決意
俺は、ガナンの気迫に負けて怖ず怖ずと言う。
「もし、呪いのアーティファクトで王子が倒れたとしたらそれは暗殺のためだろう。アーティファクトは、古の時代の遺産だし力ある者にしか従わないからな。と言うことは、敵に少なくともアーティファクトを使えるくらいの強者が1人は確実に居ることになる。とりあえず、理解したか?」
「あぁ、それがどうしたんだ?」
少し考えてから、ガナンに言う。
「そんな強者が、何でアーティファクトを使ってまで王子を殺そうとしたと思う?」
「………いや、俺には分からない。」
大地は、唇を噛みイライラしたように言う。
「たぶん、そいつは実力はあっても経験が足りなかったんだ。人を殺せない強者って事さ。」
「お前、何か知ってんのか?」
真剣に、こちらを見つめる。俺が、いきなり不機嫌になったから戸惑いつつだが。
「異世界人……。」
俺が呟くと、やっと理解したようである。
「でも、それってやばくないか?」
「あぁ、いくらお前の息子でも奴らが殺す気になったら……。赤子をひねるように、あっさり倒されるだろうさ。訂正、この際ハッキリ言うが瞬殺は確定だ。たぶん、骨さえ残らない。」
ガナンは、事の大きさに青ざめる。
「話を戻すぞ。」
「おっ、おう……」
何とか正気に戻り、話を聞く姿勢になる。
「王子の事は置いといてだ。本題は、お前の息子だからな。さっき言ったように、薬を作っても治りはしない。せいぜい時間を、何年かのばすだけだ。だから、たいして意味は無い。」
「なら、薬を飲まし続ければ……」
「甘い!薬ってのは、時間がたつと効果が無くなるんだよ。逆に、身体を壊すぞ。」
怒ったように注意する。
「なら、毎回素材を集めて薬を作れば……」
「俺の話、ちゃんと聞いてたか?アーティファクトを、作るための神様級の素材がそんな簡単に手に入る分けねぇだろ。」
ため息交じりに言う。
「お前は、何が言いたいんだ。」
「つまりだ、薬を飲んでも王子は回復しない。その責任は、誰が取るんだ?」
真剣に、ガナンを見て言う。
「それは、医者に決まってるだろう。」
「ガナン、気付よ。ようは、お前の息子が目障りだからこの仕事を押し付けたんだろ?」
ガックリと言う。ガナンは、首を傾げる。
「まぁいい。もしだ、医者が素材が偽物だったなんて言ったらどうするんだ?それを、貴族連中が後押ししたら?」
口をぱくぱくさせるガナン。だよな?
「けど、素材を見せれば。」
「馬鹿だな、薬を作った後にか?」
ガナンは、ハッとして大地を見る。
「薬を作るって事は、あちらに素材が渡る事を意味するんだぜ?」
ため息交じりに、ガナンを見て言う。
「そんな、じゃあ息子は……。」
「あぁ、苦労して素材を集めたのに殺される。」
お茶を飲みながら言う。
「大地、どうにか出来ないのか?」
「さぁな、今のところは思いつかん。」
そう言ってから、苦々しく言う。
「けど、そうだな。もし最悪の事態になったら、俺も覚悟してなりふり構わず動いてやるよ。」
「本当か?済まない、危険な目に巻き込む…。」
「はいはい、どんと任せろ。」
そう呟くと、その場で別れるのだった。