97 ザブングルって言われて、何を思い出す?
「あ、ザブングル・グラフィティやるんだ! 録ろうかな」
「どうした?」
「BSでね、ザブングルやるのよ。もちろんお笑いじゃないよ」
「ああ、お前がいっつも文句言ってるやつな」
「うん、それ」
好きな人には悪いけど、あたしはお笑いのザブングルが嫌いだ。名前というただ一点で。
どういう経緯でそんな名前を付けたのかは知らないけど、ロボットアニメの主役メカ(あるいはタイトル)と同じ名前を付けるなんて、気に入らない。
たとえば、彼らの名前が「鬼滅の刃」とか「タンジロー」とかだったら、大抵の人は馬鹿にするか怒るかするだろう。
同じことだ。
「戦闘メカ ザブングル」という番組はたしかにマイナーだけれど、1年間テレビ放映され商標登録だってされている名前だ。
一般名詞ならともかく、こういった造語を恥ずかしげもなくコンビ名に使う神経を疑う。ちょっとググれば出てくる名前だ、マイナーだから知らないなんて通らない。好きだから使ったっていうなら、もっと許せない。ガンダム好きだったらコンビ名にガンダムって付けてもいいのか!?
「ララァ専用モビルアーマー」くらいマヌケだ。しかも、おそらく意図的な分、タチが悪い。「ガンダム」スタッフは、エルメスが商品として発売されるなんて思ってもみなかっただろうから。
お笑いコンビのザブングルを好きな人も、そりゃいるだろう。それなりに人気があるからテレビに出るんだろうし。でもあたしは大嫌い。
もちろん、一般名詞なら別だ。
「嵐」といえば、あたしにとっては「変身忍者嵐」だけど、世間一般ではジャニーズのアイドルグループだし、それについて文句を言う気はない。だって「嵐」は一般名詞だ。
「巻き起こせ嵐」に続けて「吹けよ嵐、呼べよ嵐」とかつぶやいちゃうけど。ついでに「風よ~光よ~」とか言っちゃうけど。
でも、あたし、嵐は、ジャニーズのアイドルグループの中では一番好きだったり。
野球選手に「ゴジラ」なんてあだ名を付けるセンスもわからない。どこに共通点があるのか、謎だ。
「ハマの大魔神」はOK。だって「魔神」は一般名詞だし、そこに「大」を付けただけだから。なんとなくすごいことをやりそうな肩書きだ。決して石像が動き出すわけじゃないのだ。
柔道選手に「やわらちゃん」もOK。うちの弟は、「柔みたいに圧倒的な強さじゃないのに」とか文句言ってたし、気持ちもわかるけど、ある程度強い小柄な女子柔道選手なら「やわら」と呼んでもいいと思う。
もっとも、これは自称じゃなくて他称だから、ちょっと可哀想かも。本人がそれで喜んでいるかは微妙な場合もあると思う。
怪獣って呼ばれて褒められてると思うかは、人それぞれだ。
一方で、漫画のキャラの名前とかをどこかから持ってくるとかなら許せちゃう。というか悪いとは思わない。あたしもやるしね。
たとえば、「ジョジョの奇妙な冒険」に出てくるエンヤ婆とか、ワムウやエシディシとか、ね。ネタとして受け入れられる。
「るろうに剣心」では、キャラの名前に弥彦とか番神とか、新潟県の地名を使ってるけど、大歓迎。
「めだかボックス」でも、球磨川とか安心院とか、人吉、阿久根、喜界島、鶴喰、不知火など、かなりの数のキャラが九州の地名からきているけど、オールOK。むしろ“それ地名だったの!?”って驚いた。
あたしは、たぶん、芸名みたいに、看板としてバーンと出てくるところに無意味にタイトルや主役級の名前を使うのが許せないんだと思う。
女優のミムラは、「ムーミン」のキャラの名前からとっているそうだけど、一見そうとはわからなかったから、本名が「三村」なんだと思ってたし、知った後も特に気にならなかった。
これは、ミムラがサブキャラ(ミィとスナフキンの姉)だったのも大きい。
言われなきゃわからないし、言われても気にならない。これがスナフキンという芸名だったら、「はい?(怒)」ってなったと思う。
たぶんね、お笑いの2人も、「ザブングル」じゃなくて「メロン・アモス」とか「カラス・カラス」だったら、笑ってた気がする。
「梓は心が狭いからな」
「自慢じゃないけど、猫の額より狭いよ」
戦闘メカ ザブングル
1982年放映の富野アニメ。主人公が乗るロボットを番組途中で変える“主役メカ交代”を初めてやった番組。
「ザブングル・グラフィティ」は。テレビ版を再編集した劇場版。
惑星ゾラを舞台に、父を殺したティンプを追うジロン・アモスの物語。
ゾラには、支配階級であるイノセントと一般大衆であるシビリアンが住んでおり、ジロン達メインキャラはシビリアンである。
キャラデザが独特で、ジロンが丸顔であることから「メロン・アモス」などと言われたりした。「カラス・カラス」は、敵キャラの名前。
ゾラには、「3日の掟」というものがあり、どんな犯罪も3日間逃げおおせれば無罪となるのだが、ジロンはティンプを4日以上追い続けている。一方で、自分が盗んだ最新型ウォーカーマシン:ザブングルは3日で自分のものにしてしまったというダブルスタンダード野郎である(その点について、作中でジロンは周囲から責められている)。
主役メカであるザブングルは、当初から2機登場する。
ザブングルは、2台の車がそれぞれ飛行型に変形し、空を飛びながら合体する。この合体シーンは毎回OPで流れるが、ジロンが盗んだ方は早々に翼が折れてしまい、分離したらもう合体不能ということになり、ずっと人型のままだった。
ザブングルが2機登場するのは、合体ロボ玩具が発売されているのに主人公の乗機が分離・合体できないことのフォローと思われる。
その上、ジロンのザブングルは中盤で大破してしまい、ジロンはその後、ウォーカー・ギャリアという新型を盗んで乗ることになる。
ギャリアはザブングルの発展型とかではなく全く別系統のロボであり、主人公が番組名のロボットに乗らないという、ロボットアニメにおいて画期的というか、挑戦的な展開となった。
これは“主役メカ交代”と呼ばれ、次作「聖戦士ダンバイン」でも、主人公がダンバインからビルバインに乗り換えている(以後ダンバインは別のキャラが乗るようになる)ほか、その翌々年の「機動戦士Ζガンダム」では、途中交代を前提に、主役メカであるΖガンダムが中盤まで登場しない(番組開始時点で、デザインが決まっていない)という事態になっている。
一応言っておくと、「装甲騎兵ボトムズ」(主人公が量産機を次々乗り換える)も、「超時空要塞マクロス」(主人公が小隊長機から隊長機に乗り換える)も、「ザブングル」より後である上、番組名は主人公の乗るロボットの名ではない。
なお、ゾラは荒廃した遙か未来の地球で、イノセントが本来の地球人、シビリアンはゾラの環境で生きられるよう遺伝子操作された新人類だった。
ララァ専用モビルアーマー
「機動戦士ガンダム」に登場するモビルアーマー:エルメスのこと。
番組内で「エルメス」という名前を出す分には問題なかったが、プラモデルとして商品化するに当たって商標が問題になったため、「ララァ・スン専用モビルアーマー」という名称で発売された。
うん、そりゃ、プラモとして発売されるとか、スタッフは想像もしてなかっただろう。
変身忍者嵐
1972年放映の東映特撮。石ノ森章太郎原作。
動植物の姿と能力を持つ化身忍者が日本刀や鎖鎌で戦うという時代劇特撮。
主役である嵐の必殺技“秘剣影映し”は、刃に反射させた太陽光で相手の目を眩ませた隙に斬るという大変地味なものだった。
序盤は、嵐の着ぐるみの手足には羽毛をイメージした銀色の羽がたくさん付いていたが、傷みやすいので、すぐにタイツに線で描かれているだけになってしまった。梓は、持っていたムックの写真を見て、「どうして違うんだろう?」と思っていた。あの頃は純真だった。
ちなみに、「吹けよ嵐 呼べよ嵐」は、OPの一部。
なお、東京地方では、「ウルトラマンA」の裏番組だったが、新潟ではそうではなかったので、梓は両方リアルタイムで見ている。
「風よ~光よ~」
1972年放映のピープロ特撮「快傑ライオン丸」の変身ワードの一部。
獅子丸が印を結んで「風よ~光よ~」と唱えると、背負っている日本刀を封印している鎖が外れる。それを抜いて構え、「忍法獅子変化!」と唱えることでライオン丸に変身する。
獅子丸は、左腰に普段使いの日本刀を下げ、背中に変身用の日本刀を背負っている。
余談だが、梓は幼い頃に持っていたムックに載っていた敵怪人「ワクランバ」の元ネタがわからずにいたのだが、中学くらいで「病葉」と書いて「わくらば」と読むことを知って膝を叩いた。
ゴジラ
1954年公開の東宝映画「ゴジラ」から始まったシリーズに登場する怪獣。円谷英二の手によるもので、“怪獣と言えば円谷”の嚆矢となった。70年近く経った今もシリーズが続いており、アニメになったりハリウッド映画になったりしている。
作品によって多少の設定の違いがあるが、ほとんどは口から熱線を吐く。
制作時期によって、人間の敵だったり味方だったり、キングコングと戦ったり、尻尾を抱えて空を飛んだり、シェーをしたり、「照れるなぁ」をしたりする。
野球選手は、どの部分が共通点だろうか。
大魔神
梓が言っているのは、大映の映画「大魔神」シリーズ。野球選手のあだ名の元ネタは知らない。
埴輪のような巨大な石像が、民の祈りによって動き出し、悪代官を襲ったりする。顔の前で前腕を動かすと、腕が通ったところから怒りの顔に変わる。
怒りモードの大魔神の目が血走っているのは、撮影時のスモークで目がやられた結果だそうな。
やわらちゃん
1986年からビッグコミックスピリッツに連載されていた漫画「YAWARA!」の主人公:猪熊柔のこと。
小柄ながら柔道の天才で、作中ではオリンピックで女子無差別級金メダルを取っている。
政治家になった元柔道選手が現役の頃、このキャラになぞらえて「やわらちゃん」と呼ばれていた。
ミムラ
トーベ・ヤンソンの小説「ムーミン」シリーズのキャラ。また、そのキャラの種族名。
作中では、種族の名前がそのまま呼び名になるという特殊な慣習がある。
主人公であるムーミントロールは、ムーミントロール族の男の子であり、その父だからムーミンパパ、母だからムーミンママ、という具合。ムーミントロールが大人になって結婚し子供が産まれると、生まれた子がムーミントロールになり、自分はムーミンパパになる、はず。
日本のアニメで「フローレン」とか「ノンノン」と呼ばれている女の子は、ムーミントロール族とは別のスノーク族という種族で、原作では、兄はスノーク、本人はスノークのお嬢さんと呼ばれている。ムーミンママに髪の毛がなくてスノークのお嬢さんにあるのは、種族が違うから。ちなみに、アニメでは色が付いているが、本来ムーミントロール族は体色が白いのが特徴である。この辺も誤解を助長する原因であろう。
同様に、ミムラもミムラ族の女性である。ミムラには33人の妹と1人の弟がいて、ミィは20番目に生まれた子(19人目の妹)である。
スナフキンはミムラとミィの異父弟である(ただし、ミィは母の再婚時期には母の元を離れていたため、ミィとスナフキンには面識はなかった)。ミィは体が大きくならなかっただけで(姉妹の中で一番小さいらしい)、ムーミンやスナフキンよりかなり年上だったりする。子供なのではなく、単にちっちゃいのである。




