「意識の海にて」
「やあ、おかえり。お疲れさま。」
うん、ただいま。やっぱりこう、ファンタジー世界はいいよね、夢がある。
「今回の世界は器との相性も良かったしね。それにしてもターゲットの転生反応光、任務開始からたった10日で消えたのには驚いたよ。残りの90日は、たっぷりと自由を謳歌できたかい?」
それはもう、堪能させてもらったよ。
各地を巡って、迷宮に囚われた美女を救って、村を襲うドラゴンを討伐して、五大英雄とやらの一人を激戦の末になんとか撤退に追いやって――ああ、楽しかった。あの世界で伝説にでもなってるんじゃないかな、僕。
「うんうん、楽しそうで何より。
そんな君に、うれしいお知らせが一つ。なんと、次の任務もファンタジー世界だ。」
おお、ホントに!?
……で、何か厄介ごとがありそうな気配だけど?
「あ、わかっちゃう?」
なんだかんだで付き合い長いしね。何か厄介ごとを抱えているとき、茶化すでしょ。
「うーん、ただまあ、厄介とはいっても仕方ない類のものなんだよ……研修なんだよね。新人の。」
ああー、なるほど、研修かあ。ベテランとしての責務ってわけだ。
「そう。もうついでに任務についても説明させてね。
次に向かってもらうFa49012世界では、キミの器は当該世界基準のごく一般的な肉体としてしか適応できない。
ただ、剣と魔法のファンタジー世界であるために、一般人とはいえある程度の魔法は使えると考えていい。」
十分。その世界の一般人並みの能力があれば御の字だよ。前回はラッキーすぎた。
「ちなみに今回の予想滞在猶予期間は約30日間。
研修初回の任務ということもあって、転生者が既に特定済のものを充てている。
もう少し詳しいことはまた現地の肉体に添えておくつもりだけど、何か今のうちに聞いておきたいことはあるかい?」
新人のプロフィール……は、別にいいか。
現場で見て、話して、先入観持たずに方針決めるよ。
「了解。それじゃ休息もなしに悪いけど、いってらっしゃい。幸運を祈るよ、エージェントAa004。」
ん。いってきます。