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転生、処刑、後に幽霊  作者: 雪白なずな
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探索、後に復讐(再)

読み進んで行くうちに私の…レティアラの記憶は思い出されていった。そう、レティアラは公爵令嬢であり、この国の王子の婚約者だ。

レティアラが王子と初めて会ったのは10歳の時。レティアラは幼い頃から公爵令嬢として、そして王子の婚約者として、兄弟の中でも最も厳しく育てられていた。兄妹が楽しく遊んでいる傍ら、レティアラはいつも妃教育を受けていた。それに対し、自身が家族の中に潜む異物の様に思う時もあったが、王子の婚約者という尊大な称号を手にした栄光はレティアラの心を強くした。僅かな認識の歪みを感じながらも、レティアラは無邪気で優しい女の子だった。湾曲した家族からの期待や悪意なき躾を愛と認識することでドロドロに消化し、自分を清らかに保つための糧へと代謝していたのだ。しかし、王子と会ったあの日から、徐々にレティアラは変わった。王子は元々人に対する興味が薄く、冷たい印象のある子供であり、レティアラは同年代であるにも関わらず全てを知り尽くした様な冷淡な瞳に畏縮し、自身とは対照的な行動に少し引け目を感じていた。それでもありのままの自身に誇りを持ち、これから理解を深めていけば良いと思っていた。

そんなある日、レティアラは侍女の話を聞いてしまう。

「王子はあんなに穏やかで大人しいのに、レティアラお嬢様は元気が有り余っている様子ね。」

聞いてはいけない。今まで素知らぬ顔をしていた、レティアラの中にある暗淡の欠片が静かに蠢き始めている。早く立ち去らなくては。そう思うものの、体はまるで底に縫い付けられたように言うことを聞かなかった。

「本当に。そのせいで王子が怪我なんてしたら、公爵家としての顔が丸つぶれね。少しは大人になって欲しいわ。旦那様や奥様もあの性格は矯正できなかったのかしら。」

くすくすと笑う使用人達に、レティアラは呆然とした。他の家門の使用人ならば、いくら噂をされようとも気になることは無かった。しかし、1度は懐に入れ込み、忠誠を誓われたはずである存在に自身の根本を否定されることは、幼いレティアラにとってとてつもない惨苦となってしまったのだ。

それから、レティアラは見違える様に大人へと変わっていった。いや、大人らしく振る舞うようにしたという方が正しいか。子供には不相応な高慢な態度を取り、一般的に好意を持たれるはずもない高飛車な女の子になっていった。レティアラの知る大人の女性とは母しかいなかったので、いつも使用人をいびり、誰に対しても高圧的な母の模倣をすることで周囲に大人だと認めてもらおうとした。レティアラは王子のことを愛していた訳ではなかったが、それでも婚約を続けるために自分の芯の部分を曲げ、心根を変貌させるレティアラはおそらく、王子に好かれたいのではなく、家族に迷惑をかけたくなかったのだ。




「皮肉な話……。」



自然と口からはその言葉がこぼれ落ちていた。レティアラは大人な態度を取り、少しでも王子に釣り合うように、家族に迷惑をかけないようにしていた。けれど、王子は通っている学園で天の導きにより決められた運命の相手であるリアナに出会う。素直で守ってあげたくなるリアナに王子はすぐに虜となり、自身の心を凍てつかせていた氷を溶かした聖女なのだと盲信している。王子が選んだのは天真爛漫で無邪気な可愛さのあるリアナであり、王子に釣り合うために無邪気な愛らしさを捨てたレティアラは処刑された。

そこで、2つ目の疑問が出てくる。処刑された時、確かレティアラは16歳だった。しかし、先程、鏡に写っていた女の子はどう見ても推定10歳程の女の子だ。なぜ年齢が遡っているのか。考えても、心当たりなど当然なく、推測すらも思い浮かばない。解けない謎に目を瞑り、私は続きを読む。


最後のページにはこう書いてあった。

私は何もしていない。どうして王太子殿下は私を邪険にするの。王子に愛されないと、家族はどうなるの。私はただ愛されたかっただけなのに。



あぁ、そうか。やっと私は気づくことが出来た。今、ここに幽霊として存在しているのは私の意思ではない。 レティアラの未練で私はここに生まれたんだ。なんだ、そうと分かれば話は早い。




「レティアラを…私を陥れた連中に復讐して、成仏してやる…。」


そして私の復讐は歪な音を立てながらも螺が巻かれだした。


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