森の外へ
困った……。この姿で、外に出るとなると絶対トラブルが起こる。ため息を漏らして、ペタペタと手で顔を触り考える。
「大地よ、ついにこの時が来たな。」
「ん?」
「お前の旅立ちの日だ。」
心配そうに言う。我が子を送る、親の気持ちなのだろうか?でも、嬉しかった。
「そうだな、2人とも行って来るよ。何かあったら、どちらか呼ぶからそん時はよろしくな。」
森を歩くこと数日……。やっと、森の外に出られる。さて、まずは町に行くかな。アルファから、ある程度のお金は貰ってるけど自分で稼ぐ必要があるだろう。となると、冒険者ギルドに行ってからご飯食べて明日から依頼を受ければ良いかな。
冒険者ギルドに入ると、たくさんの人の視線がこちらに突き刺さる。うーん、行きにくいな。
ため息を漏らして、受け付けの方へ歩く。
「おいガキ、ここはおまえのような奴が来るところでは無い。帰った方が、良いと思うぞ。」
親切な冒険者が、俺を心配そうに見て言う。
「心配ありがとな。でも、稼ぐ必要があってさ。大丈夫だ、ある程度の実力は持ってるし。」
すると、ニヤニヤしながら10人グループのパーティーがこちらに来る。新人潰しだ……。
「へぇー、ならちょいと相手してくれるか?」
周りは、俺達から距離をとり楽しそうに見ている。ベテラン冒険者達は、絡んだ男達を哀れな目で見ている。うん、そうだよな。
俺も、哀れな目で見る。基本相手と向き合えば、だいたいどの程度の実力があるが分かるものなんだけどな。実力を測れないくらい弱いのか……。
男達は、自分の武器に手をかける。俺は、ため息交じりに男達を見て最後の忠告をする。
「本当に、良いんだな?俺は、基本ケガしても責任は取らないし逆恨みもごめんなんだけど。」
「はんっ、今更びびったのか?」
「いいや。ただやっぱり、厄介事に巻き込まれたなと思ってさ。気にせず来いよ。」
構えることもせずに言う。その態度に、男達はプチンと切れるとかかってくる。うん、遅いな。そんなことを思いつつ、最初の男の攻撃をポケットに手を入れながらわずかに身体をそらすだけで躱す。うーん、上手く手加減出来るかなぁ。
ため息を漏らして、男達の遅い攻撃を必要最低限の動きと体力だけで躱していく。こいつら、パーティーランクは、Dランクくらいか?
体力が切れて、ギルドの床に転がる馬鹿な男達を一瞥すると受け付けに向かって歩き出す。
「なるほどね。あなた、いったい何者なのかしらん。教えて欲しいのだけど。」
その声に振り向くと、ワイルドなおっさん……訂正、おかまのおっさんが立っていた。
ワイルドで、鍛えられた筋肉が目を引く。ハゲで黒く日焼けした肌。そして、かけられたサングラスを見れば格好いいんだけど……。
内股で、女言葉を話すのを見てゲッソリくる。
「ギルドマスター!」
受付嬢が、驚いて頭を下げる。嘘ぉー、これがギルドマスター……。うん、大丈夫なはずだ。
「みんな、ご機嫌よう。」
ハートマークが、付きそうな感じで言う。
「えっと……、何者とか言われてもな。」
何とか我に返り、ハッキリと言う。
「そう、私としては有望な人が冒険者になるのは歓迎したいところだけど……。」
「あー、もし無理なら別の稼ぎ方を探すからいいよ。俺も、迷惑をかけたい訳じゃないしな。」
少し考えてから、気づかうように言う。周りの冒険者は、そんな少年を悪い奴ではないと思った。
「なぁ、ギルマス。俺は、こいつが悪い奴には見えねぇんだが。入れても良いんじゃねぇか?」
「そう言われてもね。私としては、入れたいのよん?でも、ギルドマスターとして不安なのよ。」
ゴーン ゴーン ゴーン 17時の鐘が鳴る。
「あっ、すまん。俺は、ここに真っ先に来たから宿を取ってないんだ。ここらで、失礼するな。」
「おう。そうだ、こっから南に50メートル行くと新人にとって泊まりやすい宿がある。精霊の宿り木って宿だ。飯は多くて、安く寝る場所も有る。水浴びも出来るしな。」
俺は、足を止めて考えると冒険者の男に笑顔で感謝の気持ちを伝えるべく口を開く。
「おっさん、ありがとな。」
「おっさんじゃねえ!俺は、Cランク冒険者ガナンだ。何かあれば、手を貸してやるよ。」
「あぁ、そん時はよろしくな。」
そう言うと、足早に冒険者ギルドを出て行く。
「あっ、名前を聞き忘れた。」
ガナンは、思い出すように呟くのだった。