14 光るのがロマンだったのに!
後書きにある解説の方がファンが多いという逆転現象が起きております(^_^;)
「ぐぬぬぬぬ…」
「どうした梓、さっきから唸って」
さっき買ってきたコンバージの新マンを見ながら怒ってたら、天さんに心配されてしまった。
「これ、さっき買ってきたんだけど」
「ああ、ウルトラマンな」
「新マンね。コンバージウルトラマンシリーズの第3弾なんだけどね。
こいつ、光らないのよ。まぁ、わかってはいたんだけどさ」
「わかってたのに、何が気に入らないんだ?」
「あたしがさ、第2弾でも文句言ってたの、覚えてる?」
「…いや」
「第2弾はね、目が白く光るのよ。それであたし、お客様センターに電話したの」
「ああ、あれか! 何をしたかったのか、よくわからなかったやつ!」
「天さんからはそういう印象なんだ…。
あのね、このシリーズは、頭部に空洞があって、別売のLEDユニットを入れて目を光らせられるのがウリだったのよ。
アルティメットルミナスだと電球色のLEDなんだけど、コンバージ用は白のLEDなわけ。
ウルトラマンもティガも目が黄色の半透明で、LEDは白く光るけど、電球色っぽく光るのね。
たぶん、第1弾に、目が青く光るジードとかいたせいだと思うんだけど。
ところがね、そもそもこのLEDユニットって限定発売で、もう売ってないのよ。
そうすると、持ってない人がほとんどでしょ。だから、第2弾では、光らない状態で綺麗に見えるように仕様を変えたわけ。
ほら、第2弾のダイナとかガイアって、目が黄色くないでしょ。
たしかに、平成ウルトラの着ぐるみの目は、白っぽく見えるんだけどさ」
「待った。
まず、平成ウルトラがわからない」
う…。そこからか。
「平成8年に始まったティガからガイアまでの3作を、俗に“平成ウルトラ3部作”って言うの。平成に入ってから初めてやったテレビシリーズだから。海外版のグレートとかパワードとかも平成に入ってからだけど、日本じゃビデオでしか出てなかったし。
で、平成ウルトラは、フィルムじゃなくてビデオ撮影になったの。合成とか楽だから。
ビデオ撮影だとね、昭和のウルトラマンの目みたいに、透明なパーツの奥で電球が光ってるのを撮すと、角度によっては目がないみたいに映ることがあるらしいの。だから、ティガの目は、アクリル板を何枚も重ねてその奥で光らせることで、アクリル板で乱反射させて、目のパーツ自体に色を付けるみたいな仕組みになってるんだって。
ちなみに、ティガにはウルトラマンがゲスト出演したことがあるんだけど、その時のウルトラマンの目はティガのものをはめてるのよ。
今は、全部のウルトラマンの着ぐるみの目がアクリル重層で作られてる。
でね、アクリル板重ねた目って、明るいところだと白っぽく見えるのよ。
ここまで、いい?」
「ああ」
「で、このコンバージってシリーズの第2弾は、一応LEDユニットを内蔵できる構造になってるんだけど、実際に入れて光らせてみるとね、目は真っ白に光るわ、目の周りの塗装が薄いから顔そのものが光るわで、話にならないのよ。
で、不良品かもしれないからって、一応お客様センターに電話して聞いてみたのね」
「たかが食玩で何やってんだ、お前」
「第1弾のティガも不良品で交換したでしょ? 可能性は低いけど、一応確認しようかと思って。
そしたらさ、“そういう仕様です”って言うのよ。呆れちゃったわ。
きっとね、実質的に“LEDユニット入れる奴なんかほとんどいないだろう”って思ってたんだと思う」
「それで、わざわざメーカーに電話するのか?」
「確認よ、確認。
でね、とうとう第3弾では、光らせることをやめて、頭を接着しちゃったのよ。
とにかく、せめて新マンまでは揃えようと思ってたから買ったんだけどさ、実はLEDユニットが入れられないことは、わかってたのよね」
「じゃあ、買わなきゃよかっただろう」
「悩んだんだけどね、やっぱり新マンまでは揃えたかったのよ。
そしたらさ、塗装までお粗末で。
新マンの特徴の二重線が省略されてるのよ! 500円もするのに!
途中で仕様が変わるのって、普通は進歩するもんなんだけど、ここまで退行するとはね。
メビウスの映画の頃のマスコットなんか、もっと小さくて300円だったのに、ちゃんと二重線塗られてんのよ! 手抜きだわ。
さすが、エレキングしか売れてなかっただけのことはあるわ」
「そういうとこ、俺にはわからんなあ」
「新マンの不遇キャラ伝説にまた新たなページが…」
「なんだよ、その伝説って」
色々あるのよ。チャルメラのCMとか。
コンバージウルトラマン
コンバージは、1個500円の食玩シリーズ。仮面ライダーやガンダム、ドラゴンボールなど多岐に亘る。
ウルトラマンシリーズは、2018年2月から発売開始、12月17日に第3弾が発売された。
当初、プレミアムバンダイのウルトライトステージ(限定発売)に付属するLEDユニットを頭部に入れることで目が光るのがウリだった。
ウルトライトステージは、ワイヤレス送電ユニットであり、LEDユニットは電池がないため小型化できた。
第1弾のラインナップでは、ウルトラマン、ティガのほか、ジード(青)、ベリアル(オレンジ)、ゼロビヨンド(黄色)など、目の色がバラエティ豊かだった。
第2弾では、バルタン星人とゼットンだけがさっさと売れて、ウルトラマン系は売れ残りまくり。
第3弾で、頭部が接着されてLEDユニットを入れられなくなった。
梓が買いに行ったのは発売から5日後だったが、エレキング1個しか売れていなかった。購買層考えたら、R/Bみたいな現行のウルトラマンを入れても売れるわけなかろうに。
海外版のグレートやパワード
オーストラリアで作られた「ウルトラマンG」、アメリカで制作された「ウルトラマンパワード」のこと。
「グレート」は、1990年頃に制作され、初のビデオ撮影によるウルトラマンとなっている。
ウルトラマンの戦闘シーンを野外で撮影するという、オーストラリアならではの豪快な作品。
ビデオ撮影故に目やカラータイマーが背景に溶け込んでしまうのを避けるため、目は白っぽく、カラータイマーは小さく濃いめの色合いになっている。
また、スーツがゴム製ウェットスーツではなくレオタードっぽい素材なのも特徴。布製スーツのウルトラマンは、グレートとゼアスくらいである。
ちなみに、日本語版の主役の声及び主題歌は、京本政樹氏。
「パワード」は、1993年頃にアメリカで制作された“青い目のウルトラマン”。内容的には、「ウルトラマン」のアメリカ版リメイクであり、バルタン星人、ダダ、レッドキング、ジャミラ、ゼットンなど、ウルトラマンに登場する怪獣をリデザインしている。オリジナルとの区別のため、それぞれパワードバルタンなどと「パワード」を付けて呼ばれる。
主役を演じたのは、まだアメリカ在住だったケイン・コスギ氏。アメリカで忍者映画を大流行させたショー・コスギ氏の実子で、後に日本にやってきて、「忍者戦隊カクレンジャー」でニンジャブラック・ジライヤを演じている。当時はほとんど日本語を話せなかった。
ケイン氏は、「カクレンジャー」で、ゲスト出演した父と一騎打ちを演じたりもしている。
お客様センターに電話
食玩や商品の箱に書いてある、不良品等あった際の連絡先。
梓は、第1弾のティガの目のパーツが削れている不良品だったことで、電話の上、交換してもらった。
ちなみに、「仮面ライダーディケイド」の時は、変身ベルト:ディケイドライバー用に付属する紙製のカードがすぐ傷むため、お客様センターに連絡すると樹脂製のカードを実費販売している。
「超獣戦隊ライブマン」では、変身ブレスのレッドファルコン・イエローライオン・ブルードルフィンのプレートを入れ替えることで、それぞれの専用にできる。後にブラックバイソンとグリーンサイが増えた際、お客様センターに連絡すると、2人のプレートを実費販売してくれた。
もちろん、梓は持っている。
新マンの特徴の二重線
新マンの体の赤い模様は、外側に細い赤線がもう1本入っているのが特徴。
フィギュア系では、塗装するのが大変だと思うが、これがアイデンティティなので、手を抜かれると悲しい出来映えになる。
身長3センチくらいのフィギュアを500円で売っているのだから、そこら辺はきちんと対応してほしかった。
新マンの不遇キャラ伝説
新マンは、ウルトラシリーズで唯一変身アイテムがないなど色々と不遇なのだが、特に顕著なのが“名前がないこと”。
企画当初、ハヤタと分離したウルトラマンが“帰ってきた”という設定だったのが原因。
制作中に、スポンサーから「同じウルトラマンでは新しいソフビ人形が出せない」とクレームが入り、急遽別人となり、デザインも変わった。
名前がないため、「ウルトラマンA」では、“ウルトラマン2世”と呼ばれている。
後に、映画「ウルトラマンゾフィー」制作の際、呼び名がないと不便なので“ウルトラマンジャック”と名付けられた。が、当然というか、昔からのファンには不評。
梓は、決して“ジャック”とは呼ばない。
なお、「ウルトラマンジャック」は、「ウルトラマンタロウ」の企画時の名称で、ハイジャック事件のせいで「ジャック」という語感が悪くなったため没になった、という話は有名。
チャルメラのCM
平成4年頃に放送されていた、ウルトラマンが登場するインスタントラーメンのCM。
ウルトラマンが、カップ麺ができあがるところでカラータイマーが鳴りだして食べられなかったり、着物を着て習字で「重労働」と書いたりする、コミカルなCMシリーズ。赤ん坊が生まれたりもしている。
実は、服を着せる関係上、首が赤いと見栄えが悪いとのことで、首が銀色の新マンを使っているのだが、視聴者のほとんどは初代のウルトラマンだと思っていた、という悲しい裏話がある。