2 フルートに触れた日
2017年12月4日のかっぽうに書いたものです。
梓は、天平が中学時代に使っていたフルートにようやく触らせてもらえて大はしゃぎです。
2019.6.20 大幅改稿しました。内容は変わっていませんが、文章が細かくなっています。
天さんは中学時代、吹奏楽部で、フルートを吹いてたんだそうだ。フルートやってる先輩が何人もいたから、最初はバイオリンやパーカッションに回されたらしい。
フルート…ああ、なんて魅惑的な響き♪
あたしが物心ついた頃、「ママと遊ぼうピンポンパン」という子供番組があった。
「ピンポンパン」というと、大抵の人は番組ラストの「おもちゃへ行こう!」でオモチャをもらえることを思い出すらしいのだけど、あたしは、番組冒頭でお姉さんがフルートを吹いてる姿が出てくる。
「ピンポンパン」の主題歌は、最初にフルートが鳴るけど、それに被せる形で、画面でもお姉さんがフルートを吹いていたのだ。
キラキラと銀色に輝く横笛は、あたしの心を鷲掴みにした。
OP、EDのレコードも持っていたけど、レコードのOPでも、ちゃんとフルートの音が入っていた。
…あたし、3歳くらいの時には、ポータブルのレコードプレイヤーを自分で使いこなしてた気がする。
やっぱり、ちょっと早熟だったのかも。
ま、それはともかく。
小さい頃から憧れだったフルートを、天さんが持っている。
そのことを知ったのは、結婚して新居に引っ越した後なんだけど。
触らせてって頼んでも、なぜか首を縦に振ってくれないのよねぇ。
しつこくお願いしてたら、「じゃあ、ペットボトルの口、鳴らせるようになったらな」だって。
どうせできませんよーだ!
あれから何年も経って。
一応、ペットボトルは鳴らせるようになったんだけど、天さんの前で披露はしていない。
あ、もちろん、何年も練習してたってわけじゃないけど。
ふと、天さんの部屋を覗いたら、フルートのケースが目に入った。近くには天さんがいる。今日は機嫌もいい。
これは、思い立ったが吉日ってやつでは!?
「ねぇ天さん、フルート! 触ってみたい」
「触って楽しいもんじゃないってのに。なに、小説のお友達の影響か?」
「なに? 天さん、妬いてんの? 嬉しー」
「いや、その人、女性だろ? なんで妬くんだよ。それより、なんで急にフルート?」
これは、押せる!
天さん、呆れた声出してるけど、否定的な感じじゃない。いきなり駄目って言わなかった!
「今、そこにケースが見えたから! ピンポンパンの昔から憧れなんだってば」
よし、よし、いける! 天さん、初めてケースを開けてくれた!
「しょうがないなぁ…。あれ? なんか変色してる」
「ほら、開けてみてよかったじゃない。大丈夫?」
見ると、銀色のフルートのあちこちが青っぽくなってる。錆かな?
天さんが指でこすってみると、青いのは取れた。錆じゃないのかな。汚れ?
「ああ、こすると取れるかな? グリス塗らないと。
運指、忘れたからな?」
などと言いつつ、フルートを組み立てて吹いてみせてくれる天さん。
ちゃんと吹けるじゃない。けちけちしないでもっと見せてくれればいいのに。
うわ~、結構低い音も出るのね。
「え~、ちゃんと吹けてるじゃない。
あ~、こんな低い音も出るんだ」
そう言ったら、
「ピッコロと間違えてないか?」
と言いつつ、なぜかさん分割して吹き口の部分だけあたしに渡してくれた。
他のパーツは布で拭き拭きしてる。
「なんで分解するの?」
せっかくだから、フルートを構えたかったのに。
「吹き口だけあればいいだろ?」
確かにそうだけど、ロマンってもんがあるでしょうが。
とにかく初めて貸してもらえたんだから、吹いてみよう。
「フゥーッ、フゥーッ…」
あれ? 音が出ない。だってあたし、ペットボトルは吹けるようになったよ?
「もっと口広げて」
口? 広げるの?
フゥーッ、フゥーッ、ピィーッ
「…口笛になっちゃった」
「だから、ペットボトル吹けるようになってからって言ったじゃん」
だから、ペットボトルは吹けるようになったよ! …天さんには見せてないけど。
「うにゅう…。ペットボトル吹けたら、合体したフルートに触らせてくれる?」
「考えとく」
約束はしてくれなかったけど、いずれまた天さんの機嫌のいい時を狙って挑戦してやるんだから!
今度こそ、ちゃんとフルートの形にして!
音は出なかったけど、初めて触れたフルートに大はしゃぎの梓でした。<子供か