episode 3
「お前だな特待生っていうのは!」
唐突に後ろから声をかけられた。
振り返るとそこには身長190cmほどの筋骨隆々の男が立っていた。
飛鳥の身長は170cm後半で見た目は痩せ気味である(実際は引き締まっている)。
「そうだお前のことを言っている。教官殿に対人戦で勝ったらしいな?その実力本当かどうか今ここで試してやる!」
そういって彼は異能力を発現させた。
彼の両腕が光るとまるでゴリラのような腕に変わっていた。
「俺の異能力は変化系統。その名も[超腕]だ!」
飛鳥はため息をついた。この学校は異能力を正しく使うことを目的としている。
そのため、校内における異能力を用いた戦闘には数々の規則が存在する。その中の一つに許可のない私闘に異能力を使ってはならないとある。異能力者はいわば国家戦力だ。
将来国の役に立つ存在になるものが多い。そのためケガなどで使い物にならなくなってしまっては痛手となる。(そのため常駐の治癒特化の異能力者がいる。)
(この馬鹿は見た目通り脳筋なのか。入学式いきなり規則を破るなんて。)
「ん?お前もはやく異能力を発現しろ。お前の異能力がここでやっていけるか試してやると言っているのだ。ありがたく思え。」
そのうえ自己中なようだ。相手の気持ちも考えず自分の考えを押し付ける。飛鳥の苦手なタイプだ。
「俺が異能力を使う理由がない。そもそも規則で私闘は禁じられているだろう。入学初日に退学など俺は勘弁だ。」
「ふん!怖気づいたか!お互いが合意の場合のみ認められてるではないか!そんなことを理由に逃げるのか!」
「それについても教官立会いの下に認めると書いてあろうが。まず、なぜにお前が俺を試す必要があるというのだ。そんな権利お前にはないだろ!入学式に遅れて罰を食らうなんて俺はいやだからな。先に行かせてもらう!」
そう言って飛鳥は名も知らない男子生徒に背を向け歩き出す。
ここ第一高校はエリート学校である。入学した直後の自分はエリートだと思っているであろう彼のことを飛鳥は見誤っていた。
「たかが教官に勝っただけの落ちこぼれが!入試試験最下位だったゴミのくせに...。俺様を舐めるんじゃねぇ!」
男子生徒は背を向けた飛鳥に走り寄りその腕を振り下ろそうとした。
(なっ...!さすがに攻撃までしかける馬鹿だとは思わなかったぞ。どうするこの距離では俺の[心眼]は間に合わない。奥の手を使うしかないのか?だがあれがバレれば下手したらそのまま軍からのお呼び出しの可能性も...。しかたない...。)




