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248 ウルトラマンが光るのって漢のロマンだよね(コンバージモーション・エース編その2)

 「あ~~~~っ!?」


 リビングで天さんが変な声を上げた。

 見てみると、Flip Flapを持ってる。


 窓際に置いておいたのを、カーテン開けようとしたら引っかかって落としたらしい。

 「なんか、中でカラカラいってる」

とのこと。

 「Flip Flap」っていうのは、タカラトミーが出してた“太陽電池で双葉をゆらゆらさせる”置物だ。

 翼の2歳か3歳の誕生日に、母さん(ばあちゃん)が買ってくれたやつ。

 もう20年くらい、リビングの窓際でゆらゆらし続けてる。

 それが、壊れたらしい。


 「あ~~、まぁ、古いからねぇ。

  寿命だよ、寿命。形あるものはいつか壊れるんだよ」


 「このデザイン、好きだったんだけどなあ」


 たしかに、緑色の球体から黄緑の双葉が2枚生えてゆらゆらしてる姿は可愛かったよね。


 ちょっと触った感じでは、双葉の下の部分が折れたっぽい。

 動く時に負荷が掛かるところだろうし、修理は無理だろうね。

 後は、せめて、分解して使える部品を何かの役に立てよう。




 …ネジ穴が深くて、ドライバーが届かない。

 いや、ちょっと、これは深すぎでしょう!?

 カバー壊してバラす? どうせもう直らないし。

 バラしてたら天さんが「直りそうか?」とか訊いてきた。

 うそ!? 直るつもりでいたの!?

 そりゃ、あたしを信頼しすぎでしょう!


 「直すのは無理だよ。

  ほら、このおもりの付いてるとこが折れてるから、接着してもすぐ取れるよ」


 「なんとかならないか?」


 「なんともなりません」


 正直、ネジさえ外せてれば直せたかもしれないけど、どのみち強度は期待できない。

 先に「直せないか?」って渡されてたら、長いドライバーを探してたかもしんないけど、後の祭りだし。




 それにしても、う~ん。

 これ、どういう仕組みで動いてたんだろ?

 モーターの類は入ってない。

 や、こんな小さな太陽電池の出力でモーターが回るとは思えないから、違うんだろうとは思ってたけど。

 あたしとしては、電磁石でおもりを持ち上げては落とすってかたちで振り子運動させてると思ってたんだけど、このおもり、磁石にくっつかないのよ。




 基板の仕組みは、太陽電池で発電した電流をコンデンサに貯めて、ICチップで断続的にON・OFFさせてるみたいなんだけど、そのON・OFFの端子になる部分は、基板にハンダが盛り上がってるだけで、どこにも繋がっていない。

 この2つの盛り上がりが、多分、折れた何かに触れてたと思うんだけど、それが何なのか、わからない。

 パーツは落っことしてないと思うんだけどなぁ。




 試しに、太陽電池の代わりに電池を繋いで、出力部分にLEDを触れさせると、ゆっくり点滅した。


 「ほら、天さん、こうやって断続的に電流流れる仕組みだったみたいよ。

  多分、電磁石に繋がってたんだと思うんだけど、肝心の電磁石が見当たらないのよ」


 「そこまでわかってて、直せないのか?」


 「無理。

  大事なパーツが折れてるから、どうにもなんない」


 「せめて部品(それ)使って何かできないか?」


 「何かしてみるよ」


 「何か」っていうか、ウルトラマンだけどね!

 要するに、これ、一種の点滅回路だからね。

 カラータイマーの点滅になら活かせるよ。

 それを天さんが望むかはわからないけど、“何かに活かす”って言ったら、あたしはそれしか思いつかない。

 カラータイマーの点滅としてはちょっとゆっくりすぎる感はあるけど、なんとか活かしたいもんね。


 さて、そうなると、何に使うかだよね。

 基板が小さめだから、コンバージモーションとかの足下に入れたりもできそうだけど。

 とはいえ、アルティメットルミナスの中に入れられるほど小さくもないんだよね。

 正確には、基板だけなら入るけど、電源考えるとってことで。あ、そもそもスイッチが必要だ(いる)から、内蔵ってわけにはいかないのか。

 そしたら、どうしよう。

 今、改造の俎上に載っているのは、コンバージモーションのティガとHDM系のウルトラマンくらい?

 どっちに使うにしても、この点滅だとコレジャナイ感がひどそうなんだよねぇ。

 だから、これのためにコンバージモーションのエースを買うことにする。

 本当はさ、安売りされるまで買わないつもりだったのよ。買えなかったら縁がなかったってことで諦めるつもりだった。

 エースロボットが前のエースよりデキが良すぎて悔しかったってのもあって。

 どうして今回のエースをメタリウム光線のポーズにしなかったかなぁ?

 ホント、企画者はセンスないわ。

 ともかく、行きつけのスーパーでは、既に1か月以上、エースが売れ残っている。

 しかも、定価のまんま。

 ウルトラの母さえ売れちゃったというのに。

 や、正直、今回のエースのデキはいいと思うのよ?

 安売りするまで買わないってのは、あくまであたしの意地の問題だから。

 なので、Flip Flapの供養のために定価でもいいから買おう。




 スーパーに行くと、相変わらずエースとヒッポリトだけ残ってたから、エースだけ買う。

 さらばヒッポリト。エース人形持ってるシークレットがあるってことなら買ったんだけどねぇ。


 家に帰って、早速箱を開けてエースロボットと比べてみる。…顔が別造形だ。

 え、なんでそんなに無駄に手掛けてんの?

 首の輪っかか!? あれの分で形状変わってんのね!?

 どうして、そのこだわりでメタリウム光線にしてくんなかったの!?

 ティガだってゼペリオン光線ポーズあったけど、後の弾で作り直しあったじゃん!




 ともかく、エースの改造の前に、基板の準備始めようか。

 まず太陽電池外して、電池とスイッチを基板にハンダ付けする。

 挿絵(By みてみん)

 後々繋ぎ直す前提だから、スイッチの銅線は短めのやつを途中で別の銅線にハンダ付けして伸ばす感じで。

 こうしとけば、スイッチから外したりする必要がないからね。

 で、ここで確認しとかなきゃいけないのは、オレンジの点灯と赤点滅が共存できるかよ。

 や、この基板って、太陽電池が発電した微弱な電流をコンデンサに貯めて、ICチップで制御して断続的に電流を流すって仕組みだから、赤のLED直結みたいに電圧がどうのってことにはならないはずなんだけどさ。

 うん、やっぱり大丈夫。

 よし、今回は、カラータイマーには青と赤のチップ型LEDが並んでるやつを使おう。

 んで、できれば額のウルトラスターも光らせたいな。

 そのためにはトサカに穴開けなきゃいけないんだけど、たぶんピンバイスが通るくらいの幅はあるよね。

 LEDを入れられるだけの穴はさすがに無理だろうけど、頭の中で光らせてウルトラスターまで光が通るようにトンネル掘れば問題ないはず。

 上手くいかなかったら、アルミホイルか何かで反射板作った上にクリアブルーのレジン盛ればごまかせるでしょ。




 そんじゃ、レジンでカラータイマーの型取って、作業スタート!

 まず、アートナイフでマスクを切り離す。

 もうすっかり慣れたけど、額と顎に接続の凸凹があるから、そこ以外はサクサク切れるのよねぇ。

 外したマスクを裏から見ると、額からウルトラスターは意外と近い。

 これなら光が通りそうね。

 でも、トサカが細くてピンバイスも無理そう。

 じゃあ、千枚通しで穴開けようか。

 ウルトラスターを削って、千枚通しで貫く。

 あっさりいったから、裏側からも通す。

 それを2~3回繰り返すと、穴を通して向こうを覗けるようになった。

 裏側から青のLEDを光らせてみると、ちゃんと光が通ってる。

 光漏れ防止に、マスクの裏に銀を塗る。

 これでマスクはOK。




 次はボディね。

 カラータイマーを削って、ピンバイスで穴を開け、ドリルで拡張する。

 こっちも向こうが覗けるようになった。

 更に、首から背中の穴までピンバイスとドリルで穴を開ける。

 これでボディの方もOK。



 今度はLEDね。

 目はオレンジかな? 試してみると、オレンジが強すぎる。

 今回のエースは、目がクリアイエローだから、オレンジがもろに出ちゃうんだね。前回はスモーク入ったクリアって感じだったからなぁ。

 白と電球色と試してみたけど、電球色がいいみたい。


 百均で買った電球色のチップ型に、青のチップ型LEDをハンダ付けして、額の裏側に当てて光らせる。

 ちょっと光が漏れる&弱いので、額の裏側を少し削って、チップ型LEDの基板部分がめり込むようにする。

 位置を調整すると、空洞の奥でLEDが光るのが見えた。




 次、カラータイマーね。

 青と赤の二連のチップ型LEDをなるべく小さく切り取って、それぞれに銅線をハンダ付けする。

 青の分の(マイナス)は、目の(マイナス)と背中でハンダ付けして1本にしよう。

 で、背中から基板を入れて……う~ん、小さくはしたけど、それでも背中の穴ギリギリかぁ。

 まぁ、光ってるの見えるから、よしとしようか。




 で、次は土台の準備ね。

 コンデンサがでかいから、ちょっと大きめのケースじゃないと入りきらない。

 メインスイッチと、青←→赤切替スイッチで、2つね。

 で、点滅の確認……うっそぉ!? 光んないじゃん! なんで!? 電池切れてる!?

 散々調べた結果、電池からの銅線のハンダが外れて浮いてることがわかって、ハンダ付けし直したら復活した。

 あ~、びっくりした。




 じゃあ、首の穴に銅線通して背中から出して、額の裏に青LED接着して。

 テスト。OK。

 マスクを接着。

 ウルトラスターをクリアブルーのレジンで作って、LEDを光らせてみる。OK。


 きゃあああああ! カラータイマーの銅線が取れちゃった!?

 あと一歩で完成だったのにぃ!

 背中に突っ込んでた基板を取り出してハンダ付けし直して…うそぉ!! LEDが基板から取れちゃった!?

 うぐぅ……どうなってんの? 今のでなんで取れちゃうのよぉ…。




 しょうがない、別のLEDを使うしかないわね。

 青一色なら、胸側から入れられるんだけどなぁ。赤点滅って、ホント大変。

 …いっそ、体の中に入れないで、背中に蓋しちゃう?

 光は十分届くと思うし、試す価値はあるかも。




 蓋をしても、カラータイマーに青い光は綺麗に届かない。

 しかも、背中から光が漏れる。

 これじゃあ、役に立たないね。

 ん~…、じゃあ、内側に光を通すガイドを入れようか。

 アクションヒーローのカラータイマーの時と同じだね。

 爪楊枝の型を取って、クリアレジンで細い透明な棒を作る。

 とりあえず背中に突っ込んで後ろから青を光らせてみると、だいぶよくなった。

 よし。

 いい長さに切って背中に突っ込み、LEDの基板を接着。

 エースを台座に接着して、銅線を1本ずつ穴に通してはスイッチにハンダ付けしていく。

 目の(プラス)は、メインスイッチに。

 青の(プラス)は、切替スイッチに。

 目と青の(マイナス)は、電池の(マイナス)に。

 赤の(プラス)は、切替スイッチに。

 赤の(マイナス)は、Flip Flapの基板の(マイナス)に。

 それぞれハンダ付けして、メインスイッチON。OK。

 赤に切替。…点灯する。

 なんで?

 青の(プラス)からの電流で、回路繋がっちゃった?

 こういう混線は、いっつも頭痛いとこだよねぇ。




 んじゃあ、赤の切替は、(マイナス)でやってみる?

 …ダメ。

 じゃあ、基板への電源そのものを切替スイッチに繋いでみようか。

 …ん? 青が点いた瞬間、赤が点滅したような…。

 何回か試したけど、青が点く状態でメインスイッチを入れると、青→赤→青→赤→青って光った後、ずっと青が点いてる状態になるみたい。

 これって、電圧の関係で赤が消えると青が点くってやつかな?

 赤が点く状態でメインスイッチを入れると、赤が点きっぱなしになる。

 わかんないな~~~~~

 なんで点滅しないんだろ?

 基板の仕組みとしては、コンデンサに溜め込んだ電子をICで制御してLEDに流してるわけでしょ?

 電圧が高すぎるか、電流が強すぎるかして、あっという間にコンデンサがいっぱいになるとして、ICの制御はなに油売ってんの?




 あれ? 光んなくなった?

 わ、 背中の銅線、いくつか千切れてる!?

 何があったの!?

 直すの面倒そう…。

 それはそれとして、目とか光らせた時、なんか涙流してるみたいに光が漏れてたよね。

 挿絵(By みてみん)

 一応、マスクの裏側には銀色塗ったんだけどなぁ。

 せっかくウルトラスターが綺麗に光ってるのに、顔から光が漏れるのはいただけないね。

 もっかい、塗る?

 マスク外すとそれなりにリスクもあるんだけど、どうせ背中の銅線絡みで、大々的な修復が必要だろうしねぇ。

 よし、マスク裏、塗り直そう!




 うん、わかってた。

 そうなるよね。

 ウルトラスターのLEDが取れちゃったよ(泣)

 とりあえず、マスクの裏を塗ろう。

 外れちゃったから、塗りやすいよね。

 って、きゃあああああ!

 左目に銀色が…!

 慌てて綿棒で拭いて、ある程度綺麗になったけど、完全には取れなかった。

 目の後ろでLEDを光らせてみると、一応綺麗に光るみたい。

 ふう。


 で、ウルトラスターなんだけど。

 一度外れちゃったせいか、もうちゃんとくっついてくれない。

 なんか、いい感じに光が通らないのよねぇ。

 だったら、あれだ、カラータイマーと同じように柱通そう。

 爪楊枝で型を取ってクリアレジンで作った棒を、更に細く削る。

 そうやって作った細い棒を、クリアレジンで青LEDの上に立てて固める。

 この棒を額裏面の穴に突っ込んで接着すれば、ウルトラスターが光りやすい、はず。


 …と思ったんだけどなぁ。

 結局うまくはまらず、それどころかLEDが両方とも死んじゃった。

 なんでだろ?

 仕方がないので、胸も頭もLEDから作り直し。

 一応、元どおり綺麗に光るようになった。

 これで、銅線を背中の穴から出してマスクを接着して、と。


 で、カラータイマーの方は…。

 頭部用の銅線を背中の穴に通すと、胸のLEDの入るスペースが極端に狭くなるのよね。

 これが銅線が外れる原因だから、LEDの基板を薄く削いで少しでも小さくしてやらなきゃならないわけ。

 これがめっちゃ大変。

 なぜか基板を削いだらLEDが壊れたり。

 どっかに変な力が入るのかなぁ?




 できた~~~~~~!!


 苦節3か月、背中の穴から入れられる薄さのLEDペアが完成したわ!

 挿絵(By みてみん)

 これ作るのに、LED7個もダメにしちゃった。

 ここさえクリアすれば、完成は目前よ!




 青赤LEDを背中に突っ込んで、まず赤の銅線をFlip Flapの基板からの銅線にハンダ付けする。

 で、青の(プラス)の銅線を切替スイッチにハンダ付けする。

 メインスイッチONの状態で、青の(マイナス)を電池からの銅線に振れさせてテスト。OK、光る。

 頭部の銅線の(プラス)をメインスイッチからの銅線にハンダ付けして、青と目の(マイナス)を電池からの銅線にハンダ付けする。

 テスト。

 うん、光るけど、目が明るすぎて顔が透けちゃうね。

 ん~、じゃ、抵抗挟もうか。

 頭部の(プラス)を一旦外して、間に抵抗を入れる。

 うん、今度はいい感じに光るね。

 左目が汚れてるのが見えちゃうのが残念だけど、これ以上はどうしようもないねぇ。

 挿絵(By みてみん)




 よし、割り切ろう!

 ウルトラスターも光るコンバージモーション・エース、完成で~~~~す!!


 赤点滅がゆっくりすぎるんだけどさ、Flip Flapの供養だからね。

 挿絵(By みてみん)

 うん、君はエースの中で生き続けるんだよ。

 年末に翼が帰ってきたら、見せてあげよう。

 きっと喜ばないだろうけど。

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見事に光った しかしパタパタの供養になったのか? 旦那さんの意見がききたい
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