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 私に覆い被さってた大きな影が消えた。


 さっきまでの小雨が、いつの間にか本降りになって私の顔に当たる。


 清人?


「おっさん、いい歳して恥ずかしくねえの? 完全に犯罪だぜ。そんだけの覚悟があってやってんの?」


 ゴッ!!


 また、あの音。


 うめき声もする。


 この声は…課長?


 清人!?


 清人!?


 どうなってるの?


「美香に手を出しやがって! それ相応の報いを受けさせてやるよ!」


 ゴッ!!


 清人は私の革手袋を両手につけてる。


 それと、どこで拾ったのか拳大の石を握ってた。


 その石で課長の顔を殴ってる。


 課長の顔面は、もう血まみれだ。


 歯が折れて口から泡を吹いてる。


 やめて!


 清人!


 もういいよ!


 もう、充分だから!


 それ以上やったら課長が!


「いや、こいつは許せない。お仕置きターイム!」


 清人が笑った。


 こうなると、もう清人は手がつけられない。


 ゴッ!!


 ゴッ!!


 ゴッ!!


 やめて、やめて!


 清人、やめて!


 清人は何回、殴ったの?


 課長の顔は誰だか分からないぐらい変形して…身体が動かなくなった。


 清人…。


「あ。こいつ、ダメだな。やりすぎた」


 やりすぎた?


 だから言ったじゃない!


 どうするのよ!?


「そんなに怒るなって。大丈夫、俺に任せとけば。てか、久しぶりじゃね? お前が前の彼氏と揉めたときだから…3年ぶり? 全然、連絡くれないから俺のこと忘れたのかと思ったよ」


 あ…うん。


 ごめんね。


 いろいろと忙しくて…そんなことより、これ…課長をどうするのよ!


「安心しろって言ってんじゃん。返り血は雨で分かりにくくなるから」


 そうだ。


 ずっと雨が降ってて、私も清人もずぶ濡れだ。


 清人の服に付いてる血も上着を脱げば目立たないかも…。


「凶器を持って帰って服といっしょに処分すればバレないって」

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