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異世界最強の冒険者  作者: 隣の黒猫さん
16/28

悲しげな背中

俺達は、いったん別れる事にした。


「ドミア、俺が戻るまで王子をお願いしても良いか?現時点で、王子を1人にするのは不味い。」


すると、ドミアは頷いて留まる。


「分かったけど、無理だけはしないでね。」


「まぁ、努力する。今回は、相手が相手だし。」


苦笑すると、出て行った貴族達を思い出しため息をつく。さて、どんな手で俺を狙うのやら。


部屋を出てすぐに、複数の視線を感じる。1つは、殺意のかけらも無い。国王陛下の命令を受けている者だろう。他は殺意を殺しているが、技術がつたないのか分かりやすい。いや、この世界の平均を考えれば相当な手腕の持ち主なのだろ。


小さくため息をつき、スタスタと歩きながら無言で魔法を展開する。しかも、魔方陣が見えないように隠蔽の魔法を同時使用しながら。さてと、距離的には近くない。だが、徐々に近づいている。


長い廊下を出て、階段を降りようとしたときだった。ヒューンと音を立てて、矢が来る。また、足場の悪い所で来たな。その場で、軽くステップを踏んでかわす。まったく、登場が早過ぎるだろ。


なぁ、信次……。


信次が、次の矢を放つため構えている。しかもその矢には、魔力が込められており擦るだけでも命取りになるのは間違いなかった。


大地は、ため息をつき目を閉じる。国王の命令で動く者が、息を呑む音が聞こえるほど大地の心は静かでそして落ち着いていた。はぁ……。ため息を吐き出し、身体から力を抜くと目を開きコートの胸ポケットからカードを出そうとする。


すると、させるかとばかりに矢が放たれる。頭をめがけて……。キィイイン!カードのまま腕を振り、カードを矢の先っぽにあてて軌道をずらす。


「なぁ、信次……。お前、俺を舐めてんのか?」


ポツリと呟き、カードに魔力を込める。


そうだな、どうせならお前と同じ弓矢にするか。


刀の時とは違う、金色の美しい模様が浮かび上がる。そして、カードは弓の形になると大地の手におさままる。だが、矢が無い。弓に、魔力を込めて弓を引くと魔力で作られた矢が見える。


「さて、撃ち合おうか。」


指を離す。すると、既に放たれていた信次の矢とぶつかり信次の矢がへし折れる。


「くっ……。」


「さぁ、どんどん行こうか。」


魔力を込めて、弓を構える。


「俺の知ってるあいつは、こんなに強くなかった。お前は、大地の皮を被った化け物だ!」


「………っ!」


思わず動揺してしまい、魔力を込めて作った矢が砕ける。ハッとして、信次の矢を慌てて回避すると矢を放つ。狙いは、足もと……。


砂埃で、互いに姿が見えなくなる。大地は全力で階段を降りて、浮遊魔法を使い信次の居る廊下の手すりに着地すると驚いて振り向く信次に手刀を入れる。呻き声を上げて、信次は気を失った。


「今は、信じなくて良い。いつか、きっと…。」


悲しげに、ポツリと呟く。


暫く見てから、階段を降りて外の通路に進んで行った。その背中は、ひどく悲しそうで辛そうであった。王の命令を受けた男は、それを見て真剣に頷くと報告のためにその場を去った。


「行ったか……。」


ため息をつき、中庭を歩く。


「そこのガキ、止まりやがれ!」


おいおい、今度はチンピラかよ……。


「きさま、止まりやがれって言ってんだろ!」


「あのさ、急いでるんだ。邪魔しないでくれるか?」


静かな、とても静かな声で言う。


「ああん?ガキの癖に、生意気だな!」


次の瞬間、男達は空気を求めるように這いつくばる。喉を押さえ、顔を赤くしている。声が出せないので、命乞いすらも出来ない。


「今の俺は、もの凄く不機嫌だ。邪魔をするなら、命の保証は無い。理解したか?」


感情の無い、酷く冷たい声で告げる。男達、もの凄く頷いて助けて欲しいと訴えるように見る。


「なら、死ね……。」


男達は、苦しそうに暴れていたが力なく力尽きて地面に転がる。大地は一瞬だけ男達を殺すか迷ったが、どの道あとあと邪魔になるとおもったため早めにかたづけたのだ。


人を殺すのは、いつまでたっても慣れないものだな。気持ちが悪い…………。


そう思って、外へ向かうのだった。ちなみに、王の命令を受けた男は途中で戻って来ていた。


「やはり、彼は凄いな。だが、同時に甘い。」


「うるせぇーよ。」


男の方を見て、不機嫌を隠すこと無く言う。王の命令を受けた男は、驚いてこちらを見ている大地を見る。なるほど、心はともかく戦闘能力や知識それと本能的感覚などはあちらが上か。


「いつから、気づいてた?」


すると、悲しそうに笑みを浮かべて。


「秘密だ。」


と言うと、内門を飛び越えて外門へ向かって走って行ってしまう。男はため息をつき、報告のためにその場から立ち去るのだった。

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