24 ウルトラマンが光るのって漢のロマンだよね(ガイア編)
それは、いつ生まれたのか、誰も知らない。…じゃなくて。
それは、今年のお正月のこと。
翼を古本屋に連れて行ったあたしは、併設された中古オモチャ屋で、千円で売られてるウルトラマンガイア(スプリームヴァージョン)の大きなソフビを見付けた。
よくある直立ポーズじゃなくて、ファイティングポーズを取ってるやつ。しかも、なぜかバラバラになってる。
足を止めたのは、目の部分が透明だったから。
ほんとは、あたしが作りたいのは、ファイティングポーズのウルトラマンティガであって、ガイアじゃない。でも、なんだかガイアが「連れてって~」と呼び掛けてきている気がした。
こういう時は、アタリだ。
もうちょっと安い方がいいなと思わないでもないけど、目が透明なソフビって珍しい。
あたしは、連れて帰ることにした。
家に帰ってよく見てみると、塗装した跡がある。ここまで手を入れてから売るって、どういう状況だったのかなぁ。
ともかく、顔は別パーツで、後ろ頭に接着されているみたいだから、それを外してみた。マスクは、透明なパーツを銀色で塗装したものらしい。後ろ頭の接合部側(顔の側)は黄色い壁になってるから、そこに穴を開けてLEDの足を通せば、目は光るね。
問題はライフゲージか。さすがにこっちは透明じゃないから、くりぬいてレジンで作る感じかな。とりあえずシリコンで型取っとこう。
でっかいソフビって、分厚いから、くりぬくのも一苦労だった。
翼からピンバイスを借りて、何か所か穴を開けて、そこからカッターで切っていって…というのを暇をみながらやっていったら、貫通したのは3月も末だった。どこのトンネル工事よ。手が遅いなぁ。
4月。
練習用に作っていた15cmくらいのティガのソフビの目やカラータイマーをレジンで作る時、一緒にガイアのライフゲージも作ってみた。けど、膨らみが足りない気がする。
作ったライフゲージをガイア本体にはめ込んで、その上に更にレジンを盛り上げる。
一度にやると形がうまく作れないから、何度かに分けて少しずつ。
仕事が休みで、なおかつ天気がよくないとレジンが固まらないから、えらく時間が掛かる。
そうこうするうちに、ゴールデンウイークが過ぎ、ティガソフビは完成した。
ガイアの頭部の壁にもピンバイスで穴を開けて、電飾の作業を開始。あと、袋に詰め込んで売られていたせいか内股気味にひん曲がっている足をなんとかしないと。
ソフビは温めると柔らかくなるから、それで矯正するんだけど、ドライヤーとか使うと全体が温まるまですごく時間が掛かるし、下半身だけで15~20cmはあるから、お湯で温めるのも難しい。鍋とか使うわけにはいかないしね。
さすがのあたしも、ソフビを煮た鍋で作った料理は食べたくない。
なので、天気のいい日に、車の中に下半身パーツを入れて朝まで放置して温めることにした。
10時くらいに見に行ったら、いい具合に柔らかくなってたから、両手で膝下をそれぞれ持って。股割きみたいに広げながら家に入って。
そしたら、玄関で天さんに睨まれた。
「梓、まさかと思うけど、それ持って外歩いたりしてないよな?」
この顔は、持って歩いてたって確信してる顔だ。わかってるくせにわざとらしく訊くのは、よくないと思う。
「大丈夫。車からここまでだよ。敷地の外には出てない」
と、股割きしたまんまでしゃべってたら、天さんの機嫌が悪くなってきた。
「だから、周りからどう見えるかをもう少し考えろって、いつも言ってるだろ!」
とかお説教が始まったので、仕方ないから、付き合った。あたしってば、我慢強い。もちろん股割きはやめない。
ちょっと翼、「言うだけ無駄だよ」ってなによ! 余計な茶々入れないで!
ひとしきりお説教が終わってから、矯正の終わった下半身をリビングに立てておいた。
こうやって、立ってる時の形で冷えれば、矯正は終了。
と思ったら。
「梓! この気持ち悪いの、なんだ!?」って、天さんにまた怒られた。
気持ち悪いって、単なるソフビの下半身じゃないの。心が狭いなぁ。
仕方ないから、あたしの部屋に持って行って立てといた。
そして6月。
さぁ、今日は天さんも翼も出掛けてる! いよいよ電飾だ!
電球色の砲弾型LEDと、基板についた青のLEDは準備済み。電球色は銅線で足を延長、青は基板に直接銅線をハンダ付けして、と。
青をライフゲージの裏側に入れて光らせてみると、ちょっと青すぎる。
ガイアのライフゲージって、もう少し薄いっていうか、水色っぽいよね。LEDの上に白のレジンを薄く塗ってみたら、ちょっとだけ薄くなった。あんまりやると光らなくなるから、この辺で妥協かな。
基板の端をライフゲージの裏側に瞬着で留めて、電球色は頭部の穴から銅線ごと足を体内に通して、それぞれの銅線の+と-同士をハンダ付けして、と。
後は、-側の銅線に電池をハンダ付けする。この電池は、この前の太陽電池で光るウルトラマンを作る時、太陽電池を取るために百円ショップで買ってきたLEDライトに入っていた充電池。正直、使い捨てになるけど、その都度ハンダ付けし直せばいいよね。
そして、腰の後ろに開けた穴から、+と電池の銅線を出して、スイッチにハンダ付けして、と。
電球色のLEDの位置を微調整しなきゃ。
むぅ。
目がクリアだから、ちょっと光り方が強いわね。
トリプルサウンドの場合、赤外線を通すために透明なままでいさせる必要があったけど、今回はそういうことないからなぁ。
あ、そうだ! 前にネットで、ウルトラの星計画ティガの目の裏に、スーパーの買い物袋を張り付けて目の光を調整した、なんて記事を見たことがあったわね。試してみよう。
いける! いけるわ、これ! アクリル積層の白っぽい光に感じが似てる!
これでマスクを接着すれば、本体は完成ね。
両手を接着して、あと、下半身を上半身に繋ぐための突起は、配線の邪魔にならない&付け外しが楽なように、あちこち切り抜いて、と。
ウルトラマンガイアの、完成で~す!
左は非点灯、右は点灯時
「ただいま」
「おかえり、天さん!」
「なんか、すごい上機嫌だな」
「そりゃあ、もちろん! 着替えたら、見せてあげる♪」
「ほら! この目の光り方が今回のポイントよ!」
「あ~、すごいすごい」
ちっとも心が籠もってないよぉ。
「なんか、踊ってるみたいなポーズだな」
突っ込むとこ、そこ?
「ちゃんと片付けとけよ、そんな大きいの」
「そりゃ、片付けるけど…。そんなに反応冷たいと、あたし、泣いちゃうよ?」
「大丈夫、お前は泣かないから」
そんな信頼、いらないよ!
その後、食玩のハイパーウルトラマンシリーズで出ていたガイアSVを手に入れたので、目とライフゲージを光らせるべく改造を開始した。
ガイアの胸の穴に納められる程度に基板を削って直接銅線を繋げば、1辺2mmくらいのLEDのできあがりよ。
以前、偶然作っちゃったLED単体よりは大きいけど、銅線の方が柔らかいから、むしろ自由度は高いわ。
…なんということ! 材質がゴムに近い柔軟性のある樹脂のせいか、ピンバイスで穴を開けても、銅線を通せるほどの太さの穴にならない。もっと太いドリルで穴を開けるしかないのかなぁ。
とか考えてたら、なんとプレバン限定で、アルティメットルミナスのガイアSVとアグルV2が出るって!
これは、ビッグソフビ&トリプルサウンド&ハイパーウルトラマン&アルティメットルミナスの揃い踏みをするしか!
それは、いつ生まれたのか、誰も知らない
「妖怪人間ベム」のオープニングナレーション。梓は、幼い頃からこのシーンが大好きだった。
ウルトラマンガイア(スプリームヴァージョン)
1998年放送の「ウルトラマンガイア」の主役:ガイアのパワーアップ形態。
「ウルトラマンガイア」は、テレビシリーズ初の“2人のウルトラマンがレギュラー出演”する作品だった。
本作におけるウルトラマンは、地球の危機に際して、根源的破滅招来体に対抗するために生み出された地球の力が形を持ったものであり、ガイアは大地の赤い光、アグルは海の青い光を持つ。
ガイアは銀地に赤の模様で一部金色の縁取り、アグルは頭部は銀色だが首から下は青地に黒の模様、一部銀色の縁取りというデザイン。
中盤、アグルの光を託されたガイアは、胸の模様の赤い部分が黒に変化した(本編中では呼ばれないが、商品展開上の区別のため「V2」と呼ばれる。以後は基本がこの姿で、それまでの通称「V1」には二度とならない)。
V2となったガイアは、さらに、パワーを全開にすることで「SV」というパワーアップ形態に変化できる。
SVになると、頭部は銀のまま、体は赤地に銀と青の模様で金色の縁取りに変化し、体格もマッチョになり(スーツアクターが別の人になる)、ファイティングポーズも変わる。
通常は、前に出した手が平手で肩の高さに引いた手が拳だが、SVでは、前に出した手が拳で、頭の高さに引いた手が平手となる。
ライフゲージ
「ウルトラマンガイア」におけるカラータイマーの呼称。
ガイアもアグルも、逆三角形っぽいデザインになっている。
また、どちらの変身アイテムも、ライフゲージ部分を基にした意匠になっている。
ガイアの変身アイテム:エスプレンダーは、主人公である高山我夢が作っているシーンがある。アグルの変身アイテム:アグレイターは、作っているシーンはないが、変身する藤宮が作成したものと思われる。
ちなみに、あまり知られていないが、ガイアもアグルも活動時間に限界はなく、体力が尽きるかダメージが大きくなると、点滅を始める。
なお、この時期の着ぐるみでは、LEDではなく電球を使っており、そこに何らかのフィルターを通しているため、ライフゲージの光は青ではなく水色っぽいものになっている。
アクリル積層の白っぽい光
ビデオ撮影では、目のパーツが透明だと、角度によっては何もないように映ることがある。
そのため、ティガ以降のウルトラマンの目は、アクリルのパーツを何枚も重ねて乳白色っぽい色にしている。その奥で電球が光っているために、目の光が白っぽく見えるのである。
トリプルサウンド
2000年に発売された「装填トリプルサウンド」シリーズのこと。
ティガ・ダイナ・ガイアSVの3種が発売された。
赤外線通信を使い、銃・変身アイテム・ウルトラマンフィギュアの3点でギミックが完成する高級玩具。
円筒型の電池ボックスを銃に入れて数回撃ち、電池ボックスを抜いて変身アイテムに差し込む。電源の入った状態のフィギュアに向けて変身アイテムのボタンを押すと、赤外線信号が出て、フィギュアから変身音が出る。その後、ボタンを押すたびにフィギュアが掛け声を発し、やがてカラータイマーが赤点滅して点滅音が出る。次にボタンを押すと光線発射音が、次に飛び立つ声が出て終了する。
ちなみに、フィギュア本体の背中のボタンを押しても音声が出るが、変身や光線の音は出ない。また、掛け声は、ティガにのみタイプチェンジの掛け声があるが、ダイナとガイアはそれがない代わりに「どわぁぁぁぁ…」とやられた時の声が入っている。
赤外線を通すため、目がクリアパーツ、点滅ギミックの関係でカラータイマーがクリアパーツになっているため、梓は目に電球色のLEDを、カラータイマーに青のLEDを入れた。
梓は、いずれも中古で手に入れたため、ティガとダイナは一式持っているが、ガイアは本体だけしか持っていない。
ハイパーウルトラマン
1998年から発売開始された300円の食玩のシリーズ。
全高15cm程度のフィギュアで、顔面やカラータイマーがクリア素材でできており、内側に金色のメタリックシールを貼ることで目やカラータイマーが光っているように見えるというシリーズ。
造形のレベルも高く、現在の食玩の価格帯を考えるとメチャメチャお得。
ちなみにこのシリーズ、「ハイパー」→「HD」→「HDS」→「HDM創絶」と、段々大仰なタイトルになってきている。
LED単体
基板に足となる鉄線2本をハンダ付けした後、どういうわけかLEDが基板から剥がれ落ちてしまった。ところが、ハンダ付けした鉄線は外れなかったため、1mm角のLEDから直接足が生えた状態で、ちゃんと光るものができあがった。
偶然の産物なので、もう一度やれと言われてもできない。フリじゃなくて、本当にできない。あんな1mm×1mm×0.5mmの部品に鉄線2本を絶妙な位置を狙ってハンダ付けなんて、絶対無理。
左から、LEDのみ(鉄線の間にある白い四角がLED)、極小基板LED、市販の砲弾型LED
上のLEDのみと極小基板LEDを光らせたところ
もう一度やれと言われてもできない
小説「銀河英雄伝説」で、ヤン・ウェンリーが、難攻不落と言われたイゼルローン要塞を詐欺みたいな手で占領した後、本国に送った報告文「なんとか成功した。もう一度やれと言われてもできない」から。
なお、ヤンは後にもう一度、詐欺みたいな方法でイゼルローン占拠に成功している。そのため、梓はしつこく「無理」と主張している。決してフリではない。
アルティメットルミナス
2016年にスタートし、現在も進行中のガシャポンシリーズ。メビウスまでのテレビシリーズは網羅されており、2周目に入った。
2周目では、ウルトラマンはCタイプ(前はBタイプ)、セブンはエメリウム光線ポーズ(前はファイティングポーズ)、新マンはウルトラブレスレット(前はファイティングポーズ)、ティガはパワータイプ(前はマルチタイプ)となっている。
無可動のフィギュアの中にシリーズ共通のLEDユニットを入れることで、目とカラータイマー(青)が光る。
プレバン限定
「プレミアムバンダイ」という、バンダイ直営の通販サイト限定アイテムのこと。
以前話題にしたウルトラレプリカシリーズもそう。
アルティメットルミナスは、通常は1回500円のガシャポンなのだが、プレミアムバンダイ限定で、キングジョーやゼットンなど怪獣も1体4千円くらいで出ている。
また、ウルトラマングレートやパワードのようなマイナー系もプレミアムバンダイ限定になっている。
ガイアについては、一番人気のないV1が通常のガシャポンで出ているが、V2もSVもプレバン限定である。商売が汚い。




