6.絶望
地元に着いて、家まで行ったのにも関わらずありもしない事が。
悲しくて相方に当たってしまう。
「着いたぜカイザの故郷へ!」
サーモンは室蘭のターミナルまで着くと、バッと両手を上に上げた。「うわぁ~」と叫び、手を下ろす。
「どこどこ?カイザのお家はどこ?」
「いや、もう1回バス乗るけど」
「そうかよっ」
少しがっかりしたように言う。まぁ、バスの乗り継ぎで呆れるのもわからなくもない。
次のバス停までは、15分以内に着くと思うので少しは気が楽になるんではないだろうか。
俺は時刻を見に行ってみると、すぐ出てくるバスがあった。
「サーモン、もうバス停行くよ」
「マジか」
「急げっ」
俺達がバス停に向かう頃には、バスが停まろうとしていた。
「ヤバいヤバい、あれだっ」
「うおー、まだ人乗り込むなよぉー」
3人くらい人がいたが、3人ならすぐに乗り込んでしまうだろう。乗り切る前に乗らなければ!
「セーフ!」
「助かった…」
乗り過ごしても、1時間に2本バスがあったので構わないと思うが、あるなら乗りたい。
バスに揺られること15分前後、バスを降りてから歩く。
「近いの?」
「ここから5分くらいでつくよ」
「おっしゃあ」
距離が長そうに見えてそんなんでもない俺の家からバス停。早いときは3分で着いてしまう。
歩く途中、公園があるので公園を通ってかなり少しの近道を。道路を通ったってあまり変わらないが。車が通れば少しロスするだろうし。
今は3時30分過ぎ、小学生や幼稚園児達が遊んでいた。昔と比べれば過疎ったなぁと感じられる。
「あれ…」
「なした?」
なんか見慣れた公園と違う気がする。いや、気のせいか?ジャングルジムなんてとうの昔に撤去されたはずなのに、また新しくなってあるけど…。
俺毎日公園通ってるから気付かないわけがないと思うのに。
「おーい、カイザ?」
「あっ、ごめん。何か変わったなと思って」
「そうか」
取り乱してしまった。申し訳ない。
「あ、もう少しだよ」
出口が見えてきたので、向かって歩く。
「あの小路入るよ」
「おうおう」
小路へ入って行くと…
「あれ」
見慣れた家が1つもない。
「うそ…合ってるはずなのに」
「どうした?」
下から白い家、その隣に俺の家があって、その俺の家の隣は空き地、その隣は商店をやってるはずなのに。何1つ知ってる家がない。
向かいの家もそうだ、見たことがない。
俺は少し怖くなって、俺の家であってほしい家へ走って向かい、表札を見る。
「誰だよ…」
表札には、【佐藤】と書いてある。
「カイザの家ないの?」
「…うん......」
「マジかよ」
俺は今にも泣きそう。今喋れば泣き出すかもしれない。
「親は何も言って来なかったんでしょ?」
「うん」
「どうしてだ…」
俺にはさっぱりわからない。やはりここは異世界なのか?じゃあ、なんでこんなにも忠実に再現されてるんだ。配置だって全く同じ、建物は所々違うが、同じ所だってある。
「なぁ、サーモン…」
「ん?」
「ここは何なんだよ。ナビゲーターは出るわ、何も言われず小樽に取り残されるわ、家がないわ…。どうなってんだよここは!?」
サーモンに訴えた。俺は今目から涙が溢れ出ているだろう。
「今の日本はこんな普段から武器持ってたら捕まるだろ!?何で今こうして銃や弓を持ってんの。何チームって。もう俺にはわけわからないよ!!」
「ちょっ、落ち着こう、な?」
サーモンに止められるが、今の俺は絶望しかなく、言うことも聞いていられなくなる。
「俺もお前の言ってる事がわけわからない」
「はぁ?」
何とぼけてんだよ。
「ナビゲーターって何?武器持ってたら捕まる?何それ、どういう事?」
「えっ、お前ナビゲーターに会わなかったのか?ナビゲーターに会ったから、今この仕事?してるんじゃないのか」
「え、いや、普通に仕事として、俺の意思で始めた事なんだけど…」
ますますわけわからなくなった。
ナビゲーターに会った俺は一体何なのか。サーモンは元々この世界に最初からいる奴なのか。
「意味わかんねぇ…」
「俺も」
ここは異世界確定か。異世界確定したところで、ここへどうやって来たのか知りたい。
「戻ろう…」
「え、あ、うん」
せっかくここまで来たのに、また小樽へ戻らなければいけない。サーモンには申し訳なさしかないが、結局は戻ることになるのだから。
本日二度目の投稿