80 憧れの超合金
今の自宅のコレクションルームには、超合金魂が何体か飾られている。
「マジンガーZ」から始まったポピーの超合金ブランドは、ポピーとバンダイの統合を経て、1991年放映の「鳥人戦隊ジェットマン」で一旦終わりを告げた。
その後、1996年放映の「ビーファイターカブト」のカブテリオスとクワガタイタンで復活したのだけど、翌1997年には「超合金魂」という新ブランドが立ち上げられた。
「少年の心を持った大人たちへ…」というキャッチコピーと共に、造形・可動性・ギミックを併せ持った新しい合金玩具として生み出されたわけだ。
当然の如く、第1弾はマジンガーZ。
そしてそして、“少年の心を持った乙女”であるあたしは、当然買った。
この「超合金魂」第1弾となったマジンガーZは、当然のごとく意欲に溢れている。
磁石結合による肘関節の交換で、“肘が曲がる”と“ロケットパンチが撃てる”を両立させたり、ジェットスクランダーの翼を2枚の板のスライド式にすることで、“前進翼と後退翼”の変化まで再現している凝りようだ。
一応説明しとくと、ジェットスクランダーは、普段は背中から見た時、翼が「V」型なんだけど、高速飛行時には「Λ」型になるのだ。これを再現したわけだね。お陰で、翼の先端に可動軸を支えるカバーが付いちゃってちょっと不格好なんだけど。
できるだけ再現したいという気概が感じられるから、まぁ許しちゃう。
あたしが持ってる超合金魂は、マジンガーZ、後期型マジンガーZ、ミネルバX、グレートマジンガー、ライディーン、コン・バトラーV、大空魔竜、バトルフィーバーロボの8つ。全部飾ってるわけじゃないけどね。結構場所取るし。
正直、グレートのスクランブルダッシュのバネ射出や、ライディーンのゴッドバード用翼の折り畳み機構みたいに“それ、なくてもよくない?”って思うギミックもあるんだけどさ。
一応、心意気は買うよ。
ただ、ダンクーガは、解釈のディフォルメが趣味に合わなくて、買ったけど処分しちゃった。
ちなみに、昔の超合金としては、当時もののグレートマジンガーとゲッター2、1979年再販時のライディーンと限定版ゴールドマジンガーZなんかがある。
グレートとゲッター2は、20歳くらいの頃、同い年の従兄が「梓ちゃんなら大切にしてくれそうだから」ってことで譲ってくれた。
引越やらなんやらで持っていられなくなったから、捨てるよりはってことでくれたんだよね。
当時は、まだ中古市場はあまり発達してなかったし、彼にとっては思い入れもあったから、一緒に遊んだあたしにくれたんだ。ちなみに、彼は、カエルの件の従兄とは別の人で、あたしが一番仲良くしてる従兄だ。
あたしは、小さい頃からヒーローもののおもちゃが大好きだったから、ぬいぐるみとかよりそっちを買ってもらうことが多かった。
多かったのはソフビ人形。一番最初は、ブルマァクの新マンだった。30cmくらいあるでっかいやつ。15cmくらいの仮面ライダーやガッチャマンとかも持ってた。
でも、超合金は買ってもらえなかった。
女の子だからっていうよりは、単に高かったからだと思う。おもちゃに高いお金を出すのはって感じで。うち、そんなに裕福じゃなかったし。
従兄の家に遊びに行くたび、マジンガーZやグレートマジンガーの超合金で遊ばせてもらってた。
あたしが親から唯一買ってもらった超合金が、ゲッタードラゴン。
もう、夢中になって遊んだ。
あたしなりの拘りが、マッハウイングの着脱。
ドラゴンは、空を飛ぶ時は背中に「マッハウイング」というマントのような翼が生えるんだけど、普段は収納されている。
でも、超合金では、当然のようにマッハウイングが出っぱなし。あたしは、それが気に入らなかった。
じゃあ、どうしたかっていうと。
超合金のドラゴンの背中には、ネジがあった。ボディの前後を留めるためのネジが。
あたしは、ドライバーでネジを外し、マッハウイングのパーツを外してまたネジを締めた。これで、マッハウイングのないドラゴンになる。
「マッッハ、ウイィィィングッ!」と叫んで、やおらネジを外し、マッハウイングをはめ直してまたネジを締める。これがあたしのお気に入りの遊びだった。この時使っていたドライバーは、何本かセットになってるところから抜いてきたやつだったけど、結婚して引っ越した時に行方不明になるまで、あたしの愛用の品として活躍を続けた。
ちなみにドラゴンは、ある日、マッハウイングを外した時にボディが前後に外れてしまい、左腕を支えていた板バネがなくなってしまった。
左腕がカラカラと空回りするようになって嘆くあたしに、母さんは「ぼっこし大工だね~」と容赦ない一言をくれた。「ぶち壊す大工」という不名誉な称号は、しばらくあたしについて回った。苦い思い出だ。
超合金と言えば忘れられないのが、「大鉄人17」だ。
これの超合金は、要塞ワンセブンに変形できるスグレ物だった。たしか2000円。当時のあたしには大金だった。
相当売れたそうで、近所のおもちゃ屋さんからは早々に姿を消してしまった。
夏のお祭りで、お小遣いを握りしめておもちゃ屋さんに行ったあたしは、ガックリしたものだ。
その夜、縁日で、あたしはワンセブンを買うつもりだったお小遣いでタイタンコマンドを買い、その後、少し離れたところでワンセブンの超合金を見付けてしまった。お金が足りない。
親に小遣いをせがんだけど、駄目だった。
「計画的に使えって言ったでしょ」とのことだった。
結局、ワンセブンは弟が買って、あたしは指をくわえて見ているしかなかった。あの悔しさは、一生忘れないと思う。
“いざという時のために貯金は必要”…あたしの魂には、深く刻まれている。
10年以上後、就職したあたしは、中古屋でプレミア価格のワンセブンを買った。
こういう話をすると、天さんは「お前、本当に執念深いよな~」と呆れた顔をするけど、欲望は人間の生きる原動力だからね!
ビーファイターカブト
1996年放映の東映のヒーローもの。
1982年「宇宙刑事ギャバン」から始まるメタルヒーローシリーズの最終作。
前年放映の「重甲ビーファイター」の続編で、インセクトアーマー(ネオインセクトアーマー)と呼ばれる、パワードスーツに昆虫の魂を宿らせた生きている鎧を着て、侵略者メルザードから地球を守るために戦う3人のビーファイター(カブト、クワガー、テントウ)の戦いを描く。
途中で、味方として4人のビーファイターが加わり、前作の3人を加えると総勢10人と、当時の戦隊よりも人数が多くなった。
敵方にもビークラッシャーというインセクトアーマーの戦士が4人いる。
終盤になると、2億年前に闇の意思を封じたという英雄巨大ロボ:カブテリオスとクワガタイタンが登場する。
ミネルバX
アニメ「マジンガーZ」に登場する、女性版マジンガーZ。アニメのオリジナルメカ。
兜十蔵博士が、マジンガーZのパートナーとして設計した自律型ロボで、マジンガーZが発する特殊な電波に反応して動く。
兜博士を殺す時に設計図を盗んでいたという設定で、ドクターヘルがスーパー鋼鉄と原子力エンジンで製作した。武装はマジンガーZと同種のものを持っている。
腹部にあるパートナー回路が破壊されたことで機械獣と同じく操られるようになったため、やむなく破壊された。光子力研究所で作り直せばいいのに、と言ってはいけない。
スクランブルダッシュのバネ射出
グレートマジンガーは、背中にスクランブルダッシュという翼を内蔵している。
「スクランブルダッシュ!」の掛け声で、何もない背中から生えてきて、翼が伸びる。
超合金魂では、さすがにこれは再現できず。半分ほどの長さに縮めた翼をバネで伸ばすというギミックにした。お陰で、途中まで翼が3倍の厚みを持っているという不格好なことになった。
ライディーンのゴッドバード用翼の折り畳み機構
ライディーンは、起動前の素体の時、両腕を覆うカバーが付いているが、ゴッドバードに変形する時にも同じようにカバーが付き、更にそこから翼が生える。
その点、放送当時のDX超合金では、カバーに申し訳程度の小さな翼が付いていた。
超合金魂では、起動前状態のカバーをゴッドバード変形時にも使用できるよう、翼を細かく折り畳む機構にした。そのため、ゴッドバードになった時、翼がシャープな感じにならないという欠点がある。
ダンクーガ
1985年放映のロボットアニメ「超獣機神ダンクーガ」の主役ロボ。
頭部になる戦闘機:イーグルファイター、左足首になる戦車:ランドクーガー、右足首になる戦車:ランドライガー、それ以外の本体になる重戦車:ビッグモスの4機の獣戦機が合体して完成する。後に、ブースターウイングを装着することで飛行能力を得た。
当時の超合金は、ブースターなしの4機合体であり、イーグルファイターの腕の変形とランドクーガーの口の折り畳み以外は設定どおりに変形するスグレ物だった。
ちなみに、設定上、ランドクーガー、ライガー共に動物型になると、前足中程に人型時の手首が露出しているほか、首の下側には人型時の顔が丸見えである。
元々ダンクーガは4機のスケールの関係で、頭でっかちなデザインになっており、超合金はプロポーションも設定画そっくりである。
ただし、アニメ本編のダンクーガは、格好良く描くために設定画と全く違うプロポーションをしており、超合金とはかけ離れている。
テレビ終了後に数本のオリジナルビデオが製作されており、そこでは見栄えのする形に設定画が直されており、超合金魂はそちらのプロポーションに準拠しているため、ビッグモスがオリジナルどおりの変形パターンにできなかったり。ランドクーガーの口の折り畳みができるようになったが、良くなった点はそこだけ。
イーグルファイターなんか、当時の超合金の方がデキがいいんだもの。ダンクーガ時の頭部を小さくするためにイーグルを小っちゃくしすぎて、機首を縮められないし、肩の変形もオミットされてるし。
本来、イーグルファイターの変形は、腕を肩ごと後方に向けて伸ばし、その状態から肩を頭部の後ろに立てる。そこから、手のひらが下を向くよう肘を背中に沿わせて曲げる。旧超合金は、上腕から手首まで一体であり、肩ごと機体下部に這わせた。超合金魂も、大きさの点から、ここは改善できなかった。
梓は、ダンクーガで、超合金魂の“プロポーションとギミックの両立”に見切りを付け、以後はバトルフィーバーロボくらいしか買っていない。
カエルの件の従兄
梓が8~9歳の頃、4つ上と1つ上の従兄から、背中にアマガエルを入れられるといういたずらをされた。
「桜井香奈の禁断の恋」シリーズ「恋の始まり、そして苦しみの始まり」で香奈がやられているのは、これが元ネタ。
梓は、これが原因でカエルに触れなくなった。今でも、画像や動画で見る分には平気だが、近くに寄ることができない。触れられるおそれがなければいいので、ガラス窓越しなら近付ける。
大鉄人17
1977年放映の東映の特撮ロボットもの。
巨大ロボ:ワンセブンと心を通わせた少年:南三郎が主人公だがヒーローに変身するわけではなく、ワンセブンは自意識を持っているため操縦もしない。ジャイアントロボのような命令権もないため、せいぜいお願いを聞いてくれるくらいで、特に序盤ではピンチになると現れる謎のロボットだった。
ワンセブンは、通常時、要塞ワンセブンの状態で、強力なレーダーで情報を収集しており、異変を察知すると飛行ワンセブンになって現地に急行、戦闘ワンセブンに変形して戦闘を行う。
要塞ワンセブンは、足を折り曲げてしゃがみ込んだような姿で、腕の収納以外は超合金で再現されている。
ストーリーは以下のとおり。
地球環境を保全するために建造された世界最高のコンピューター:ブレインは、“地球を守るには人間を排除する必要がある”と判断し、密かに基地を建造して人類絶滅のためのロボット製作を始めた。だが、自分の分身として作り上げた最高傑作ワンセブンは、“人間は地球に必要”と判断し、逆らった。
ワンセブンを破壊するのが忍びなかったブレインは、電磁フィルターでワンセブンを封印したが、たまたま迷い込んだ三郎が電磁フィルターのスイッチを切ったためワンセブンは復活し、人間を守るためにブレインと戦う。
内容がハードすぎて途中で路線変更しているが、序盤のハードさがたまらない。自衛隊の協力による戦車の映像なども迫力があった。
ちなみに、主役である三郎を演じたのは「人造人間キカイダー」で光明寺マサルを演じた神谷政浩、ガールフレンドの佐原ルミを演じたのが「がんばれ!!ロボコン」でロビンちゃんを演じた島田歌穂と、子役が豪華。
タイタンコマンド
タカラのミクロマンシリーズの1つ。
ボディ内の磁石を使って鉄球関節の手足を接続し、手足に別のパーツを換装するのがタイタンシリーズの特徴。
梓がこの時買ったのはタイタンコマンドのレーシングタイタンで、外した両足の代わりに車を合体させるというものだった。