64 桜井浩子さんは「ウルトラセブン」にも出演してたのよ
昼休みに、天さんからメッセが届いた。
「NHKのビーコンに、ウルトラセブンが出てる」
ビーコンは「帰ってきたウルトラマン」でしょ、というボケはともかく、いそいそとテレビの前に行ってみた。どうやら、今度BS4Kで「ウルトラセブン」をやるので、その番宣らしい。
周囲の目が気にならないこともないけど、「セブン」くらいなら「何々?」って見に行っても許容範囲だ。大丈夫。正体を隠すのには慣れてる。
それにしても、この前「ウルトラQ」の再放送してたのに、今度は「セブン」やるんだ。
「ウルトラマン」は飛ばすんだね、珍しい。
NHKは、BS4Kの放送が始まる時、看板番組の1つとして、「ウルトラQ」を持って来た。
ウリとしては画像の鮮明化とか色々あったんだけど、その中に「クモ男爵」での“謎の手”が消えたってのがあったのよね。
この“謎の手”っていうのは、エピソードラストで洋館が崩れ落ちる時、屋根の上に映ってる巨大な手のこと。よく見ないとわかんないけど、わかっていればちゃんと見える。
オチを言っちゃうと、要するに、ミニチュアの洋館を潰すスタッフの手が映り込んじゃってるのを揶揄したものなのだ。あたしが高校生の頃にはもう有名だったから、30年以上は語り継がれているネタだよね。
画面が薄暗いから、うっすら見えてる程度だったんだけど、今回の4K化に当たって、せっかく画像鮮明化をするからってことで、ついでに背景で手を塗りつぶしたらしい。
すごいなぁ、と思う反面、いいのかな? という疑問も湧いたことを覚えてる。それって、原典の改変じゃない? なんて思ったわけ。
まぁ、当時のミスをなかったことにしてるわけだから、悪いこととまでは言えないけど、でも、「クモ男爵」を初めて見た人は、“謎の手”を知らないわけで。いいのかなぁって気はする。
もちろん、別の、たとえばDVDとかで見れば“謎の手”が確認できるんだから、「遊星より愛をこめて」みたいに抹殺された存在にはなっていないんだけどさ。
4K放送ってことは、ライナーノーツとかでフォローもされないし、知らないままずっと進んでいけば、いずれ存在そのものが忘れ去られちゃうかもしれないじゃない。
わざわざ4Kでモノクロ番組である「ウルトラQ」を見る人なら、大抵は“謎の手”くらい知っているのかもしれないけどさ。でも、知らないで見る人だって、きっといるよね。
これは些細なネタだからいいけど、過去の作品をどうとでもできるっていうのは、案外怖いことなんじゃないかと思った。
それで、ちょっと思ったのが、ウルトラマンの色なんだけどね。
ウルトラマンと言えば、銀と赤の巨人なわけだけど。
ウルトラマンの色が変わってた、なんて話を小耳に挟んだことがある。
なんか、ブルーレイ版の「ウルトラマン」では、ウルトラマンの赤い部分が本当に赤くなってるっていうのね。
何を言ってるのかわかんねぇって人も多いと思う。
ウルトラマンの赤い部分は、本当は赤じゃなくて朱色なのよね。
当時のスチール写真を見るとわかるけど、ごく初期の着ぐるみなんて、ほとんどオレンジくらいに明るい朱色だ。
模様が本当に赤いのは、新マンなんだよね。あ、ゾフィーは、メインの模様は朱色で、細い縁取りの方が赤って具合に、色が違ってたりするけど。
あたしはブルーレイ版を見てないけど、その話の解説で取り上げられていたウルトラマンの画像は、本当にかなり赤かった。
「ウルトラマンティガ」では、ティガのフォームチェンジのシーンを、CGで色を塗りつぶすことでカットを変えずに変化させていた。
そういう意味で、CGは偉大だと思う。
でも、ウルトラマンの模様の色を変えちゃうのはどうかと思うのよ。
それをするのは、原典の改竄・冒涜だと思う。
ちなみに、セブンの体色も真っ赤じゃない。
まぁ、シーンとか時期にもよるけど、朱色っぽいことが多いと思う。
「ウルトラマンA」に客演した時は真っ赤になってたけどね。
4Kになる時に、セブンも赤く塗られちゃうんじゃないかと心配してるんだけど、特番見た限りじゃ大丈夫かなぁ。
でもさ、特番で、“「ウルトラセブン」は「ウルトラマン」に続いてウルトラシリーズ3作目”って微妙な嘘を言ってたから、ちょっと心配。
「ウルトラQ」「ウルトラマン」「キャプテンウルトラ」「ウルトラセブン」の4作は、TBSの空想特撮シリーズで、それぞれ「ウルトラ」の文字を冠する番組だったんだけど。そりゃ、円谷プロ製作のって限定すれば嘘じゃないけど、そこ、明言しなかったよね。
せっかく4Kにするんなら、12話もやってくれればいいのに。そしたら4Kテレビも買って…無理だね、天さんが許してくれるわけがないわ。
ビーコン
「帰ってきたウルトラマン」に登場する怪獣。
強力な電波を発しており、自分の見ているものを付近のテレビに表示させてしまう。
…のだが、ここで天さんが言っているのはNHKの金曜日昼に放送しているBSコンシェルジュのこと。近々BSで放送予定の番組について、出演者などを招いて番宣する番組。決してキリコ・キュービィの体内に埋め込まれた発信器のことではない。
「ウルトラマン」は飛ばすんだね
「ウルトラQ」から「ウルトラセブン」に飛んだ理由については語られていないが、梓は、来年の「ウルトラマン55周年」に、満を持して放送するつもりではないかと予想している。
梓「女の勘よ!」
「遊星より愛をこめて」
欠番になっている「セブン」12話のこと。
敵となるスペル星人の肩書きが「ひばく宇宙人」であること、スペル星人の体にケロイド状の模様があることなどから、1969年の再放送時に問題視され、欠番とされた。
内容としては、“スペリウム爆弾によって血が汚染されたスペル星人が地球人の血を奪いにやってくる”というもの。
腕時計型の採血装置を女性に着けさせて血を奪っていたが、子供の血の方が綺麗だと気付いて「ロケットを書いて宇宙時計をもらおう」というキャンペーンで子供に採血装置を配ろうとした。
実は、このエピソードのヒロインを演じたのが桜井浩子さんで、「ウルトラQ」の江戸川由利子、「ウルトラマン」のフジ・アキコに続いてのシリーズ出演だった。
このエピソードが欠番となったことで、桜井さんの「ウルトラセブン」出演が全く知られていないことを梓は悲しんでいる。
ちなみに、「ウルトラマン」でムラマツキャップを演じた小林昭二さんも「ウルトラQ」でケムール人に消される警官、「ウルトラセブン」でフック星人に占領された団地に住むサラリーマン、「帰ってきたウルトラマン」でシーモンスに沈められた船の船長、「ウルトラマンA」で超獣ブロッケンの人間態と、5作品連続で出演している。
なお、梓が12話の内容を知ったのは高校生の頃で、当時付き合いのあった大学生から12話のシナリオが掲載された同人誌を見せてもらったことによる。同人誌を初めて見たのもその時だった。




