宿題
そして私が選んだプランは……
「えっと…、私は王子に復讐しようと思って幽霊になったのよ。」
うん。これだけ言うのがベストかな。私の普通の頭じゃこれが限界でして…。それに成仏の話をするとプランBの二の舞になってしまう…。
「王子に復讐……?じゃあ、今から行ってくるね!姉様はここで待ってて。安心してね、すぐ帰ってくるから!失敗なんてしないよ。確実にサクッと殺ってくる!あ、姉様も見たい?それなら一緒に行こ!姉様とお出かけうれしいなぁ。そういえば僕が昔、姉様とお出かけに行くのが楽しみすぎて階段から落ちたのおぼえてる?僕は昨日のことみたいにおぼえてるよ!あの時の姉様の心配してる顔がとても綺麗で……」
「ノア、少し黙って。」
「はぁい。」
はぁぁ……。ノアって本当に扱いづらい…。まだあの王子の方が扱いやすいわ…。王子とは違ってノアのは純粋な愛故の暴走だからなぁ…。私にはどうにも出来ないし、怒るのもなぁ…。ノアのマシンガントークもどうにかならないかな。それと私への愛の重さも。他に愛する人を見つけて欲しい…。でも今のところノアには婚約者はいない。というか本人がずっと拒否してるんだよね。両親が最初に婚約者を連れてきた時にノアは何て言ったんだっけ?……たしか
「わぁ!姉様の方が綺麗だし素敵だね……ってそんなの当たり前か!だって姉様は世界で1番なんとかかんとか………」
だっけ。あの父と母も絶句。私はその時の相手の令嬢の顔が忘れられない…。ノアに対する怒りじゃなくて、その怒りが私に向かうんだもん…。レティアラは気にしてなかったみたいだけど私は気にするよ…。女の子同士は複雑なんだよ…。ノア…無駄に敵を増やさないでくれって今なら思う…。
「あのねノア、私は自分の手で復讐したいのよ。だから何もしないで?私が全て実行するわ。ノアは何もしなくていいのよ。」
よし、これでノアも王子を殺りに行くのをやめるだろう…。ノアを殺人犯にしたくないし、王子に復讐っていっても命を取ろうとは思ってない。少し反省してくれるだけでいいんだ。私の中のレティアラがそれで満足してくれるかどうかは微妙だけど。というか考えたら私めっちゃ寛大だな。処刑を実行した相手に反省だけでいいって慈悲深すぎるでしょ。
「姉様……」
「ノア……?」
あれ?なんかノアの様子がおかしい…。ブルブル震えてる…。え、どうしたの?まさか私なにか地雷踏んだっ!?
「えっと…どうしたの…?」
「姉様は…僕のこといらない?僕はもう…姉様の傍に居られないの…?」
「え?」
どういうこと…?今の会話からどうなってノアがいらないとかの話になったの…? え…姉様全然わからない…。
「僕はこんなに姉様のためを思ってるし、姉様のためならどんな事でもできるよ…?姉様のために何も出来ない僕なんて僕じゃない…。ねぇ、僕は何をすればいいの…?姉様のために何をすればいいの…?何もしなくていいなんてひどいよ…。僕の存在意義は姉様にあるんだもん。姉様のそばに居たい、姉様を喜ばせたい。ただそれだけのために僕は生きてるんだよ…?」
………はっ!!思考停止してた…。すごい言い分だな…。もはやあまり頭に入ってこなかったよ…。
えっと、つまりノアは私のために何かしたいけど、私が何もしなくていいって言ったから自分の存在する理由はないって事?
いや、飛躍しすぎでしょ!私の為じゃなくて、自分のために生きてよ!それに私がいつノアをいらないって言ったのよ!それにそれだけでこんなになるなんてね…。ノアって…ノアって……
「ノアって本当にお馬鹿ね。」
「姉様…?」
「私がいつノアの事をいらないなんて言ったの?そんな事ないわ。ただ王子の事は私一人でやりたいだけよ。でもね、ノアには私の為以外にも生きる意味を見つけて欲しいと思ってるわ。けどね、急がなくてもいいのよ。時間がかかってもいい。それまでのノアの役割は私の所に来てお話し相手になってくれること。あ、たまにでいいわよ?」
うん、これくらい言っとけば大丈夫でしょ!ノアも私以外を見ないといけないしね。私は幽霊だもん。ノアには言ってないけど、王子への復讐が終わったら私、もといレティアラは成仏してしまう。そうすればきっとノアは壊れてしまう。それまでのノアへの宿題。きっとクリアしてくれるよね。
「姉様……。僕毎日来るねっ!!」
「毎日はやめてね。」
先は長いな…。