7.とある夢を語る
新築の家で朝をむかえた
朝食の時に、とある夢を語り出したサーモン
俺が一方的に喋りかけるなオーラを出してしまってたので、ほぼ無言で小樽へ帰った。
結構申し訳ない。
帰ってきた頃にはもう外も暗くなっていた。時計を見れば午後8時を過ぎているではないか。
ターミナルには、それとなく人が集まっている。帰宅時間なども含まれているのだろう。
そこで、気まずくなってる所をサーモンの持ち前の明るさで晴らす。
「か、カイザ。どんよりしてる所申し訳ないんだけど~…チーム組んでくれたり…するかな?」
あ、忘れてた。
俺はしばらくサーモンの顔を見つめる。
「どうどう?」
「そうだね…」
断る理由も見付からないので、
「いいよ、組もう」
オッケーしとく。
寝床にも困ってたところだし、家を建ててあるなら助かる。
「俺さ、札幌には生憎家を建ててないんだけど、許して」
「札幌と小樽は違うの?」
「うん。札幌はもう、戦士の聖地でさ、札幌のほとんどは戦士で溢れかえってる。小樽は戦士の数少なくてさ…カイザも俺達戦士をあまり見掛けなかったろ?」
「うん」
「都会に集まる傾向があって…でも、都会って土地高いからあまり好ましくないんだよなぁ。俺は安い所がいいと思って」
「へぇ…」
人口が密集してる所は土地も高いのは知っていた。戦士の数まで大きくなるとは。田舎は取り残されるばかり。
「でもね、給料というか報酬は都会より田舎の方が高いから、都会以外をおすすめしとく。小樽とド田舎を比べたら、札幌の方が高いんだけどね」
苦笑いして喋った。
「室蘭は土地が安いので有名よ」
「やっぱりか」
人口少ない為に、土地も有り余ってるから安くなってしまう。結構危機に陥ってる方。
「よし、俺の家へ行こうぜ!頑張ってお金貯めて建てたから早く見せたい」
「行こう」
先程までの悲しさはとうに忘れて、サーモンの世界に吸い込まれていた。
…・・¨°:°¨・・…・・¨°:°¨・・…。
家々が連なる通りに、一際目立つ色をした建物が建っていた。
色は紺色なんだけど、周りが比較的明るい色をした建物なので、暗い色が目立ってしまっている。
「あの紺の建物が俺達の家」
「やっぱりか…」
「何だよ、その反応」
「まーまー」と言いながらサーモンを流す。
そして、新しい我が家へ入ってみると、新品だからすごい綺麗。白を基調とした内装に、ベージュのフローリング。
少し長い廊下を歩くと、突き当たりに階段。俺から見て右にドア。
ドアを開けるとすぐに広いリビングがあり、奥にはまたドアが。そこを開ければ、また廊下があり、所々にドアがある。それぞれ開けるとプレイングルームや、風呂・トイレ等があるそう。
2階はトイレと部屋が3つ。広くスペースを取ったらしい。
「広いと思わない?」
「確かに広い」
まだ段ボール等が残っている。
家具もあまり置いてないから余計に広く見えるのだろう。
「俺が夜飯をご馳走してあげよう。その代わり明日荷物整理な」
「作れるのか…」
「おうよ」
意外すぎて逆に言葉が出ない。
荷物整理くらい、住まわせてくれる以上何も文句はない。
…・・¨°:°¨・・…・・¨°:°¨・・…。
サーモンの手料理が美味しかったので、全てを平らげる事ができた。
サーモン曰く、「料理できる男子はモテるから」と料理を勉強したらしい。
夜飯食べたらすごい眠くなってきた。
「カイザ眠そうだね、寝るか。明日の為に」
「うん」
俺の目は限界が来ていた。今日は本当に動いたと自分でも思う。
…・・¨°:°¨・・…・・¨°:°¨・・…。
翌日の朝。
目が覚めた俺は、ゆっくり起きてみる。学校というものがないとわかると、すごい楽に起きられる。
そういえば、学校行かなくていいのかな。
かれこれ何日経ったっけ。確か俺、授業皆勤目指してたのにもうなくなったじゃん。
けど、もうそんなことはどうでもよかった。戻り方知らないので。
下へ降りてみると、既にサーモンの姿が。朝飯を作ってくれてるそう。
あの容姿にしっかりした性格してるから、絶対モテそう。あれはモテる。
「あっ、はよーっ」
「お、おはよう」
おたまを持って振ってきた。汁が飛び散ってるから。
「今味噌汁作ってるから待ってて~」
「うん」
何だろう、女子力を感じられる。
あれが女だったらなあ。
あらぬ事を思う。
「今日さ、荷物片付けた後札幌行こう。何か仕事探しに」
「え、わざわざ札幌行くの?」
「おう、小樽にはあまり仕事がなくて。モンスター出たら別な」
「モンスターってどうやって出てくるの?」
「普通に歩いて」
「はぁ!?」
恐ろしい事を言ってるんじゃねぇよ。
そう思ってた時、サーモンは朝食をトレーに入れて持ってきた。俺達の分を置いて、サーモンが座ったと同時に俺は聞く。
「モンスターって野良なの?」
「ん?…あぁ、そうなるのかな」
「ちょっと…それ危ないじゃん」
「そうなんだよな。小樽も頻繁とまではいかないけどさ、結構モンスター出てくるからね」
「いやいやいや、余計危ないんですけど!?」
サーモンは味噌汁を口に含んでから言う。
「それを俺達が倒して、有名になるんだろうがよ。そしたら俺達は仕事めっさ入ってくるぜ」
お前はどんだけ前に出たいんだよ。
「いや…有名にはならなくていいけど」
「なぬ?その言葉聞き捨てならぬわ」
「だって無理でしょ、普通に考えて」
「諦めるの早いから!」
少なくとも俺は有名になれないと思う。サーモンだけが前に出て、俺なんてサーモンの連れくらいにしか思われない、もしくは知られない。
「俺の夢をぶち壊すなよぉ~。他にもさ、道内一の最強戦士も目指してたのに」
「絶っっっ対、無理!!!」
「何でぇ~…」
最強とか夢見すぎ。どうやって強くなるんだよ。運動神経なくなった俺にどうしろって言うんだよ。
「せめてさ、市内一とか」
「無理」
「いや、小樽だよ?数少ない戦士の中の頂点くらい取れるって」
「そう思うじゃん?無理だから」
「そういう戦士が過疎ってる所って、大抵は弱いヤツばっかりなんだよ」
「なぜ」
「札幌に惜しくも残れなかった自惚れ野郎達が、隣にある町に来るんだから」
札幌の絶対的存在。
都会はなぜそう厳しいのか。
「キモいわ、何か本当にキモい」
「えぇ?」
「あー、ほらぁ。話してたら飯が冷めたじゃん」
「結構カイザ夢中になってたよな?」
「なってない」