幽霊2
はぁ、やっと居なくなってくれたか・・・。
俺はさっきまで親密そうな雰囲気を演じさせていた、女の手を振り払った。
「あら、つれないのね?」
女はわざとらしそうに手を摩りながらニヤニヤ笑みを浮かべるものだから、俺は舌打ちしてから後部座席にドカッと腰を下ろした。
女はそれに合わせそこが自分の居場所であると言わんばかりに俺の横に腰かけた。
「わざわざ外にまで連れ出してくれるものだから何を企んでいるのかと思ったけど、かわいいストーカーさんね?」
「うるせぇーよ」
俺はぶっきらぼうに女に返答すると事の次第を回想した。
一か月ほど前からだろうか?
俺はストーカー被害に苦しんでいた。
しかも質が悪いことに相手は幽霊だ。
一般の人間なら幽霊を見ることができないから気にもならないのだろうが、残念なことにおれは霊能力者だ。
名のある神社の家に生まれたせいだろうか?
幼いころから幽霊を嫌というほど見てきて苦労している。
それこそ、一部例外もいるようだが、奴らは自分が死んだことを理解していないので、こちらの迷惑も考えずにズカズカ干渉してくる。
「でも大したことない子ね。あなたに添い人がいることを知っただけで、諦めちゃうなんて・・・」
「それが普通なんだよ」
「そうかしら? 三角関係は物語を盛り上げる上ではお決まりの展開じゃないかしら?」
「これはリアル、現実だ。 作り話と一緒にするな」
俺はため息交じりに返答した。
「というか、お前はいつになったら諦めてくれるわけ?」
「そうねぇ、それこそ死ぬまでじゃないかしら?」
「ちっ!知ってるくせによ」
女はクスっと笑ってから、先に部屋に戻ると言い残し、バスをすり抜けていった。