252 ドナウα1
超合金魂シリーズに、機械獣が4体ラインナップされている。
「機械獣」っていうのは、「マジンガーZ」に登場するDr.ヘル操る巨大ロボットの総称だ。
コミック版の「マジンガーZ」で、弓教授が“獣のように動く”ロボットということで命名したんだけど、なぜかDr.ヘル陣営でもそう呼ぶようになっていた。
機械獣は、設定上、バードス島の遺跡にあったロボットをDr.ヘルが改造したもので、元を辿るとミケーネの戦闘獣の原型だったりする。
アニメの方は長く続いたから、遺跡出土の機械獣は底を突いて、Dr.ヘル設計のものが主体になっていくんだけど。
毎週1体機械獣が出てくる都合上、1体ごとの印象はどうしても薄くなる。
これは、作劇が“機械獣の特殊能力VSマジンガーZ”という構図になるから。
同じように毎週登場しては死んでいく「仮面ライダー」の怪人の場合、“怪人の特殊能力によるショッカーの作戦”というのが主体になるから、作戦内容と絡めて記憶に残ったりもするんだよね。
その点、「マジンガーZ」では、基本的に機械獣は力押しで光子力研究所に攻め込んでくるわけで、個性が乏しくなっちゃうのだ。
そんな中でも、印象に残る機械獣というのも何体かいて、その中の4体が超合金魂ブランドで商品化されてるってわけ。
商品化されてるのは、ガラダK7、ダブラスM2、ミネルバX、ラインX1の4体。
機械獣の個体名は、“カタカナ+「Z」以外のアルファベット+数字”という命名規約になっている。
「Z」を外してるのは、それが超合金Zに繋がる“最後の文字”だから。
で、この4体──というか全機械獣──のうちミネルバXだけ数字が付かない。
これは、ミネルバXが“マジンガーZの女性型”としてデザインされたから。
設定上もマジンガーZと同じ兜十蔵博士の設計ってことになってる。もちろんアニメオリジナル。
まぁ、「Y」より「X」の方がかっこいいから、ミネルバYにならなかったんだろうね。
「A」は、アフロダイAとかで使ってるから、かぶりたくなかっただろうし。
あと、ガラダK7とダブラスM2は、記念すべき“最初の機械獣”だから、印象が強い。
コミック版でもアニメ版でも、最初に登場したのがこのペア。
コミック版では、圧倒的な運動性能と武装で町を蹂躙していたのが、マジンガーZとの戦闘になった途端に一方的にやられる咬ませ犬になっちゃうという役回り。
特に、“ダブラスM2の首がマジンガーZの右前腕に絡みついて引きちぎったと思ったら前腕がロケット噴射してダブラスM2の腹を突き破る”というロケットパンチのデビューのインパクトは大きかった。
この辺の流れはアニメ版とは違うんだけど、アニメ版の前期OPではコミック版のガラダK7・ダブラスM2との戦いが描かれてる。
これもガラダK7・ダブラスM2の印象が強い理由だね。
ラインX1は、ミネルバXと同じ例外タイプ。
アニメ版に登場する機械獣で、Dr.ヘルではなくシュトロハイム・ハインリッヒ博士が造ったロボットだ。
Dr.ヘルからの資金援助を受けて造ったから、所有権はDr.ヘルにある感じ。
シュトロハイム博士がDr.ヘルに引き渡すことを拒んだため、博士を殺して奪ったが、博士の娘ローレライが実はアンドロイドで、ラインX1と一体化し、ラインX1はローレライの意思で動くようになる、という展開。
要するに、ラインX1は独立した自我を持つ巨大ロボットとして造られたってわけ。
ローレライは、一度ラインX1と一体化するともう分離できないので、シュトロハイム博士は娘としてのローレライを失いたくないからラインX1を使いたくなかったってお話。
更に、ローレライは甲児の弟シローと友達になっていて、ラインX1の敗北=ローレライの死となるので、そこにもドラマが生まれた。
これだけでも、ラインX1には商品化できるだけのキャラ付けがあるよね。
「スーパーロボット大戦の思い出」(111回)でも書いたけど、ゲームボーイ版の「スーパーロボット大戦」には敵としてラインX1が登場していて、あたしは30回以上繰り返してラインX1を仲間にした。
ただ、あたしにとっては、ラインX1はドナウα1の劣化版という存在だったりするのよ。
実は、ラインX1のエピソードは、コミック版に登場するドナウα1の物語を再構成したものだったりするの。
キャラクターの位置関係はアニメ版と同じなんだけど、コミック版のシュトロハイム博士は、もうちょっとマッドサイエンティスト寄り。
シュトロハイム博士は兜十蔵に対してライバル意識を持っていて、マジンガーZに勝てるロボットとしてドナウα1を造った。
人間が操縦するマジンガーZに対抗するためにアンドロイドの電子頭脳を使ったってことは、“自ら判断し、人間の反射神経を超える反応速度で行動できる”ということを重視したんだと思う。
ドナウα1の黒いボディは、ローレライが一体化することで青くなる。
「お前が一体化した時、ドナウα1は我が故郷のドナウ川のように青くなる」というシュトロハイム博士の言葉には、そこはかとない狂気が見える。
そして、このセリフがあるからこそ、あたしはラインX1よりドナウα1が好きなのだ。
デザイン自体は、ラインX1の方が頭部が女性的で色がピンクってだけでほとんど同じだから、もしラインX1のボディが青かったら、あたしはラインX1をもっと好きになってたと思う。
ちなみに、物語が再構成されたのは、シュトロハイム博士のマッドサイエンティストぶりを抑えるためだったと思うんだけど、ドナウがラインになった理由は知らない。
その経緯は、多分どこにも出てないと思う。
ただ、α1がX1になった理由は、はっきりしてる。
機械獣の命名規約に反してるからだ。
前述のとおり、機械獣にはアルファベットを使うことになってる。
コミック版で、敢えてギリシャ文字を使ったのは、“普通の機械獣じゃない”ことを強調するためだったと思う。
ただ、アニメ版では、ギリシャ文字は妖機械獣の名前に使われるものだから変更されたんだろうね。
ドナウα1よりラインX1の方が優美なデザインなんだけど、あたしは青よりピンクの方が好きなんだけど、でも、やっぱり青いドナウα1の方が惹かれる。
もし、限定でドナウα1の超合金魂が出たら、買っちゃいそうなくらい。
内に秘めたドラマ性って、それくらい重いのよ。




