86 欲しけりゃその手で掴め
あたしは、小さい頃からアニメや特撮を見ては、その小道具を欲しがった。
「ひみつのアッコちゃん」を見てコンパクトを欲しがり、「科学忍者隊ガッチャマン」を見てバードランを欲しがり。
器用な伯父さんにバードランを作ってくれるようお願いしたこともあった。
本物は無理でも、そういう仕組みの何かは作れるんじゃないかって思ったこともある。
小学生の時、仮面ライダー旧1号の変身ベルトの機能──風を受けて回りエネルギーを発生する──を知って、タイフーン型の風車を作ろうと思ったこともある。
モーターで風車を回すだけなら、斜めのカムシャフトの組み合わせで簡単に作れる。でも、その逆は、モーターの抵抗が意外と強くて、風を受けて回るっていうのはなかなか難しい。しかも、タイフーンの場合、奥行きがないせいで風が向こうに抜けていかないから、ますます話が面倒なのだ。
そうして、あたしのタイフーン製造計画は頓挫した。
あたしにとって初恋とも言える「海のトリトン」のトリトンは、オリハルコンの短剣という赤く輝く剣を持っていて、やっぱりあたしの憧れだった。
20歳くらいの頃、透明なアクリル棒を貼り合わせてプリズム聖剣みたいな剣を作ったことがある。イベントにも持っていったりして、かなりウケた。なにしろ綺麗だからね。もちろん振り回すようなことはしないで、布で包んで持ち歩き、たまに中を見せるくらいだったけど。
この剣の作り方なら、オリハルコンの短剣ぽいの作れないかな? と思ったあたしを責められる人はいないと思う。
本来、オリハルコンの短剣は、銀色の普通の刃が赤く輝くというものなので、半透明なのは違うんだけど、光を浴びた時の美しさは、きっといい味出ると思う。
いや、本来は刃そのものが光るんだけどね。いっそ豆電球(当時はLEDは売ってなかった)でも仕込んで輝かせようか、なんて思ったりもしたけど、“眩く輝く”は豆電球には荷が勝ちすぎるんだよねぇ。
半透明なオリハルコンの短剣を作ろうと思った時、トリトンのコスプレもしようかと思ったんだよね。ただ、衣装がね……股下2cmくらいの超ミニスカになるんだよね……。それは、さすがのあたしもやる度胸がなくて、断念した。そのあおりで、オリハルコンの短剣も作らずじまいになったのよ。
同じような時期に作ろうと思ったのが、「聖闘士星矢」の団扇。
片面に一輝の「鳳翼天翔!」を、もう片面にシャカの「フッ、涼風だ」を描くというネタだった。
「カードキャプターさくら」の魔法陣が回る腕時計も作ったね。
当時使っていたプリンターは、金箔っぽい印刷ができたから、透明プラ板に魔法陣を印刷して、秒針としてくっつけた。安物の腕時計だったから、自分で裏蓋外せたし。
電池の減りが早いのが悩みのタネだけど、今でも使えるよ。
スマホを持つようになって、バッテリー残量が少なくなってきたらカラータイマー点滅のアニメーションするとか、電話やメールが来た時にバードスクランブルが表示されるっていうのもやってみたいと思ってるんだけど、道は遠いなぁ。
ウルトラマンのフィギュアとかで、目やらカラータイマーやらを光らせるのも夢だったけど、今はだいぶ実現したよね。
次はゴッドボイスのスピーカーかなぁ。これ、結構大変っぽいけど、いつかやりたいなぁ。
まぁ、ウルトラマン系の光らせるやつだけでも、コンバージのティガやら色々残ってるんだけどね。
ジャンボソフビのティガもまだ終わってないし。
そういえば、バダースカッチは作らずじまいだったなぁ。
食べ物で遊ぶなとか言われちゃうと、さすがに反論しづらいからなぁ。
プリズム聖剣
1986年放映のスーパー戦隊「超新星フラッシュマン」で、レッドフラッシュが使う赤い半透明の剣。握りの部分まで半透明で、陽に透けるとメチャメチャかっこいい。
鳳翼天翔
マンガ「聖闘士星矢」に登場するフェニックスの青銅聖闘士:一輝の必殺技。右手に小宇宙を集中し、衝撃波として敵に叩きつける技。鳳凰のはばたきとも称され、破壊力を持った風として扱われる。
アニメでは、風を起こした後、自分が突っ込んでいってパンチする打撃技として描かれることが多かった。
一輝の技で名前が付いているのは、これと鳳凰幻魔拳のみ。
なお、作中において、強敵は鳳翼天翔の破壊力の部分を相殺して単なる風として受け流すことが多く、乙女座のシャカも「涼風だ」と涼しい顔をしていた。
梓は、これを受けて、団扇のネタを考えついた。
ゴッドボイス
1975年放映のアニメ「勇者ライディーン」での、ライディーンの必殺技の1つ。
「ゴォォッドボォイス!」の掛け声でライディーンの胸から突起物が3つ出てきて、 「ゴォォォッド・ラ・ムゥゥゥ!」の掛け声で突起から破壊音波を発生させる。
威力は絶大だが、操縦する洸の生命力を極限まで搾り取り、ライディーン本体も大きなダメージを受けるという諸刃の武器。
梓は、ライディーンのフィギュアにスピーカーを仕込み、胸の突起から音の出るフィギュアスピーカーを作りたいと考えている。
バードスクランブル
1972年放映のアニメ「科学忍者隊ガッチャマン」における緊急信号。
科学忍者隊のメンバーが左手首に着けている逆五角形のブレスレットは、バードスタイルへの変身、個人メカの変身、通信機など多岐にわたる機能を持っているが、その1つがバードスクランブルである。
ブレスレットの表面を一定のリズムで叩くことによって、仲間のブレスレットにスクランブルのマークが表示され、警告音が鳴る。その際、位置情報も送信されるので、仲間が駆けつけることができる。
「ガッチャマン」ラストにおいて、コンドルのジョーが敵であるギャラクターの本拠で1人戦い、ブレスレットを破壊されて変身が解け、捕まってしまう。
近くに潜んでいたレッドインパルス隊員(科学忍者隊と同じく南部博士が指揮する組織)が、ブレスレットの残骸を修理して通信機能を回復させ、バードスクランブルでガッチャマン達を本拠地に呼び寄せるという展開を見せる。
バダースカッチ
梓ちゃんのささやかな野望リストから削除された案件。
チェルシーのバタースカッチにバダーの顔を彫る、というダジャレ。
「チェルシー」は、明治製菓が発売しているキャンディー。バタースカッチ、コーヒースカッチ、ヨーグルトスカッチの3種が基本ラインナップ。
「バダー」は、2000年放映の「仮面ライダークウガ」に登場する怪人。ゴ・バダー・バという名で、バッタの能力を持つ。人間体から怪人体になる際に、新1号の変身ポーズを模したポーズをとって話題になった。
バイクに乗る怪人であり、クウガとバイク戦を繰り広げた。
乗っているバイク「バギブソン」は、グロンギ語で「サイクロン」に近くなるように付けられたと思われる。グロンギ語から直訳すると「カイクロン」または「ナイクロン」となるが、これは「サイクロン」をグロンギ語にすると「ガギブソン」となり、「特捜ロボ ジャンパーソン」に登場したガンギブソンに近すぎるので避けられたものと思われる。




