表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

マーブルな地球

作者: 凪海ゆずき


「地球って何色だと思う?」

 土曜日の昼下がり、陽の光が柔らかく回り込んだ明るいカフェで、サチが唐突に聞いてきた。

「何色って、そりゃ青でしょ」

「私は、マーブルだと思うの」

 また始まった、とミカは思った。サチのこういう突拍子も無い発言は日常茶飯事だ。サチは、アイスティーの氷をストローでクルクルしながらニヤニヤとミカの反応を観察している。

「なんでそう思うの?」

 そう尋ねると、サチは待っていましたと言わんばかりの顔だ。

「だってさ、この地球上にはいろんな人がいるでしょ? もしその人たちの心とか価値観が色で見えたら、地球は絶対マーブルだなって」

 はぁ、そうですか、という気持ちにもなるが、ミカ自身はこんなことを考えもしないので、面白い奴だなとも思う。

「それにね」サチが続ける。

「人間の体の中には、100兆個の細菌が住んでるらしいよ」

「何の話?」

 ミカには話がかなり飛んだように思うが、サチの中では何かが繋がっているらしい。

「ずっと同じ話だよ。私の中に住んでいる細菌たちにとって、私は地球みたいなものでしょ? もしその子たちに『私は何色?』って聞いて、『肌色』って言われたらなんか心外だなって」

 お前の話かい、と思いつつ、ミカは興味本位で聞いてみた。

「じゃあ、あんたは何色なの?」

「うーん、ピンクと黄色かな。あっ、緑もいいな」

 サチはうっとりとカフェの天井を見つめて答えた。また新しい妄想が始まっていそうだ。ミカはそんなサチを微笑ましく思った。

「私はあんたが何色でもいいよ」

「茶色でも? 黒でも?」

「うん」

「そうか、そしたらミカはどんな色の私のことも、いつも近くで見守ってくれる心優しい友人ってことになるね」

「そうだね」ミカは苦笑した。

「なんか、いい話になっちゃったね」サチは嬉しそうだ。

 唐突に、サチが右手を高く上げた。

「じゃあ、質問! ミカは何色ですか?」

「赤」

「おお、それは情熱的」

 今日もおしゃべりは止まらない。マーブルな地球の上で。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ