最初の出会い
森を彷徨うこと数時間。キレイな木を見つけ、そこに向かって歩き出す。たどり着くと、生命力溢れる美しい木がある。
「おおっ、キレイだ。」
思わず目を輝かせて言う。そして、木のそばにドラゴンが居るのに気付く。ドラゴンは、片目を開けて俺を一瞥すると目を閉じた。多分、俺が弱いと知ったからだろう。
俺は、ドラゴンの眠りの妨げにならないように心がけながら去ろうとする。
「まて、人間。いったいどこに行く。その弱さでは、魔物に殺されるぞ。」
振り向くと、ドラゴンが心配そうな表情でこちらを見つめていた。
「ここはお前達のすみかだ。俺の居場所じゃ無いからな。邪魔したな。」
笑顔で、その場から去ろうとする。するとドラゴンは、やれやれとばかりに俺の服をくわえて木の下まで連れて行く。思わず驚いてしまう。
「うおおっ!」
「若いのが変に気をつかうな。」
「これでも、俺は23歳……」
そんなの関係ないとばかりに俺をくわえて歩く。
「お前は、1人なのか?」
「今は1人だな。」
苦笑を浮かべ答える。
「お前の名は?」
「駿河 大地。」
「!?」
あれ、俺なんか変なこと言ったかな?ドラゴンの、金色の瞳と俺の目が合う。
「嘘では無いな……。」
ため息交じりに言う。
「その名字は、同郷の者しか話すなよ。」
「何でだ?」
「厄介事に、巻き込まれるぞ。」
それは嫌だな。わかったと頷く。それにしても、親切だな……。
「ただ私は、久しぶりにまともな会話が出来て嬉しいだけだ。迷惑か?」
シュン……。
面白くて、優しい奴だな……。
「いいや。何だかんだで、俺も楽しいから良いんだけど。それより、お前の名は?」
「私か?私の名は、龍神アルファトメデス。親しい者には、アルファと呼ばれている。」
「アルファトメデスかぁ~。格好良くって良い名だな。さすが龍神だ。」
本心からの言葉に、嬉しそうに笑うと言う。
「お前も、アルファと呼ぶことを許そう。」
「ありがとな。大切に、呼ばせて貰うよ。」
優しく笑いながら見上げる。
「さて、まずはこの世界の常識やら教えてやろう。どのみち、独り立ちはしないといけない。だから常識や魔法、武術をはじめとした知識を叩き込むぞ。さて、まずは武術!」
それから、月日は流れる……。
「あのさ、この森に来て何年目になるんだっけ?時間感覚が無くなってきたんだけど。」
「うむ、1500年はたってるはずだ。」
「はっ?」
思わず、聞き返す。
「言った通りだ。お前は、23+1500で1523年も生きている事になる。」
「……あのさ、面白く無い冗談なんだけど?」
「無論、冗談では無いし嘘でも無い。」
「………。何で、歳をとらないんだ?」
首を傾げる俺を、アルファが見つめて言う。
「その木のせいだ。それは、生命の木と言ってだな近くの者は歳をとらん。」
「なるほど。つまり、不老では無いんだな?」
頷くアルファ。俺は、ため息交じりに言う。
「良かった。」
「大地よ、私からお願いがあるのだが。」
「ん?」
キョトンとして、アルファを見上げる。
「私は、訳あってここから出ることが出来ない。だが、私も外の世界は気になる。」
「おう、それでお願いって?」
「私と、契約してくれないか?」
「はっ?」
思わず、キョトンとして固まってしまった。