12.新しいお供に有名への第一歩
「はぁっ…はぁ......」
「疲れた......死ぬ…」
「私こんなに猛ダッシュしたの初めて…」
俺達3人はバテた。端から見れば、俺達は異様な光景に見られていたに違いない。全力猛ダッシュで道を駆け走っていたのだから。
セールをやっているから、人通りも多い。祭りみたいに隙間なく集まってるわけでもないが。
弓売場へ急ぐと、サーモンは何やら紙切れを受付のおじさんに渡した。
「この条件に合う弓はあります?」と。
あの紙切れ、見覚えがある。......そうだ、俺の悪口を書いた紙ではないか?あんなもんをここで見られるとは思わなかった。
きっと、あれを見ているおじさんは運動神経無いんだな、とでも思ってるんだろう。何とでも思えこのやろう。
おじさんは後ろに並んで立て掛けてある弓とにらめっこし、顎に手を当て考える。
無いなんて言わせないからな…。
ハッと閃いたようにおじさんは弓を手に取った。俺の好きな青色をした弓だった。しかもデザインがかっこいい。黒いラインが入っており、いかにも強そうなオーラを漂わせてる気がする。
「これでどうだい」
手に取った弓をサーモンに渡した。
それから俺に渡してきて、「試し射ちしてみなよ」と言ってきた。
俺は、フワワやおじさんの見てる前で試し射ちするのが恥ずかしい。外したことを考えてしまうと余計に。
俺は弓を構える。すごい軽いのがわかる。それから、弦に矢を引っ掻けて引っ張る。
ギギギ…と音が鳴るが、決して壊れてるわけではない。
狙いを定めて、いざ的へ射つ。
ストンッ、と気持ちいい音が鳴った。的には当たったようだ。よくよく見てみると、中心に当たっていた。
「ヤバ......」
「すげー、カイザが中心当てた! すげーじゃんカイザ!うははっ」
褒めてくれるのは嬉しいが、何か馬鹿にしてるようにも聞こえてならない。
「君やるねぇ。フォームも綺麗だったし」
「マジすか」
「よかったなカイザ」
まさかフォーム綺麗って言われるとは。俺は気にせず射っていたのに。
俺には才能ってもんがあるのかもしれない。雑魚って舐められちゃ困るわ。
「どうするカイザ?この武器にする?」
「......うん、これにする」
「毎度ありぃー、おまけしちゃる。6万のところを......3万でどうだ!」
「おじさん、よっ、太っ腹!」
サーモンは財布から3万円札を取り出し、おじさんの前へ置いた。
「調度預かるぜ~」
おじさんは札を引き出しに入れた。
弓と一緒に保証書を渡してきた。期間は今から1年間のようだ。
「その今持ってる弓どうする?売るかい?それとも持って変えるかい?」
おじさんがそう言ってきた。
これはもう使い道ないし売って金にした方がよさそうだ。
「売っていいよね? サーモン」
「そうだな、売るか」
俺はこの弓と引き換えに新しい弓を手に取る。その弓を背中で背負う。弓に掛ける紐が付いてるので持ち運びに便利なのだ。
「これは~…」
おじさんはしばらく止まった。
どうしたんだろう?
疑問が浮かび上がる。
「これって......遥か昔の英雄、ギアラーダ騎士の使ってた弓のモデルだなぁ」
「ギアラーダ…?」
俺はそんな名前聞いたことない。
「今の青の国の出身者だ。相当な有名人だぜ、青の国ではな」
「へぇ.....」
「ギアラーダの名前って、フテルーガですか?」
サーモンが割って入ってきた。サーモンは名前まで知ってるのか。
「そうだ、フテルーガ・ギアラーダ。よく知ってるな」
「戦記ものは好きで好きで」
「そうかそうか。なら、この弓も残しておきたいと思うんじゃないか?」
「......実物じゃないから、いいかな」
お前は欲張りか。
俺なら貰う。実物なんて手に入るわけないんだから。
「はははっ、そうか、面白いやつだな。これは5万で売ろう」
「ありがとうございます」
サーモンは5万を受け取る。
サーモンは結構金持ちそうに見える気がする。
「おじさん、今日はありがとうございました。楽しかったです」
「なんのなんの。またおいでな」
「はい」
ほら行くよ、と俺達に声を掛け、この場を去った。
この武器屋通りを出ると、フワワが尋ねてきた。
「このメンバーの集合拠点的なものはあるんです…じゃなくて、あるの?」
「あるよ、俺が頑張ってお金を貯めて建てた家が!」
「ってことは、そこで一生を過ごすってこと?」
「そゆことー」
「私もそこに行ってもいい?」
「全然オッケー! もう、フワワの為に残りの部屋を残しておいたようなもんよ」
まぁ、フワワの為かどうかはわからないけど、残しておいたのは確かだ。フワワじゃなくて他の人の物になってたかもしれないけど。
「わぁ! 私、そのつもりで家を出てきたようなもので。もしチームが見付からなかったらどうしようかとハラハラしてたの」
何もそこまでしなくてもいいのに。
けど、これからは一緒に暮らせると思うとなんだか楽しみになってきた。初の身内じゃない異性との同居とか、俺の友人に言ったら裏やましがるだろう。戻れたら自慢しないと。
「すごい賭けに出てたんだな。これからは家族みたいなもんだな、よろしく」
「よろしくお願いします…じゃなくて、よろしくね」
この子いちいち敬語抜けないみたいだな。敬語も敬語で可愛いと思う。
サーモンは、やることないから家帰ろう、と言って家まで足を進める。
依頼などは1日受けなかったところで何にもならないのだろうか。
何にもならないから今こうしてゆっくり?と過ごしているわけか。
「何事だ」
サーモンが言った。俺とフワワは何だ?と思いながら、サーモンが見る同じ方向を見てみると警察が立っていた。
「え、俺捕まるのかな」
「いっそのこと捕まれ」
「酷いよー」
別に俺達の家の前に立ってるわけじゃないから無関係だろ。
気にすんな、と一声掛けて家へ入ろうとすると、
「ちょっといいですか」
警察が俺達に声を掛けてきた。
サーモン何かやらかしたのか?
サーモンは恐る恐る警察に反応する。
そんなんじゃ怪しすぎるわ。
「ここにお住まいで?」
「そうですけど......」
「ならば、ここ付近のパトロールはあなた方に任せてもよろしいでしょうか?」
「パトロール…?」
「前の紫神竜事件に伴って、パトロールを始めた方がいいと。この町は戦士が少ないから、私共警察が出回っているわけなのですが、さすがに人手不足なので」
そうか、人手不足か。なら仕方ないのか。警察の数にも限りがあるだろうし。
いつまた恐ろしいモンスターが出てくるかわからないので、サーモンの夢見る人気者にもなれる近道かもしれないだろう。
「そういう事ですね、ならば承ります」
「協力感謝します! では、どうぞお帰りくださいませ」
敬礼して見送ってもらった。
サーモンは家に入ると、
「うわー、緊っ張したぁー、すげー緊張したんだけど!?」
「お前、あの反応は何かやらかした反応だろ。…もしかして何かやらかしたのか?」
「してないから!」
断固否定。俺もサーモンが何かやらかしてる様子など見たことないので、ないと思うのだが。あっても困る。
「パトロールっていつ回ればいいんだろう」
ふとした疑問をフワワが言った。
俺もサーモンも言われてみれば、という反応。
「適当に回っておこう」
「いやいや、それでいいのかよ。人気になれるかもしれないのに」
「えっ、人気? 人気になれんの!?」
てっきり人気目当てで快く引き受けたのかと思ったじゃん。
そうでもなかったようだ。
「パトロールして、人々に応援されて、いざモンスターに出会って倒したら、人気者になれそう」
「うぉー。その考えはなかった!」
もう馬鹿なのか何なのかわからないわ。もう、天才の域を越えてる。
「有名なりたいの?」
「そうなんだよフワワ~、皆の視線を浴びたい」
「そっか、頑張ってなろうね…!」
「うんうん、フワワはノリがよろしくていいわぁ~」
正気かフワワ。俺達が人気者になれるとでも思ってるのか。もしかして2人とも馬鹿か。
2人とも馬鹿だと気付いて何があるわけでもない。
俺は存在を消していたテレビの前へ座る。実は端にいたのだ。
俺はこの世界の情報がなさすぎるから、今からでも情報を得ないと後々恥をかきそうだ、
俺はテレビをつけると、料理番組が。ぶっちゃけこの番組はつまらないので、チャンネルを変えると天気予報がやっている。これは今の月日を知るチャンス。
『今の札幌の天気から見ていきましょう』
俺達がいるところの天気が出るのを待つ。
しばらくして小樽の文字が。気温15度、1日中晴れ。......さて、何月だ。秋は絶対ない、枯れ葉とかまだないから。ってことは春か夏か? 夏だと気温低い方…かもちれない。てことは春か、春なんだな。
天気予報の最後だと思われるところで、桜の開花予想が。これは完全に春だな。
安心しきったところでチャンネルを変えた。しかし、あることに気付く。
あ、何日か見るの忘れてた。
週間天気予報もやってたのになぜ見なかったのか。俺も俺で馬鹿だ。
諦めて次の情報収集。何でもいいから今の日本を知らなければ。
「カイザ、何真面目になってテレビ見てるの。せっかくフワワ加わったのに」
「いいから見させろ。フワワは毎日いるんだからいいって」
ニュースで俺がいつまでたっても帰って来ないって騒ぎになってたりする可能性もゼロではない。もしかしたら俺の名が出てるかもしれないのだから。
それも少し期待してテレビを見続ける。......結果出てこなかったが。
騒ぎにはならないのか。
「おっ、見ろ、ベテラン戦士最高司令官」
いかにも強そうな雰囲気。
頭はスキンヘッドで、筋肉ムキムキ。鎧を着ており、武器は普通の剣か。
インタビューなんて受けちゃって。声は野太い。
「俺もああやってテレビに出たい」
「え…無理そう」
「まーたそうやって。夢を壊すな!」
「テンパってまともに喋られなさそう」
「それ私も思う!」
「フワワまで!?」
サーモンはこうしてヘラヘラしてるが、いざというときは駄目になるタイプに見えるのだ。
「お前ら覚えてろよ…俺だけでもテレビに出て人気になるからな!」
「なれるもんならどーぞ」
「頑張って…!」
面白さ自分じゃわからぬ…




