ガナンの頼み
待たせたな。といって、手を振るガナンを見て俺は少し笑みを浮かべる。
「気にしてねぇよ。」
「それにしても、ギルドマスターが凄い表情だったけどあれはお前のせいか?」
すると、とぼけるように言う。
「何の事やらだな。」
「まぁ、詮索するつもりはねぇけど。」
肩をくすめて言う。物わかりの良い奴だ。
「さて、このまんまじゃギルド登録以前の問題なんだよなぁ……。いっそう、出て行くかな。」
「そっか、折角知り合えたのになぁ……。」
残念そうに言う。2人歩きながら世間話して、お店に入って行く。
「これは、オークの肉?」
「よく分かったな!美味いだろう。」
「あぁ、とても美味しいよ。」
思わず笑顔で言う。お店のお客さんも、旨そうに食べている大地を見て同じのを頼む人が続出する。更に、女性たちもおずおずと同じのを頼む。
この料理、見た目のわりに魔物の肉だから少し高めなんだけどな……。まぁ、美味しいからな。
「それで、お前さんに少し頼みが有るんだ。」
「……内容によるかな。」
俺は、思わずガナンを見る。ガナンは、Cランク冒険者だ。本来なら、ベテラン冒険者であり俺なんかに頼みなんて有るはず無い。
「あぁ、そうだよな。」
「まぁ、話してみろよ。」
優しい笑みで、よほどの事が無い限り断らないと小さい声で告げる。涙ぐむガナン。
「実は、俺の息子は王宮で騎士をやっているんだが。王子の守護騎士に、任命されて最初の命令が王子の病気を治すためその材料を集めて来ることだったんだ。」
なるほど……。それだけで、察してしまった。
「息子さんは、何て言ってんだ。」
「それが、1人で危険地帯に行くつもりらしい。でも、それじゃあ息子はたぶん……。」
死ぬだろうな……。
「頭の痛い話だな。でっ、もう行ったのか?」
「明日あたりに、家を出ると言ってた。俺は、お前以上に強い奴は知らねぇ。だから、力を貸してくれ!俺のために、頼む!頼む!」
頭を下げるガナンに、優しい表情で言う。
「頭を上げろよ。それより、材料ってなんだ。」
「危険地帯である、カパソ砂漠で咲く魔性花。それと、魔物の森の守護神龍の抜け落ちた鱗。同じく、魔物の森の聖樹の折れた枝。そして、聖樹と神龍の守りし神の子の鮮血。後は、奈落の谷にしかはえない守り草が必要だ。」
「どれも、アーティファクトを作るための神様級の素材じゃんかよ。一部、分からんけど。もしかして、その王子は呪われしアーティファクトに触れたりしてないよな。あれは、強力かつ厄介な術式の呪いだからもしも薬を作っても治らないぞ。大賢者や、神聖級の聖職者ならどうにか出来るだろうけど……。」
思わず、表情を曇らせる。
「あいつらは、金がかかるから出来ないらしい。おかしな話だよな……?」
俺は、嫌な予感がして思った事を口走る。
「もしかして、お前の息子をはめ殺すつもりなのかもしれないな。」
「なんだと!」
俺は、ハッとして口を閉じる。
「教えてくれ、お前の予想を。たぶん、間違っちゃいないと思うんだ。だから……」
俺は、戸惑う。もし、俺の予想が正しければ材料を集めても集めなくてもガナンの息子の運命は………。言うべきだと解るが、なかなか口が開けない。ガナンは、真剣にこちらを見ていた。