契約と恩恵
えっと、どうするべきだろうか……。
「アルファは、龍神なんだよな?」
「そうだ、やはり駄目なのか?」
契約とは、使い魔と術者が魔力によって繋がる事を意味する。だが、いくつかの条件をみたさないと契約は出来ないのである。
1. 術者が使い魔の魔力を受け止められる事。
2. 魂の器が、使い魔より大きい事。
3. そして、使い魔の恩恵を受ける事。
大きくこの3つだ。そして、考えてみろ!人間ごときが、神様の魔力を受け止められる訳が無い!2番目も、神様より魂の器が大きい訳ないだろ!しかも、3番目!神様の恩恵とか、恐れ多いっての!もう駄目だ、疲れてきた……。ため息。
「大丈夫だ!大地なら出来る。」
「人の心を読むな!と言うか、その根拠は何処から出て来るんだよ……。」
「龍神としての、私の本能がそう言っている。」
キリッと言い放つアルファを素手で殴る。
「グホッ……。そもそも、龍神に素手でダメージを与えてる時点で人間の範囲を大きく離れていると思うのだが。まぁ、いいか。」
「人間の範囲を離れてても、神様には届いてないはずだ。だから、諦めろ……。」
「………。」
少し、残念そうに木のそばに寝転ぶ。
「はぁ……。」
ため息を漏らして、アルファの隣に腰をおろすと木漏れ日が気持ち良くってうとうとしてくる。
「………我、汝に契約を求む。我が求めに、答えるならば大きな恩恵をさずけ力となろう。」
大きな魔法陣に、驚いて起き上がる。
「アルファ、無理だって……。」
「いや、後はお前が答えるだけで契約完了だ。」
大地は、息を切らしつつ仕方なく答える。
「我、汝の呼びかけに答える者なり。汝の恩恵を受け入れ、ここに正式な契約を認める。」
大きな力が、体に入ってくる感覚に思わず悲鳴をあげて悶える。まぁ、仕方ないだろう。何故ならば、魂の器を力技で広げているのと同じなのだから。静かな森に、大地の悲鳴だけが響いた。
「やはり、耐えきったか……。」
悲鳴の消えた森に、静かなアルファの声がポツリと響いて。生命の木は、気を失った大地を癒そうと輝きを増す。しばらくすると、大地は光に包まれる。光が消えると、15歳前後の姿になった大地が現れる。アルファは、それを見てから言う。
「お前、ちゃっかり契約しおって。危なかったぞ!大地は、まだまだ子供だし体に負担がかかりやすい。1歩間違えれば、死んでたのだぞ!」
すると、生命の木から1人の青年が現れる。
「それでも、契約すべきだと思った。なんせ、この聖域に入れる人間だよ?神王の作った、聖域に彼は入って来たんだ。意味は、分かるよね?」
アルファトメデスは、知るか!とばかりに青年を睨む。いや、意味は理解している。認めたくないのだ。彼が、神王の生まれ変わりだなんて。
「こいつは、人間だ。神では無い、無理をさせるのはこの私が許さないぞセフィロト。」
「分かってるよ。僕だって、彼を傷つけたくは無いさ。これでも、彼のことは気に入っているんたよ。信じられないかも知れないけどね。」
困った表情で、セフィロトは笑うと大地を見つめる。まだ痛むのか、ときどき小さく呻き辛そうな表情を浮かべる幼さの残る少年の顔を……。
次の日の朝。
「……んっ。」
「大丈夫か?辛くは無いか?」
「辛くは無いけど……。」
キョロキョロと周りを見る。そして、自分の手を見て言葉を無くす。慌てて水をくみ、桶の中をのぞく。そこに映るのは、まだ幼さの残る15歳前後の少年。嘘だろ……。
「何が起きたんだよ!」
「さて、それでは説明する前に……。」
そう言うと、セフィロトを睨みつける。
「初めまして、生命の木の守護神セフィロトだよ。今回は、謝るために来たんだ。」
「謝るためにって?」
困惑したように言う。
「うん、君の今の姿について。僕が、アルファと君の契約に割り込んで同時に契約をさせたからなんだ。僕の恩恵は、不老不死と若返りだから。」
なっ!?思わず、あんぐりとして固まってしまう。そして、機械音が聞こえてきそうな動きでギギギギッとアルファの方を見る。
「私の恩恵は、全知全能と痛覚無効だ。」
なんだ、このチートな恩恵の数々は……。
「通常、1つの使い魔に1つ持ってるはずじゃないのか?何で、こうなるんだ。」
「「私(僕)達が、神様だから。」」
見事にハモって言う。マジなのか……。