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奥様はオタク ~梓と天平 小話集~  作者: 鷹羽飛鳥


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11 ウルトラセブンに会った日

 ちょっと時間を巻き戻します。

 それは、翼がまだ9歳だった頃のこと。

 「ねぇ天さん、新津美術館でウルトラマン展があってね、来週の土曜、ハヤタが来てトークショーやるんだって。行かない?」


 「来週の土曜なら、まあいいけど」




 そんなわけで、家族3人で新潟市立新津美術館に行くことになった。当時の衣装やら小道具やらが並ぶイベントで、黒部進(ハヤタ)桜井浩子(フジ)両隊員が来ることになってる。

 翼も連れてこの手のイベントに行くのは、長岡市であったディズニー展以来だ。

 さすがに天さんも「ウルトラマン」くらいは知っている。まぁ、一般常識だからね。翼もスカパーで「ウルトラマン」も「ウルトラセブン」も見たし、「ウルトラマンマックス」や「ウルトラマンメビウス」はリアルタイムで見てたから、これなら家族全員楽しめる。


 「多分、かなり混むだろうから、早く行かないと整理券もらえないと思うのよ。開場10時だから、8時くらいには着きたいなぁ」


 「え!? そんなに早く!?」


 「市立だし、整理券配るのは10時からだと思うけど、この手のイベントの常で、みんな早くから並ぶのよねぇ」


 「信じられない世界だ」





 そして、当日。

 「ほら、もう結構並んでるでしょ?」


 「みんな、なんて暇なんだ…」


 「暇じゃなくて、愛なんだよ、愛」


 「そんな愛、いらないだろ」


 ともかく、無事トークショーの整理券は貰えた。やっぱり10時から配付だった。いい読みしてるよ、あたし。

 これも予想の内だったけど、トークショーの後の握手・サイン会に参加するには、サインをもらう本=売店で売ってるウルトラマン関連の本を買わなきゃならなかった。市立のくせにせこい。

 まぁ、しょうがないね。ちょうど桜井さんの書いた本が面白そうだったから、それを買うことにしよう。

 トークショーはあんまり面白くなかったけど、その後のサイン会で黒部さんと握手できたからよし! 本物さんと握手したのは、宮内洋さんと中屋敷鉄也さん、ダイレンジャーの5人以来だ!

 できればツーショット写真も撮りたかったけど、そっちは禁止だった。いちいち参加者が立ち止まってると時間が掛かるから、仕方ないんだろうね。

 展示品は、イマイチ。東京とかの展示に比べてショボい。「ウルトラマン80」までという企画的に、昭和のものばかりになるのは仕方ないのかもしれないけど、ティガ以降の作品の関連もほしかったなぁ。





 「ねぇ天さん、来月はモロボシダンが来るんだって」

 正確には、森次晃嗣(モロボシダン)ひし美ゆり子(アンヌ)古谷敏(アマギ)のウルトラセブンお三方が来るんだよね。

 多分、黒部さん達よりも競争率上がるんじゃないかな。


 「もう展示品全部見ちゃったじゃないか。

  第一、俺、来月は仕事だ」


 「あ~、そっか~。じゃあ、あたしだけで行こうかな。翼は行きたい?」


 「うん」


 「じゃあ、あたしと翼だけで行くよ」




 そしてダンが来る日、念のため、あたしは7時半には着くようにした。…んだけど。

 「お母さん、もういっぱいだよ。どうしよう」

 前回より早く来たのに、既に長蛇の列だった。でも、これくらいなら、多分整理券が貰えるはず。最悪でも2回目なら余裕だ。午後までずっと待ってなきゃならないのは、時間潰しが大変そうだけど。


 「いい。並ぶよ、ほら」


 待つこと2時間半。その間に、列はどんどん伸びて、とうとうエントランスに入りきれずに外まで続いていた。こういう時に前倒しで動かない辺りが市立(お役所)だよね。

 整理券が配られて、少しずつ列が消えていく。

 順調に進んでいって、あたしの前の前の人で、午前の部の整理券がなくなった。残念、午後の部かぁ…と思ったら。


 「それでは、午前の部の整理券配付が終わりましたので、一旦解散にします。後ほど、午後の部の整理券を配付しますので、またお並びください」

 はぁ!? 何言ってんの、この人! まだ外まで列が続いてるのが見えないの!?


 「ちょっと、それは無茶よ。この列が見えないの? 順番に整理券が配られると思ってるから、みんな大人しく並んでるのよ? 後でまた列作りますなんて言って解散したら、新しい列で前になろうとする人が出て、大混乱になるわよ。下手したら、将棋倒しで怪我人とか出るかも」


 「しかし、午後の部の整理券はまだ作っていませんので、このまま並んでおられてもですね…」


 「だったら、今すぐ作ってください。

  それで、今の列の続きで配付するんです。そうすれば、みんな大人しく待ってます。この人達みんなトークショー目当てでここに来てるの、わからないんですか!?」


 ちょいちょい、と服の裾が引かれた。ふと見ると、翼が不安そうな顔で見上げてた。

 「お母さん、やめようよ、こわいよ」


 気の弱い翼らしい。けど、そうはいかないの。

 「あのね翼、言わなきゃいけない時ってあるの。これ言っとかないと、一生後悔するから」



 結局、係員は折れて、少しして整理券を配り始めた。

 最初からそうすりゃいいのよ。

 さて、サインを貰うための本を…。あれ? ない。もしかして、売れた分の補充してないの!?

 「あの、セブン関連の本が全然ないんですけど…」


 「ああ、売れちゃったんですね」

 おいおい、それはだめでしょ。

 「あの、サインもらうには本買わなきゃならないんですよね? それなのに本がないってどういうことなんでしょう?」


 「えっと、その…」


 「本がないなら、この辺のクリアファイルでもいいですか?」


 「あの…本を買っていただかないと…」


 「だから、本がないんでしょ? どうすればいいんですか?」


 「…クリアファイルでいいです…」


 結局、セブン関連は何もなかったので、ウルトラマンのクリアファイルで妥協するしかなかった。むぅ…。





 そして、午後のトークショー。森次さん達の方がこなれてて面白かった。

 トークショーが終わって、サイン会。左手前からダン、アンヌ、アマギの順で並んでる。

 あたしが森次さんと握手して、翼の番。

 「なんだよ、放せよ」

と声がした。

 え? と思って見てみると、森次さんが握手したままの翼を引き寄せている。

 これは、ツーショット写真を撮らせてくれるんだ! ツーショット写真はNGって建前だから、翼が手を放してくれなくてもたついてるって体裁にして。なんてサービス! あたしにもしてほしかった!

 すかさず写真を撮り、手早く丁重にお礼を言った。あたしも…とは言えなかった。自分の良識がうらめしい。


 そして、ひし美さんとの握手を終え、古谷さんと握手をしていると、また隣から会話が聞こえてきた。

 「君、小さいのにセブン見てくれてるの?」


 「俺、セブンは怖いから苦手なんだ」



 「え!? “俺”なの!?」


 どうやらひし美さんは、翼を女の子だと思ってたみたい。翼、女顔だからなぁ。

 しかし、出演者の前で、堂々と「苦手」とか言っちゃうか、翼。

 あたしは、ウルトラマンの中味(古谷さん)のサイン用に、前回のウルトラマンの本を持ってきてたので、そこにサインをもらった。さすがに翼も、古谷さんのところでは何も起こらなかった。




 う~ん。翼みたいな小学生がこういうとこ来るのが珍しいってのはわかるけど、ほかにも同年代の子、いるよね。

 見てた限りじゃ、森次さんのサービスも翼だけだったし、なんなんだろう? 得な奴だな~、翼ってば。あたしもあやかりたい。




 「でねでね、ダンが翼のこと引っ張り寄せて、“なんだよ、放せよ”って…」

 夜、興奮したあたしが天さんに事細かに説明したのは言うまでもない。

宮内 洋

 仮面ライダーV3(風見志郎)アオレンジャー(新命 明)、ジャッカー電撃隊行動隊長ビッグワン(番場荘吉)快傑ズバット(早川 健)を歴任した特撮ヒーロー界の東の横綱。

 特に早川健の「日本じゃあ二番目だ」は、珠玉。

 後に、「特警ウインスペクター」「特救指令ソルブレイン」の正木本部長や「超力戦隊オーレンジャー」の三浦参謀長など、司令官役も務めている。

 ちなみに、西の横綱は伴大介(キカイダー(ジロー)イナズマン(渡 五郎)火忍キャプター7(出雲大介)、2代目バトルコサック(神 誠))。


中屋敷鉄也

 仮面ライダーのスーツアクターを、V3,X、ストロンガー、スカイ、スーパー1と歴任した大御所。

 梓自身は一緒に仕事をしたことはないが、お世話になっていた先輩の陣中見舞いに行った際、「これ、誰だかわかるか?」と紹介された。

 超舞い上がった梓は、持っていたカメラでツーショット写真を撮らせてもらったが、その際、撮ってくれた別の先輩から「梓ちゃん、顔真っ赤だよ♪」とからかわれた。だって、憧れだったんだもの。


ダイレンジャーの5人

 「五星戦隊ダイレンジャー」の変身前を演じた5人が、番組終了後、フェアウェルパーティーなるトークショーに出演した。梓は行く予定はなかったが、たまたま行けなくなった友人のチケットを買い取る形で参加することに。実は、この時偶然席が前後に隣接したことが「FALL IN LOVE」1話で書いている義幸(元カレ)と付き合う切っ掛け。




 今にして思うと、翼が女の子に見えたから、小学生の女の子がウルトラのイベントに嬉々として来るのは珍しいってことでサービスしてもらえたのかもしれません。

 ついこの前まで、女の子に見えたもんな~。

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