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転生、処刑、後に幽霊  作者: 雪白なずな
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来客、後に対面(再)

さて…復讐を意気揚揚と誓ったが、今までの人生で復讐の経験などセナとして生きていた時にも勿論ない。つまり、何をしたらいいのか全くわからないという状況に陥った。

この部屋に誰も来ないから分からないが、私のこの姿は他の人には見えているのかという問題がある。全く誰にも見えなかったら意味がない。この部屋と同じように年月を重ねる毎に埃をかぶり集塵の1部となるだけだ。そもそも、誰もいないというこの状況もおかしい。

日記を読んでいて思い出したが、ここは王宮にあるレティアラの部屋だ。おそらく13歳頃からここで住んでいる。この部屋はまだ荒らされた形跡もなく、レティアラが暮らしていた頃のまま。つまり、処刑からそれ程時間が経っていないのだろう。1度外へ出るべきか、このまま考察を続けるべきか、迷いが生じる。1人悩むレティアラの耳に子猫が扉を引っ掻いているような僅かな物音が入り込む。


「誰か来る!隠れる!?」


突然の来客予定に心臓はリレーが終わった時のように激しく動き出す。一旦はベッドの下に隠れ、れティアラは辺りを見回した。

足音はもうすぐそこまで近づいている。コツコツと続いていた足音は私の部屋の前で止まったように思われた。やはり足音の主はこの部屋に向かってきていたのた。

ガチャ…っと扉を開けて入ってきたのは見知った侍女達、そしてレティアラが処刑前に目にした顔であった。

いきなり復讐相手な目の前に現れたことで、レティアラの心は台風が通り過ぎていくように荒れていた。何をしに来たのか、どの面下げて現れたのかと心の中で悪態をつく。


部屋に侍女が全員入ってくると王子は淡々と指示を出した。

「この部屋を速やかに片付けよ。明日からここにはリアナが住む。」



レティアラは思わず鳥肌をたて、自身の体を両手で抱き締めた。

処刑した相手の部屋に自分の恋人を住まわせるのという考えようによっては猟奇的な王子の発送に虫唾が走った。その間も侍女達はテキパキと片付けていく。


「王太子殿下。このような物がありましたが…」


侍女の1人が渡したのは、日記だった。

突然過ぎて置き忘れた!レティアラは焦り出す。焦り出すといっても幽霊となっている身体では冷や汗が出るともない。

もしかしら私の日記を読んで王子が反省するかも…と思った矢先、王子は言い放った。


「レティアラの日記か?そんなもの捨ててしまえ。」


…………いや、読めよ!?即決で捨てるな!!


綺麗な突っ込みが炸裂するほどに衝撃を受けていた。

このままだと日記は捨てられ、部屋も盗られてしまう。

一か八かでレティアラは行動に出ることとした。


「とらないで…私のモノ…」


ヒンヤリとした温度の乗った声が部屋に響く。

特別大きな声という訳では無いが、それでも部屋の中にいる全員の耳にその音声情報は強烈なインパクトを与えた。


「おっ…王太子殿下…?何か仰りましか…?」


「どうしてこんな事するの…?やめて…とらないで…」


侍女達の顔が青ざめる。それもそのはず。王子が言っているにしてはあまりにも弱々しく、少女然とした声だからだ。王子もその顔には驚きの色を乗せており、目は大きく見開かれていた。その顔を見ただけで私の中のレティアラは大歓喜した気がした。


「なっ…何だこの声は…!」


王子が声を荒らげる。まだ終わらせてあげない。


「なんでとるの…?……出てってよ…。はやくっ!!」


ガタガタと机や棚がカタカタと音を鳴らしだす。現代で言うところのポルターガイストというものだ。これは色々試している間に気づいた力。どうやら私は少しの念力?のようなものなら使えるらしい。その力を使って私は侍女から日記を取り上げ、扉を開ける。


「ひっ……!!」


侍女たちは顔を真っ青にして次々と出ていく。仕えるべき王子を置き去りにして逃げてしまうほどにこの世界で幽霊というものは畏怖の対象となるのだろうか。王子だけが今だに部屋におり、呆然としている。その間抜け面に気分が高揚するのを感じた。


忘れてはいけないのが日記の存在だ。あそこにはレティアラのことが書いてあるが、少々私の手直しが必要になるだろう。私は飛ばした日記を拾うためにベッドの下から出て、拾う。そして王子の方を見ると、先程よりも驚愕した表情でこちらを見ていた。私が振り向いたことでパチッと視線が合い、状況が違えばまるで運命の出会いの様にも見える程にお互いが無言で見つめ合う。王子は見えるタイプの人間だったのだろう。


「…レティ…アラ…?」


ぽつりと呟く王子。

人違いと言いたいのを唾液とともにぐっと飲み込む。

落ち着けセナ。落ち着けレティアラ。これはチャンス。王子に復讐し、私は成仏するのだろう。弱気になっている心に喝を入れ、頭を通常の三倍程回転させ、打開策を練る。

幸い、私の姿は10歳位だ。この位の大きさなら自然に切り抜けることが出来る方法がある。



「だれ…?ティアのこと知ってるの…?」


私が繰り出したのは、記憶のない幽霊の振りというものだった。ややお粗末だか、記憶があるレティアラでは王子は聞き耳も持たず、この部屋を封鎖、あるいは屋敷ごと建て直しをしてしまう可能性がある。それは避けなくては行けない。

なので、今後私がレティアラとして動きやすくなるための作戦を考えた。作戦はこうだ。第1に、王子と会う前のレティアラのふりをして近づく。王子は私の存在を良くは思わないだろが、私の状況によっては上手く利用する方法を考えるはずだ。私は自分がどうやって死んだのか分からないふりをして、王子にその真相を探してくれるよう頼む。レティアラがリアナに嫌がらせをしていたのは事実だ。しかし、今の私は幽霊であり、処刑前にも明確な証拠は無かった。今後、幾らでもレティアラの無実を偽装するための用意は出来るだろう。


「本当にレティアラか…?貴様は死んだはずじゃ…!それにその姿は…!!」


私が言葉を返したことで王子は更に声を荒らげ、尽きぬ疑問や驚きを排出しだした。

通常なら子供にそんなに強い語感で話をすると泣き出してしまうだろうが、レティアラはただの子供の幽霊では無い。そんなレティアラでもやや怯んでしまうほど、王子の剣幕は凄まじいものだった。イケメンでも怖いわとレティアラが心の中で突っ込むほどに。


「ティアもわかんない…。お兄ちゃんはティアの事知ってるの?」


背に腹はかえられない。とりあえず何も分からない振りを続行することにした。質問を質問で返すのは良くないが、こう聞くと王子は押し黙った。おそらく王子も困惑しているだろう。処刑したはずの元婚約者が幼女幽霊になっている状況では無理もない。ひとつの物音でも立てよならすぐ様狩の標的になりそうな程の静寂が続く。レティアラの胸中は、気まづいから何か話してお願いしますと懇願していた。











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