから始まるんだ。そして、いつかきっと――――」


 そう言って彼女の髪を撫でる青年に、少女ははじめて――――言葉では表せない、うれしいような、切ないような、安堵のような、憧憬のような。


 かすかな揺らぎの雫が自らの身体のどこかに落ちたのを、感じたのだった。






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