奈落の谷への道のり
さて、奈落の谷に到着!とは言え、今日は離れた場所で休んで明日から向かうか。
「大地君、奈落の谷に行かないんですか?」
「あぁ、時間帯的にアウトだ。奈落の谷は、アンデット系の魔物が多い。そして、夜は活発だから行けば無駄な体力を使う。だから、日が昇ってから行こうと思う。それで、良いか?」
木に身体をあずけ、コーヒーを飲みつつ言う。
「はい。あの、何でそんなに詳しいんです。」
「秘密だ。」
まさか、恩恵の全知全能のせいとは言えない。だから、魅了を使ってから子供らしくない笑み言う。ドミアは、顔を真っ赤にすると鼻を抑えてそのまま寝てしまった。やり過ぎたか?
次の日の朝……。
「はっ、僕は昨日どうして……」
起き上がり、昨日の事を思い出し赤面する。大地君は、朝は苦手なのかまだフードを深くかぶり木に背中をあずけて寝ている。
「まったく、性格はともかくあの容姿は恐ろしいほど美しいですね。やられました……。」
ため息をつき、大地を見る。表情は、見えないけれど……可愛いんだろうな寝顔。
「………んっ。」
小さく呻くと、頭が寝ぼけているのかすこしぼーっとして伸びをしてから僕を見る。
「おはよ。」
フードを外し、立ち上がる。
「それにしても、魔物1匹も襲って来ませんでしたね。ここらは、魔物は居ないんですか?」
「居るよ。ただ、俺の魔法でどうにかしてる。」
訂正するならば、魔法なんかじゃない。
今の俺は、アルファに言われて自分に制限をかけている。それでも、駄目だと言われたので自分で魔力の気配を隠してもいる。そして、ドミアが気絶したのを見てこれはラッキーとばかりに自分で隠していた魔力の気配を解放したのだ。それだけで、命の危機を感じた魔物は一目散に逃げ出したのだ。
「なら、安心ですね。」
「まぁな。でもアンデット系には、危機感を感じる力が無いから効かないんだよ。」
欠伸をしながら言う。
『まったく、お前は優しすぎる。』
アルファが、ため息交じりに笑う気配がする。
『褒め言葉と受け取っとく。』
『褒め言葉だと思うけど。』
セフィロトの、優しい笑みの気配がする。
『なぁ、質問いいか?』
『何だ?』
『お前らが守りし、神の子って居るのか?』
2人は、目を合わせてからため息をつく気配。
『あの森の結界には、我らしかおらん。』
『つまり、居ないのか?』
『『…………。』』
『マジか……。』
2人が、複雑そうな表情をしているのだが気づいていない大地。2人は、ため息を漏らす。
「大地君?おーい、大丈夫ですか?」
「あぁ、大丈夫だ。少し、眠たいだけだ。」
内心は、少し驚いて頷く。
「はい、コーヒーいれました。」
「俺のこと、信じないんじゃないのか?」
ため息交じりに、コップを受けとる。
「もしかして、毒が盛ってあるとか?」
ジィーと、コップを見る大地に……
「そんなわけないでしょ!というか大地君、君にとっての僕の評価はその程度なの……。」
「もちろん、冗談だ♪」
暢気に、コーヒーを飲む。
「やっぱり、君は嫌いです!」
大地は、ただ笑うだけだった。




