問う者
ルクフォードは、驚いていた。そして、何より喜んでいた。何故なら、この国に自分より強い者は居ないと思っていたからだ。
「それで、ルクフォード様はどうしてここに?」
「おっと、そうだった。魔物の森の、素材を見て見たくて。とても、貴重なんだよ。僕でも、見たこと無いんだから。凄いねぇ。」
すると、ドミアが大地を見て何か言いたげにしている。大地は、その視線から逃げるように窓の外を見る。そして、ルクフォードはそれを見て思わず笑みをこぼした。なるほど………。
「どうやって、見つけたの?」
「その2つは、彼が持っていて貰いました。」
すると、ルクフォードはまた大地を見て言う。
「あの、聖域に入れるの?」
こいつ、何者だ……。そう思いつつも、首をかしげる。今度は、雰囲気も本気で作りながら。
「じゃあ、これは何処で?」
「あの、彼はしゃべりたくないので質問は…。」
大地を、気づかうように言う。
「あっ、ごめんごめん。でも、もし彼が聖域に入れるのなら……。彼は、人間じゃない。」
ドミアは、息を呑み大地を見る。いや、少し規格外だけど正真正銘の人間だぞ。どこかで、どこが少しだ!とツッコミが入った気がする。うん、気のせい気のせい。俺は、少し規格外なだけだ。
「彼は、人ですよ。かなり、強いですけれど。」
真剣に、大地をかばうように言う。
「そう、やっぱり強いんだ。まぁしかし、そうだよねぇ。僕の殺す気で放った、本気の魔法を無言魔法で周りに被害を出すこと無く弾いたあげく無効化するんだもん。化け物じみてる。」
「そんな言い方……!」
大地は小さくため息をつき、ドミアの場所へ行くとポンポンと軽くドミアの肩をたたき落ち着かせるようにフードの下で笑う。ドミアは、ハッとする。ルクフォードは、それを真剣に見ている。
「なるほどね。優しい化け物さんだね。」
「化け物じゃありません、大地君は人間です!」
大地は、頭を抱えた。のせられたな………。
「へぇ~、彼は大地って名前なんだ。」
ハッとして、俺を見る。俺は、やれやれとばかりに苦笑すると気にするなのジェスチャーをする。
「まぁ、僕も酷いこと言ったし名前だけでも知れたからもう問わないよ。ごめんね、2人とも。」
先ほどの、雰囲気を消してすまなさそうに言う。
「あの、薬が出来ました。」
王子に、薬を飲ませると目に光が戻るが辛そうである。ドミアは、心配そうに見ている。
「ドミア、僕は治ったの?」
「いいえ、時間を伸ばしただけです。」
「そう……。」
「なんだと貴様、私の薬が効かないと言うのかぁ。私は、天才なんだぞ!」
怒る。だが、ルクフォードもドミアと同じだった。すると、ドミアは大地を見てから言う。
「彼は、ああ見えて頭も良いんですよ。その彼が、言ったんです。僕は、彼を信じます。」
「その、土臭い平民が賢いだと?」
「えぇ。なんせ、親と知り合いで頼まれたからと言ってこんな危険な素材集めを手伝ってなおかつここまで守ってくれました。彼は、お人好しで気まぐれな可愛げの無い猫のような人です。そして、予言者でもあります。僕は、彼をだから信じます。彼は、命をかけて信じる価値がある。」
まっすぐに、放たれた言葉に王子とルクフォードの視線が大地に向かう。
「はぁー、命をかけるな馬鹿……。」
「大地君、言葉!」
「もういい、この仕事終わったら隠れるさ。」
「でも、ごめんなさい。」
ルクフォードは、彼の言葉に優しさを感じた。そして、彼を助けようと決めるのだった。




