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 ああ!


 何とかしないと!


 このおじさんは本気で私を抱くつもりなのだ!


 逃げないと!


 逃げないと!


 頭では分かっているのに恐怖で身体が動かない。


 気分が悪くなって、頭がガンガンしてきた。


 それでも何とか課長の腕を振り払った私は朦朧とした意識でホテルの入口を避けて、路地裏へと転がり込んだ。


 電灯も無く暗い路地裏。


 途中で足がもつれてペタンと座ってしまった。


 止まってはダメ!


 逃げないと!


 私は四つん這いで奥へと進んだ。


 ポツポツと雨が降ってきた。


 今日は雨になるなんて言ってたかしら?


 そんなことはどうでもいい。


 とにかく逃げないと!


 必死で進む私の両肩を後ろから大きな手が掴んだ。


 背中に何かが密着してきた。


 重みが、のしかかってくる。


 課長だ!


 押さえ込まれた私は前に進めなくなった。


 すごい力で身体を反対側に向けられた。


 大きな顔が迫ってくる!


 酒臭く、生暖かい息が私の顔にかかる。


「鈴木さん、前から気になってたんだよ、いいだろ?」


 ああ!


 もうダメ!


 私はこの獣に滅茶苦茶にされる!


 助けて!


 助けて!


 誰か助けてください!


 お願いします!


 誰でもいいから助けて、お願い!


「……香」


 助けて!


 誰か!


「……美香…美香!」


 あ!


 これは…清人の声だ!


 幼なじみの清人の声!


 清人!


 清人!


 助けて!


 ここよ!


 私は、ここよ!


「美香! どうした?」


 どうしたじゃないよ!


 早く助けて!


「美香! 手袋は?」


 手袋?


 何を言ってるの、清人?


「持ってるのか?」


 ああ…。


 そうだ…前に清人に会ったときに「常に持ってろ」って言われてたっけ…。


 ポケットに…ポケットに入れてたような…。


「よし、俺に渡せ」


 何なの!?


 清人!


 手袋なんてどうでもいいから、早く助けて!


 私、こんなのイヤ!


 絶対にイヤなの!


「分かってるって。今、助けてやるから」


 ゴッ!!


 突然、鈍い音がした。

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