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異世界最強の冒険者  作者: 隣の黒猫さん
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ジェノイア

クリフォトは、笑みを浮かべ大地を見つめる。


「貴方が、知る必要は無いわ。どうせ、ジェノイア様に喰われる貴方にはね。」


「いちおう言っておくが、俺はジェノイアに喰われるつもりは無いし身体を渡すつもりも無い。」


真剣に、クリフォトを見てから言う。


大地の、腹のあたりから血が流れている。


「クリフォト、早く大地の傷を治さないとまずい。とりあえず、退いてくれるか。」


「嫌よ。このまま、彼を弱らせればジェノイア様は必ず動きだすわ。きっと、お喜びになる。」


その瞳に、狂喜が浮かぶ……。


「ベルモ、話し合いは無意味だ。今のクリフォトは、ちゃんと話を聞いてるようで聞いてない。」


身体の中で、ジェノイアが喜びに笑う気配がしてため息をつく。大地は、心の中で謝罪をしながらセフィロトとアルファの契約を一方的に解除してベルモの近くに魔法を設置する。


契約を解除する意味は、いろんな意味で危険なのだが2人を堕天させる訳にはいかない。


契約を解除したと言うことは、今の大地は不老不死や痛覚無効の恩恵が消えるのを意味する。


「……。」


「さぁ、お目覚めください。」


クリフォトが、狂った笑みで言う。


大地は、ベルモにバレないように痛みに耐え悲鳴を押し殺す。ジェノイアが、頭の中に話し掛けてきて頭痛に意識を奪われそうになる。


「おい!しっかりしろ……。」


それに気付くベルモ。大地は、考える。自分が死ねば、ジェノイアは喜んで身体を奪うであろう。ジェノイアに、身体を奪われる事無く散る方法は無いだろうか?どのみち、この傷では、後数時間もてば良い方だろう……それならばと考える。


「邪魔をしないで!」


クリフォトが、ベルモに向かって攻撃をする。クリフォトから、解放された大地は勢いよく立ち上がりベルモの近くの魔法を発動させる。


ベルモの周りに、聖域と同じ結界が出来る。


「ベルモは、この件には関係ない。これ以上、害するというならこの身体を灰に変えてでもジェノイアと共倒れするぞ?まぁ、それを神王が許すかどうかはさておきだけど止めに来ない所をみると俺の判断は間違っていないんだろうな。」


「出来るはずが無い。なら、やってみたら?」


俺は、ニコッと笑い本来なら禁忌である術式を唱える。クリフォトは、何の呪文かをさとり悲鳴じみた声で俺を止めようとする。


「あなた、本気で自殺するつもり!?」


「どうだろうな?」


俺の中には、神王の血がある。それが、どう結果に左右されるかなんて俺には分からない。だけどな……。さて、俺と一緒に地獄へ落ちようか。


ジェノイアが、身体の中で暴れ出し詠唱が途絶える。死にたくないと、狂ったように叫び身体をよこせと大地の精神を穢れさせようとする。


「……ぐぅっ!」


そこで、ベルモは大地がセフィロト達と契約を解除している事に気付く。


「大地!!」


大地の身体から、どす黒いオーラが出てくる。


「まずい、ジェノイアが本気で身体を奪いに来てる。大地、しっかりしろ!」


「ベルモ、今の俺は死ぬことが出来る。もし、このままジェノイアに取り込まれたら俺を殺してくれ。セフィロトから、力を分けて貰っているお前なら俺を殺せるはずだ。」


「無理だ……。医者として、俺はおまえに勝手ながら忠誠を誓った。俺は、主を殺す気は無い。」


「………。そっか、また迷惑かけるなぁ……。怒ると思うか?セフィロト達。」


「激怒するだろうな。でも、お前は悪くない。」


真剣に、言って大地のもとへ歩く。


「悪いのは、こんな運命をお前に押し付けたジェノイアと今の神王だ。だから、泣くなよ。」


そこで、初めて大地は弱気な声で言う。


「もう、のまれる。お願いだから、この場から去ってくれ。じゃないと、俺がベルモを殺してしまう。それだけは、嫌だ……嫌なんだよ。」


「断る。例え、お前に殺されようと俺は恨まねぇしそれが運命ならそれで良い。」


大地は、悲しみに後ろに後退る。そして、ジェノイアにのまれてしまった。




☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆




セフィロトは、焦っていた。いきなり、大地との契約が解除されたのだ。それは、つまり大地に何かあって自分達を守るために契約を解除したのだろうと経験から理解しているからである。


「大地……。いったい、何処に居るんだい。」

 

契約が解除された今、セフィロト達と大地の繋がりも切れてしまっている。だから、気配を感じ取れない。セフィロトは、ベルモの気配が弱くなったのに気付く。ベルモに、何かあったのだろう。


「ベルモ……!?」


セフィロトは、ベルモのもとへ急ぐそしてその光景を見て言葉を失ってしまった。




☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆




どす黒いオーラを纏い、セフィロトをみつめるジェノイア。その表情は、とても嬉しそうだ。


「やっと、手に入れることが出来た。」


近くには、血を流し辛そうに地面に横たわるベルモがいた。セフィロトは、悲しみに顔をそらしそうになる。そして、クリフォトが居るのに気付きどうしてこうなったかを察する。


「大地、少し痛いかもしれないけど我慢してね。アルファ、聖域は配下に任せてこちらを手伝って……。ベルモ、よく頑張ったね。」


そう言うと、ベルモの傷を治す。


「それより、大地が……。」


「分かってる。ハッキリ言って、押さえ込めるか不安ではあるけど……いけるよねアルファ。」


アルファは、大地を心配そうに見ていたが頷いてから魔力を纏う。


ジェノイアは、そんな2人を見て面倒そうにクリフォトを見る。クリフォトは、セフィロト達を見て薄く笑うと夜の森に消える。ジェノイアが、押さえ込まれる予感がしたので撤退したのだ。


今の大地は、セフィロト達によって力を封じ込められている。ならば、その封印をもっと厳しいものにして一気に押さえ込めるつもりだ。


ジェノイアは、それに気付き激怒するがその身体は本来なら大地のもの。どうすることも出来ず、弱まった力では神で有る2人に勝てるわけも無く深い眠りにつく。崩れ落ちる、大地の身体をセフィロトはささえため息をつく。


「これはきつい……。」


「そうだな……。それより、大地の傷を。」


すると、クリフォトがまた出て来る。


「あの女は、大地を森に連れ出す罠だったのにこんなに簡単にはまるだなんて。こんなのが、主なんてあなたも苦労するわね。」


「クリフォト、ジェノイアを利用するのはやめてくれないかな。ジェノイアは、君にとっても良くない存在なはずでしょ?」


怒ったように、セフィロトはクリフォトに言う。


「そうね。それにしても、失敗だったわぁ。ジェノイアの力は素晴らしいけど器が未熟だなんてがっかり。いいえ、未熟と言うより不完全。」


「何が言いたいの?」


「この子、神の血によってもっと強くなるはずなのに弱いままだわ。何を隠してるの?」


「僕らは、大地に神としての覚醒をしてほしくない。神の力は、時に心さえも壊してしまうから。彼には、幸せで居てほしいそれだけだよ。」


ベルモは、傷を確認しようとシャツをめくり息を呑む。大地の横腹あたりが少し黒く皮膚の色が変わっていたからだ。セフィロト達も、思わず青ざめる。クリフォトだけが、笑みを浮かべ言う。


「どうやら、神の血を封印したことがあだになったわね。ジェノイアは、また目覚めるために呪いをかけたみたい。神の血があれば、その程度の呪いははじけたというのに。」


「そんな……。」


「セフィロト、お前だけのせいでは無い。」


大地は、目を覚まし傷の痛みに表情をこわばらせる。セフィロトは、強権実行とばかりに契約文を大地になげかける。大地は、戸惑いはじこうとするがアルファも契約文を捧げてきたので隙が出来る。ちゃっかり、ベルモも契約文を言いだす。


強権実行。本来は、強い権力を振りかざして実行させることを言うのだが。ここでは、強権実行とは強制的に権利を無視して実行することだ。


「ちょっ、待て!というか、ベルモまでやめろ!本当に、今は無理だっ………」


おかげで、傷は治った。そのせいで、気絶してしまったが。セフィロトは、ベルモに大地を預けてクリフォトを少しだけ警戒して見る。


エリスの呪いを、すぐさま解いてその場を去ろうとするクリフォト。


「また会いましょう。」


「出来れば、会いたくないな。」 



そう言って、別々の方向へ去るのだった。

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