16 九字、四神、五行…あら、数字ばっかり
今日が誕生日の山之上舞花お姉様に捧げます。
ちなみに、今回もあとがきの方が本体のように充実しています。
「ねぇねぇ天さん、“九字を切る”って知ってる?」
「は? くじ引きがどうしたって?」
「くじ引きじゃなくて、九字」
「9時? 9時間切るって話か?」
「そうじゃなくて、漢数字の九に文字の字よ」
「なんだ、そりゃ?」
「臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前! ってやつ。時代劇とかで見るでしょ?」
「いや、知らない。何のまじないだ?」
「翼! 翼なら知ってるよね!」
「なにそれ知らない」
「翼まで!? あんたが読んでる銀魂とかに出てこないの!?」
「そんなの聞いたことないよ」
ことの発端は、某所で、「“護身九字”“四神”“五行”はどこまで常識か?」と問題提起されたことだった。
あたしの中では、“五行”以外は一般常識の範疇だったのに、そこでも、あたしの常識は常識じゃないと断言されてしまったのだ。天さんに言われるのはわかる、パンピーだから。でも、そこは、和風ファンタジーを書いている人と、それを読んでる人の集まりだったというのに、そこでも!
大事なことだから、2回言っとくよ!
別に、詳しい知識なんか求めないよ。あたしだって、九字の一文字一文字にどんな意味があるのかなんて知らないし。
でも、少年漫画とか時代劇とかで、言葉くらい出てくるでしょ!?
今時の少年漫画って、九字も切らないの? 密教系で九字を切ったり、忍者もので印を結んで九字を唱えたりしないの!?
「天空戦記シュラト」の真言「ナウマク・サンマンダ・ボダナン・ア・ビラ・ウンケン・ソワカ」だって、知ってる人は知ってるわよ!
レインボーマンの変身の呪文なんか、「アノクタラサンミャクサンボダイ」よ! お経の一部よ! あたし、お通夜でこのフレーズ聞こえるたびに、笑い堪えるの苦労してるんだからね!
“四神”なんか、玄武・朱雀・青龍・白虎よ! 少年漫画の四天王とかでよくあるネタじゃないの! 名前までは常識よ! どれがどの方角かまではともかく、名前も出てこないなんて!
“五行”は、さすがに求めない。これは一般的じゃないと思うから。
でもね、天さん、「カードキャプターさくら」は一緒に見てたじゃない。
クロウカード最後の1枚「地」は、「木」で捕まえたじゃない。ケロちゃん解説してたでしょ。“クロウ・リードは中国の血も入ってるから、五行の考え方もクロウカードに入れてる”って。あたし、相生相克まで解説したじゃない。なんで忘れちゃうのよ。
それに、お正月にあたしの実家に行った時、十干十二支の話も出たよね。
あたしの話、ちゃんと聞いてないんじゃないの!?
“土用の丑”の話もしたよね! あれも五行だからね!
あ~ん! 愛が足りな~~~~~い。・°°・(>_<)・°°・。
ちなみに、“九字”“四神”“五行”、全て 言葉としては辞書に載っています。
「天空戦記シュラト」
1989年に放送された「聖闘士星矢」系の“鎧を着て戦う少年”のアニメ。
仏教系の用語や設定がかなり使われており、主人公は八部衆の修羅王シュラト。阿修羅王をもじったもの。仏教における八部衆の名前は複雑なため、本作に登場する八部衆は、名前を一部省略された者もいる。
第1部の敵は、十二羅帝の1人雷帝。第2部では、ヴィシュヌの下、シヴァ配下の十二羅帝とブラフマーの鎧を巡って戦う。
第2部の作画レベルの低さは伝説級。
余談だが、子安武人さんの初レギュラー作品でもある。
「愛の戦士レインボーマン」
1972年放送の特撮ヒーロー番組。
インドの山奥でダイバダッタの修行を受けてレインボーマンに化身できるようになったヤマトタケシと、日本人に恨みを持つ外国人集団“死ね死ね団”との戦いを描く。
変身時の呪文「アノクタラサンミャクサンボダイ」は、般若心経の一節で、悟りを意味するらしい。お通夜などでは、たいてい般若心経が読まれる。
ちなみに、1982年に放送されたアニメ版は、宇宙人の侵略になっている上、レインボーマンが術で巨大ロボを作り出すというものすごい展開になっている。
「カードキャプターさくら」
CLAMP作のマンガで、NHKでアニメ化もされた。
かつて魔術師クロウ・リードが作り出した魔法のカード“クロウカード”が散逸したため、それを集めることになった少女:木之本桜の物語。
ファイティングコスチュームがコスプレという、類を見ない衣装持ち(ただし本人は恥ずかしがっている)。
さくらは、普段は鍵状にして持っている杖を使い、自らが持つクロウカードを使役して、野生化したクロウカードを捕獲する。
捕獲したカードは、以後さくらの戦力となるため、徐々にできることが増えていくのが魅力の1つだった。
原作とアニメの最大の違いは、原作ではさくらの父:藤隆がクロウ・リードの魂の半分を持つ生まれ変わりであるところ。
アニメ第1部で、藤隆がクロウカードで眠らされる展開にしてしまったため、“自分で自分に魔法は掛けられない”という設定と矛盾するためにオミットされたと思われる。
第2部さくらカード編では、クロウ・リードの魔力と記憶を持つもう1人の生まれ変わり:柊沢エリオルが、さくらの魔力を増大させるべく様々な事件を起こしていく。さくらは、クロウカードをさくらカードに作り替えながら事件に対処していく。
エリオルの目的は、クロウ・リードから引き継いだ強大な魔力を藤隆と二分することだった。自分では自分に影響のある魔法を使えないため、さくらの魔力を鍛えて魔法を使ってもらうことにしたのだ。。
さくらの魔法によって、藤隆は魔力を得て、亡き妻の霊と対話できるようになり、エリオルは魔力を半分失い、“世界最高の魔術師”ではなくなった。
アニメでは、設定の違いから、この部分がオミットされており、結局エリオルの目的が何だったのかがぼけてしまった。
余談だが、梓は鍵になっている時の杖が大好きで、自宅の鍵に“星の鍵”のキーホルダーを付けている。
ケロちゃん
本名ケルベロス。ただし、三つ首の犬ではなく、鳥の羽の生えた虎のような姿。
普段は、力を封印して小さなヌイグルミのようになっている。
五行(五行説)
木火土金水の5つの気によって世界が成り立っているとする考え方。
木が火を強くするように、次の字の力を強め(相生)、木が土を痩せさせるように、次の次の字を弱める(相克)という性質がある。
自然科学としては否定されているが、二十四節気や十干十二支のように、五行に基づくものは多い。
十干十二支
俗に言う干支。
十干は、木火土金水をそれぞれ兄(陽)と弟(陰)に分け、きのえ、きのと、ひのえ、ひのと、つちのえ、つちのと、かのえ、かのと、みずのえ、みずのと、という具合に進む。
甲子、乙丑、丙寅のように、十干と十二支がそれぞれ合わさっていくため、癸酉の次は甲戌となり、2つずれる。
10と12の最小公倍数である60年で組み合わせが一巡して甲子に戻ることから、60歳を還暦という。
十干そのものは今では廃れているように見えるが、意識していないだけで、今でも身近に溢れている。
甲乙丙丁…は、“いろはにほへと”と並んで、古くから順番を表す符号にされている。「甲乙付けがたい」は、「1番2番を決めがたい」という意味である。
甲子園球場は、甲子の年に完成したからこの名が付いた。
戊辰戦争(つちのえ・たつ)や壬申の乱(みずのえ・さる)など、歴史上の出来事で、発生した年の干支により名付けられているものも多い。
“丙午生まれの女性は気性が激しく夫の命を縮める”という迷信があり、その頃は子作りを控える夫婦が多いらしい。実際、前回の丙午(1966年)は、出生率が大幅に下がり、その前後の年は例年より多いという統計がある。
なお、正月に梓が実家でこの辺りの話をしたのは、10月に会津で訪れた漆器店の蔵の写真を見せていて、天井に「癸未」と書かれていたことから、「乙」という地名(新潟県下越地方にある)の話を出したためである。
蛇足ながら、十二支を使った言葉も溢れている。
時計の12に子を、1に丑を、とやっていくと、11に亥がくる。これを24時間制の時計に見立てると、子が午前零時で正子の刻といい、その前後2時間(午後11時から午前1時)が子の刻になる。「丑三つ時」は、丑の刻の4分の3、つまり午前2時半をさす。
午前12時が「正午の刻」で正午、その前が「午前」、その後が「午後」となる。
前期の時計で子から午まで垂直線を引くと、「子午線」となる。
土用の丑
五行では、1年(360日)を春夏秋冬の4つに分けて、72日ずつ、春=木、夏=火、秋=金、冬=水が支配する季節としている。
そして、それぞれの季節の間の、立春・立夏・立秋・立冬の前に18日ずつ土の季節が入る。これを土用という。18日×4回で72日となり、他の季節と同じ日数になっている。
日めくりカレンダーを見るとわかるが、日々十二支が割り当てられており、土用の間に来る丑の日が“土用の丑”である。土用は18日あるので、“土用の丑”が2回くることも多い。
一般に知られる“土用の丑に鰻を食べる”というのは、立秋の前の土用のことであり、他の季節にも土用はある。
立春前の土用の丑には、唇に紅を差すと良いとされる。
もしかして、五行が一番常識的?




