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異世界最強の冒険者  作者: 隣の黒猫さん
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声を失った少女

その後、2人は荷台に乗りベルモは眠くなったらしく同じく荷台で寝ている。大地は、馬に乗ると手綱を持って馬車を動かす。景色を楽しみながらも、馬に負担をかけないよう気を配る。


「夕方になると寒いな……。」


アイテムウィンドウから、いつも着ているお気に入りのコートを出して馬を操作しながら器用に着る。ちなみに、アイテムウィンドウは他人には見えないので気を付け必要がある。


村が見えた……。


馬車を、木の近くに止めて声をかける。


「おい、着いたぞ。」


後ろを振り向かずに言う。馬車から、馬をはずし木に手綱をしっかり巻きつける。


「うーん、よく寝たぁ~。」


伸びをしてベルモが降りてくる。


「そもそも、ゴトゴトと音や振動があるのによく眠れるな。俺は、絶対に無理だ。」


馬を洗いながら、呆れたように言う大地。


「まぁ、慣れだよ慣れ。」


「そうか。それより、バウは結婚の報告をしてこい。俺らは、ここでいろいろしとくからさ。」


気をつかうように、バウ達に言う。


「分かりました。」


2人は、去って行く。ベルモは、荷物をまとめるために馬車の荷台の中に入る。


大地は、それを見送り馬を移動させてから餌を与える。しばらくすると、後ろから数人の足音がする。戻って来たか……。


「大地さん、ベルモさんはどこですか?」


「俺なら、ここだ。」


ベルモは、馬車の荷台から降りて来る。すると、女性陣から黄色い声が聞こえる。俺も、手を止めて振り向くと沈黙……。訂正、女性陣の殆どが失神してました。何故に!


「あの話したいんですけど、大地さんは忙しいですか?村長達を連れて来たのですが。」


「少し、待ってくれ。手を洗うからさ。」


暢気に笑って言う。そして、魔法で空気中の水を集めて手を洗う。ざわめく人々。実は、ポンポンと魔法を使っているがこの世界で1番少ないのが魔術師である。そのため、魔法ギルドは無い。


「お待たせ。でっ、この人の多さはなんだ?」 


「みんな、イケメンだって言ったら着いて来ちゃいました。あの、嫌でしたか……?」


「あまり、ジロジロ見られるのは好きじゃ無いんだけど。まぁ、フード被るから良いよ。」


フードを被り、腕を組んで近くの木に寄りかかると聞くためにバウを見る。女性陣から、残念そうな声が聞こえるが無視する。


「村長の、ゲンさん。異世界人で、とっても頼りになる人だから。ちなみに、隣が孫のエリスちゃんだよ。歳も近いだろうし、仲良くしてね。」


「……後で話がある、儂の家に来てくれんか。無理にとは、言わん…。お前の仲間も居て良い。」


「………分かった、する事が終わりしだいに家を訪ねよう。でっ、家は1番奥の少し大きい家か?」


ゲンは、頷くと戻って行った。


「さて、さっさと終わらせるかねぇ……。」


大地は、バタバタと動き出す。すると、エリスがお茶を持ってくる。気の利いた子だなと思う。


紙に、〖もし良かったら、飲んでください。〗と書いて俺に見せてくる。どうやら、しゃべることが出来ないみたいだ。目に魔力を集中させて、エリスの喉を見ると術式が見える。


これは……、声を無くしたのはこの術式で間違いないだろう。でも、何で術式を?


エリスは、恥ずかしそうに表情を赤らめる。


おっと、失礼すぎだな。


「お茶、ありがとう。」


エリスは、嬉しそうに笑うと去って行く。


「女の子を、じっと見つめるだなんて惚れたか?どうなんだ?お兄さんが、聞いてやるぞ。」


後ろから、ニヤニヤとベルモは見てバウ達は微笑ましい表情で見守っている。


「いや、何を誤解してるんだ?」


呆れたように、ため息をついてスタスタと馬具をかたずける。嘘は無いのにきずくベルモ。


「じゃあ、何でじっと見てたんだ?」


「術式が、喉元に見えたから見てただけだ。」


すると、残っていた周りの人とバウ達は大地を見る。大地は、馬具を洗いほして振り向く。


「たぶん、あれのせいで彼女はしゃべれない。あの術式は、8年前に廃れた術式だった。」


「君は、魔術に関して詳しいの!?」


「そもそも、俺自体も魔術師なんだから少しは詳しいに決まってるだろ。これでも、Aランク冒険者だし実力はギルマスからも認められてるぞ。」


ギルドカードを見せて、お茶を飲む。


「すっ、凄い!ベテラン冒険者だったんだ。」


「それで、答えられることなら全て話すけど。」


まぁ答えられない事なんて、アルファの恩恵のせいで殆ど無いんだけどな。コップを洗い、おぼんに戻す。そして、周りの反応を待つ。


「それでは聞こう、あの子の術式をお前さんは完全に解く事は出切るだろうか。」


「既に解析済みだ。いつでも、解除は可能だけど術者が生きているのならまた呪いをかけるぞ。」


真剣に、ゲンを見て言う。


「そうか、ならば解かぬ方が良いな。」


「その判断は、俺がして良いものじゃ無い。」


あくびをして、空を見る。


「うむ、考えさせてくれ……。」


「良いけど、解析したときに術者に俺の存在を知られた。黙っては、いないと思うけどな。」


「なっ、何て事をしてくれるんじゃ!」


「大丈夫、奴が狙うのは俺の魂だけだ。」


「おい、大丈夫じゃねぇだろ!」


黙って聞いていた、ベルモが怒る。


「ベルモ、どのみちあの女神は俺の魂を狙うよ。セフィロトを、自分のものにするために。」


「まっ、まさか……クリフォトなのか!」


ベルモは、思わず青ざめて震える。


生命の樹と邪悪の樹、2つの樹が根っ子で繋がっている絵でかかれる事もある。土の中にも樹があるのだ。地面の上に立つ樹が生命の樹セフィロト(善)、土の中の樹を邪悪の樹クリフォト(悪)と言う。この2つは、人間の善悪の意味を持つ。だからこそ、悪であるクリフォトは善であるセフィロトを欲しがる。それは、クリフォトの本能的な思考なので変えることも出来ない。セフィロトは、それを知っていたが気にも止めてなかった。何故なら、善悪のバランスがとれなくなったら自分達が存在出来なくなると知っていたからだ。


[まぁ、僕を得たところで共倒れするだけだ。でも彼女は、神から与えられし本能に支配されているからそれが理解出来ないんだよ。]


過去にクリフォトに襲われ、セフィロトに助けられた時にセフィロトが悲しそうに言ったのだ。


まったく、契約している以上は巻き込まれるとは思っていたけど何で今なんだ……。

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