表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/5

2

 だいたい私は今、お金にすごく困ってる。


 恥ずかしい話だけど前に付き合ってた彼氏に騙されて、50万円ほどの借金がある。


 私は昔から生活は派手じゃない。


 派遣の給料でもコツコツと返済することは可能だ。


 でも、来月の更新がされずに無収入になってしまったら、さすがにマズい。


 今の会社の事務仕事はあまり人とは関わらずに居れるし、地道な作業なので私の性に合ってる。


 課長のご機嫌を損ねて辞めたくはない。


 そして…気がつけば私はカラオケボックスで課長と身体が密着した状態で、昔の有名なデュエット曲をたどたどしく唄っていた。


 カラオケに来たのは失敗だった。


 課長は右手にマイクを持ち、空いた左手で私の手を握ったり、肩を抱いたり、腰を抱き寄せたり、果てはスカートの上からお尻まで触ってくる。


 これはもう完全なるセクハラだ。


「やめてください!」


 そう言って課長を突き飛ばして部屋を出よう。


 何回もそう思うのにお金のことが頭をチラついたり、酔っている課長が私の態度に激昂したら、柔道の技で投げ飛ばされるのではないかと想像したりして、結局、私は課長のされるがままになっていた。


 課長より年下とはいえ、こんな美人でもスタイルが良いわけでもないパッとしない私に、こんなセクハラをしてくるなんて課長は離婚で頭がおかしくなっているのだろうか?


 それとも普段から、私を性的な眼で見ていたのだろうか?


 ああ、イヤだ!


 イヤだ!


 イヤだ!


 考えたくもない!


 吐き気がしてきた!


 地獄のようなカラオケが、やっと終わった。


 なんて、ひどい目に遭ったの!


 でも、これでやっと、この熊みたいな男から解放される。


 とにかく今日1日しのげばいい。


 明日になれば課長も目が覚めるかもしれない。


「昨日は済まなかった、鈴木さん。ちょっと飲み過ぎてしまって」


 そう言ってくれたら、水に流そう。


 私は借金を返さなくちゃならない。


 そうだ、すっぱりと忘れよう。


 課長はカラオケを出ると私の肩を抱いてフラフラと歩きだした。


 ラブホテル街の方へと。


 これはダメ!


 もう限界!


 課長が耳元で囁いた。


「鈴木さん、来月更新だよね」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ