90 リンゴをかじると…
おやつにリンゴを丸かじりしてたら、天さんに笑われた。
「相変わらずシャリ、チュパッて音立ててるな」
「うるさいなぁ、無意識なんだってば」
天さんが言ってる「チュパッ」っていうのは、あたしがリンゴをかじった後、その断面に滲んだ果汁を吸ってる音らしい。
しょうがないじゃない、ダラダラ垂れてくると困んのよ。
あたしは、中3の時、包丁で左手の人差し指をざっくり切ったことがある。爪も一部切れて、もう少しで骨に達するくらい深かった。指先の3分の1くらいが切れてぷらぷらしてる状態だ。爪に掛かってるせいで縫うこともできず、自然にくっつくまで押さえておくしかできなかった。切断面の神経がちゃんと繋がっていないらしく、今でも感覚が鈍い。
怪我をしちゃ傷口を舐めてたあたしも、さすがにあの出血量は飲んでて気持ち悪くなったね。母さんなんか、切ったあたしよりも青い顔してたし。
ちょっとしたドジでえらい痛い目見たあたしは、それから数年間、怖くて包丁が使えなくなった。元々苦手だったしね。
そんなわけで、あたしはリンゴや梨は皮を剥かずに丸かじりする。わざわざ包丁で皮を剥いて食べるのは、柿くらいだったなぁ。
使えないと言っても、本当に触れないとかじゃなくて、できれば使いたくないレベルだから、必要とあらば使うこともあるのだ(えっへん!)
ま~、リンゴ丸かじりって言うと、あたしの場合はホワイト&ホワイトのCMの土屋一家なんだよね。置いてあるリンゴに突然歯形が入るのが不思議だったっけ。
「銀河漂流バイファム」のOPで、主人公のロディがリンゴをかじるシーンがあるんだけど、なぜか果肉をむしり取るみたいなかじり方してたのよね。むしり取るような──わかりにくい表現だけど、要するにリンゴに噛みついてえぐり取るんじゃなくて、リンゴの皮のところに前歯を当てて、そのまま果肉の塊を剥がすような感じ。
うん、自分で言っててもよくわかんない説明だけど。リンゴには、前歯しか当たってない感じなのよ。
そんな食べ方ができるのか? 疑問を感じたあたしは実際にやってみた。
その結果──似たようなことができたのよ!
リンゴに前歯──上の歯と下の歯を当てて、下の歯を支点にして上の歯で引っ張ると、果肉を剥ぎ取れる。
歯と歯の間に皮が挟まる心配もなくて、普通に一口かじり取るより大きく剥がせる!
どんなリンゴでもできるわけじゃなくて、ふじとか、ある程度の堅さのあるものでないとできないけど。
このやり方が気に入ったあたしは、以来30年以上、この食べ方をしてる。
もう、包丁も怖くはないんだけど、それでもこの食べ方が好きなんだもの。
で、この食べ方だと、果肉を剥ぎ取った場所から果汁が滲み出てくるから、あたしはそれを吸っちゃう癖があるらしい。天さんは、あたしがそうやって食べてるのを見るのが好きらしくて、時々からかってくる。「リンゴ食べるか? チュパッて」なんてね。
翼はリンゴが好きじゃないから、皮剥いてみんなで食べるより、あたし1人で丸かじりすることが多いのよねぇ。
リンゴをかじると、垂れる果汁を舐めちゃいませんか?
ホワイト&ホワイト
ライオン歯磨が発売していた歯磨き粉。
新潟では、「8時だヨ!全員集合」の時間帯にCMが流れていた。
1972年から10年の間流れていたCMには江原真二郎、中原ひとみ、土屋歩、土家里織という本当の家族が出演していた。
なお、土屋歩は男性で、1983年放映の「宇宙刑事シャリバン」にイガ星人ビリー、1985年放映の「兄弟拳バイクロッサー」にバイクロッサー・ギン:水野銀次郎として出演していたが、1990年に自動車事故で他界した。