不安多き旅立ち
遅くなりすぎました(;´Д`)
困った……、外に出るような依頼が全くない。
「なら、旅に出てその国のギルドで依頼を受ければ良いんじゃねぇか?大変だけどさ。」
ベルモが、後ろからアドバイスをする。
なるほどな、良いかもしれない。ギルドは、国の権力にくだることは無い。なぜなら、契約によって守られているためだ。そして、全国のギルドはマジックアイテムによって情報共有しているためどこのギルドでも同じ依頼や新しい依頼を受けることが出来るのである。
えっ、そんな事したらここのギルマスにばれるって?心配するな。(ドヤッ!)
それがだな、ギルドにも決まりがあって冒険者の個人情報や居場所は例えギルドマスターでも話してはいけないんだ。職権乱用で、飛ばされてしまうらしい。話した奴も、くびになるらしいし。ただ、国を脅かす事態の際だけ話して良いって法律もあるけど。とにかく国からも、ギルドからも守られているわけだ。さて、どこの国に行こうか。
俺は、ギルドのカフェでゆっくりお茶をしつつ考える。何と、ギルドの口座に金貨と銀貨が沢山入っていたのだ。そして、入れた主は国王陛下。薬草のお礼らしい。まぁ、少しだけ多いいがこんなものだろ。アルファから貰ったお金も殆どステータスウィンドウのボックスに入っているし。
と言うわけで、現在の俺は金には困って無い。ちなみにこの世界のお金は、全国共通なので例えるなら日本円をドルに変えたりということをしなくても良いって事だ。うん、楽で良いね。
「はい、これどうぞ。」
クッキーを持ってくる、受付嬢さん。
「頼んでないけど?」
「はい。わざわざ、ギルマスを見に行ってくれたお礼です。良かったら、食べてください。」
「なら、ありがたくいただくよ。」
そう言って、クッキーをコーヒーにつける。この世界のクッキーは、とにかく硬い!なので、コーヒーや紅茶につけて食べるのである。口の中に割って入れとけば、食べられない事は無いが口の中の水分をいっきに奪われるのでどの道飲み物は必要である。ザラッとした舌ざわりで、ほのかに甘い庶民達のお菓子だ。ちなみに、貴族のクッキーは材料が高級なだけでそこまで美味しくない。
まぁ、材料にも適した調理方法があるからな。
「お前、美味しそうに食べるよな。」
「まぁ、美味しいからな。」
子供の姿なので、周りの人から見たら最高の癒やしだろう。持ってきた受付嬢さんも、それを微笑ましそうに見つめていた。もぐもぐ。そして、その場にいた大人達はこう思った。
かっ、可愛い……。
本人は、クッキーに夢中で周りが見えてない。
こっちのクッキーも、美味しいけどあっちのクッキーの方が美味しいし食べたくなるな。
「ごちそうさま。」
子供らしい笑みで言う。周りの一部の人が、倒れたけど貧血かな?キョトンと周りを見る。
「やっ、やばい……鼻血が……。」
「だっ、誰が医者呼んで!」
ベルモは、大地を呆れた目で見て呟く。
「天然のキラースマルだな。」
「ん?何か言ったか?」
ベルモは、立ち上がりながら……
「いいや。さて、そろそろギルドを出るぞ。」
「えっ、依頼は見ていかないのか?」
「これ以上、被害者を出す訳にはいかないからな。まったく……。」
小さく呟き、ため息をつくベルモ。
「ごめん、聞こえないんだけど?」
「まぁ、なんだ……とにかく急いで出るぞ。」
「おう、分かった。」
ベルモの後ろを、遅れまいと走り出す大地。
ちなみに、これが理由でのちに『脳殺の天使』の通り名がつくのだがそれは別の話……。
「レスケス王国は、どうだ?おいらも、薬草を採りに行きたいし。街並みも、古くって綺麗なんだ。ちなみに、ご飯は激マズだけどな。」
「良いけど、王城の医者が抜けても良いのか?」
「あぁ、別に王城の医者はおいらだけじゃないからな。それに、王城はつまらないし。」
暢気に笑う。大地は、心配そうにベルモを見る。
「それよりだ、おいらとの契約の話だ。」
「だから、2人と契約してるんだぞ無理だって言ってるだろ?さすがに、辛いって。」
「なぁ、大地さんよ。」
「何だよ……。」
「2人と契約した時、お前の魂の器は力技ではあるがひろげられた。魂の器は、大きければ大きいほどたくさんの魂を受け入れる事が出来る。」
ニヤニヤと笑って、大地を見る。大地は、ハッとして青ざめる。こいつ、油断できねぇ……。
「でっ、でも契約する意味が無い。」
「あるさ。セフィロトは、森がない場所……海とかには長くは居られない。アルファは、あの森から出られない。となると、お前のめんどうは俺しか見てやれない。どうだ、意味があるだろう。」
「いや、1人でも大丈夫だって……。」
「お前、自分が何に狙われてるか覚えているか?あの、墜ちた神の子ジェノイアだぞ。」
ため息混じりに言う。そして、真剣な表情で大地を見つめて答えを待つ。しばしの沈黙……。
「あぁー、もう!分かったよ!」
「まったく……、世話のやけるお子様だぜ。」
「うるさいぞ!」
うわーん。と言う感じで、ショノーンとなる。
「ここでは、無理だから旅のしたくをして旅の途中で契約するぞ。逃げるなよ?」
「了解。でっ、俺のすることは?」
「身体を休めろ。お前、ジェノイアの力を使ったんだ。かなり怠いはずだろ……。」
あらら、隠してたのがバレたか。大地は、苦笑を浮かべる。ベルモは、プロの医者だ。このての、隠し事は簡単に見破られる。
「りょーかい。でも、あいつらが来る前に出たいからな。買い出しくらい、手伝うよ。」
「だから、大丈夫だ。馬車と食料を、少し買うだけだからな。その他は、旅の途中で買うつもりだ。馬車を買ったら、お前は寝とけ。」
「はいはい、分かったよ。」
「言っとくけどな、例えるならお前は重病患者なんだからな。病気じゃないけどな……。」
「このとうり、ピンピンしてるけどな。」
「お前も、気付いているんだろ……。おまえ、どんどん身体が弱くなってるんだぞ。」
「………。」
「まぁ、今は良いけどジェノイアは本気だぞ。」
「……何か、面倒だな……。」
「そうだな。おまえは、良い意味でも悪い意味でも好かれやすい。存在を知れば、手に入れたい奴らはたくさんいる。まぁ、させねぇけど。」
「………。」
これから、冒険者としていきていくのに力を削がれるのは痛いな。まだ身体に、意識を向けないと分からない程度だけど……不安だ……。
「そんな顔するな。お前のことは、おいら達がちゃんと守ってやるからな。それとも、おいら達じゃ不安か?これでも、戦える医者の称号はだてじゃ無いんだぜ?だから、今は頼ってくれ。」
優しく励ますように言うと馬車を買うために歩き出す。大地は、少し遅れながら追いかける。
「馬車は、買えたしお前はフードを被って寝とけ。あっ、馬車泥棒とかいるからもしいたら捕縛しといてくれ。じゃあ、買い出し行って来る。」
そのまま数時間……。
「ただいま。さて、行くぞ。そう言えば、お前は馬は乗れるか?もしかして……」
「乗れるけど。」
「なら、交代制で大丈夫だな。」
こうして、冒険者としては少し贅沢な気もするが旅が始まったのであった。大地は、冒険者としてどう成長するのだろうか。揺れる不安な心を、抱えつつも馬車は進む。目指すは、芸術の街レスケス王国。




