271 決戦! 蜂の巣 対 Azusa
鷹野家には、毎年のようにアシナガバチが巣を作りに来る。
立地の関係なのか、うちの庭木の性なのか、近くに桜並木があるせいなのか、答えは知らない。
春先から初夏にかけて、巣別れしたアシナガバチがやってくる。
何年前になるのか、最初に気が付いたのは、玄関戸。
ヒンジの近くに小さな巣ができていた。
夜になるのを待って、殺虫剤を一吹きした上で、数河と撤去した。
まだ作り始めたばかりの巣で、中には1匹しかいなかった。
ちなみに、なんで夜に撤去作業するかというと、夜は蜂が出歩かないから。
以前、職場で昼間に蜂の巣を撤去しようとしたら、巣を飛び出した蜂達と戦うハメになったことがある。
その時は、バズーカ型の「ハチジェット」という大容量の殺虫剤を使ってたんで、正に“撃ち落とす”って感じだったんだけど、正直、かなり怖かった。
夜だと、なぜか蜂の動きが鈍くて、巣から出てこない。
なので、あたしは、蜂の巣退治は夜やることにしてる。
今までの数年巻、いつも、ハニカムが5つ以下の極初期に発見してるから、中の蜂は1匹で、比較的簡単に撤去できた。
一度は、“翼の部屋のエアコンの室外機の中”なんてとんでもないところに作られたこともあった。
見付けたのは、全部天さん。
あの人、なんで見付けられるんだろ?
実際に撤去するのはあたしだけどね!
「なんかさ、庭で蜂をよく見かけるから、近くに巣があると思うんだよな」
7月頃から、天さんが時々そんなことを言うようになった。
玄関戸とか、今まで巣を作られた実績のある場所を当たってみたけど、見付からない。
「ご近所にすがあるんじゃな?」
「それにしちゃ、よく見るんだよなぁ」
そんなことを言ってたある日。
「梓、蜂の巣あった!
かなり大きい!」
天さんが大騒ぎしてた。
確認してみると、直径が8cmくらいあって、結構大きい。
庭園灯の裏にあるから気付かなかった。
天さん、よく見付けたなぁ。
「何匹も飛んでた。殺虫剤足りるかな?」
自分ではやらないくせに、心配だけはしてくれるのよね。
ハチジェットの缶をちょっと持ってみると、まだそれなりに入ってそう。
「じゃあ、暗くなるのを待ってやろう」
夜。
「じゃあ、戦ってくる」
「大丈夫か?」
「暗いし、大丈夫でしょ」
てか、そんなこと言うなら天さんやってよ。とは言わない。言っても無駄だから。
「梯子とか…」
「踏み台で足りるよ。直接触るわけじゃなし」
巣のあるところの下に踏み台を置いて、ハチジェットを構える。
巣から30cm手前くらいから、正面に一撃。
踏み台から降りて、巣からボトボト落ちてきた蜂に追撃。
飛びかかってくるほど元気な奴はいないけど、結構数がいたみたい。
掃討が終わったら、再び踏み台に載って巣にトドメの一撃。
羽音とかないし、多分全滅したね。
無事生還したあたしに、天さんから
「踏み台、洗っといてな。殺虫剤かぶってたし」
と無上な一言。
もう! 暗いんだってば!
翌日、明るくなってから、蜂と蜂の巣の回収作業。もちろん、あたしが。
ゴミ用のトングで、蜂を1匹ずつ袋に入れる。
総勢14匹。
あ、ピクピク動いてるのがいる。
まだ死んでないのかな?
まぁいいや、動けないみたいだから、このまま袋詰め。
巣は再び踏み台に載って、トングで叩き落とした。
やっぱり動くものはいない。
これも袋に入れて、口を縛って、燃えるゴミの袋に入れる。
さらば、蜂の巣。
もう少し規模が大きくなってたら、もっと厳しい戦いになっていたのは間違いない。
来年からは、あそこも要チェックだなぁ。




