10.突然訪れる危機
警報が鳴り、外へ出たらとんでもない生き物を目にする。
現実世界ではありえない巨大な生き物。
しかし、市内にいるのはベテラン戦士ではなくほぼ初心者。頼れる存在など主人公の相棒くらいしか…。
けど、努力は報われるのだ。
「カイザ」
誰かに呼ばれてる。
ただ、眠くて目を開けたくない。
「カイザー?」
薄目で見てみると、案の定サーモンだ。この家には俺とサーモンしかいないから。
俺は腕で目を隠す。部屋の中は電気で照らされており、ちょうど電気が目に入って眩しい。
「起きてるなカイザ。夜飯できたんだけど」
「起きるのめんどい…」
「それわかるよ、うん。でも食べないと体力つかない。特にカイザは」
こいつは俺を運動神経なしと認めてるんだろうな。事実だけど悔しい。
俺はゆっくり上体を起こし、四つん這いになってテーブルまで移動する。
「明日から市内の依頼でも受けに行こうぜ」
「札幌やめたの?」
「行くの面倒だから。それに、公式ページ見てみたら結構依頼溜まってる」
「公式ページなんてあんのか」
今の時代なら有り得るか。学校を紹介するサイトだってあるんだし、受託所もあるか。
俺は湯気がたっている肉じゃがの芋を口に運ぶ。かなり熱い。
「熱かったか、仕方ないな。ハハハハッ」
「笑うなし」
なんとか飲み込んで、次の具材を食べようとした時、
ウィン、ウィン…。
何やら警報音が鳴り響く。地震とか津波かとも思ったが、揺れる気配はない。
何これ、すごい怖いんだけど。
怖くても、口に出すのは恥ずかしい。
「さ、サーモンこれ何…」
「しっ」
サーモンがそう言うと、次に、
『避難警報、避難警報。住民は直にお近くの頑丈な建物へ避難してください。なお、モンスターと太刀打ちできる者は残ってください。もう一度繰り返します…』
突然の避難勧告。俺達は逃げるべき存在か?
「カイザ、俺達は今仕事ができた。例え俺達が雑魚でも住民の命を守るのが優先、わかるな?」
「で、でも、俺達じゃ…」
「そういう決まりだ!」
サーモンの真っ直ぐな瞳。これは行かなければならないようだ。
雑魚にも雑魚なりに頑張れば報われるかもしれない。努力は報われるのだから。
俺達は急いで支度をして、例のモンスターの元へ行こうと外へ出れば…。
「えっ…」
「でかいな…」
かなり遠くにいるのは確かだが、でかすぎてこちらまで姿が見えてしまっている。
頭と首は余裕で見えているその色は、気味が悪いくらいの紫。大きい羽根も紫で染まっている。
「多分あれ、ベテランの求める世界最強の竜だと思うよ。確か…紫神竜かな。ほら、赤神竜の仲間」
「マジかよ…あんなの勝てるわけないじゃん」
「うん、勝てないよ」
「え」
「足止めとか気を引くくらいできる」
「行くよ」と言い、サーモンと俺はダッシュでモンスターの元へと駆け付ける。
この市内の戦士の数は多くない。救援は札幌からベテラン戦士を連れてくるみたいだが、距離も距離。そう直ぐに着くわけでなない。多少の死人が出る可能性だって有り得る。
走ること15分弱、モンスターの近くへと近付く事ができた。…が、俺はバテて動けない。
「カイザ止まってる暇ない!」
「でも…」
疲れるもんは仕方ないんだよ…。
俺は頑張って体を動かす。弓を手に取り、相手に向けるが、このちっぽけな弓矢では死ぬはずがないのは目に見えている。
一方のサーモンは、マシンガン二丁で攻めようとしている。
お前二丁も持ってたのか。
打つ前に、周りを見渡してみた。戦士は数人しか見当たらない。もしかして、他の戦士は逃げたのか?
気を改めて、モンスターへ気持ちを切り替える。このしょぼい弓で太刀打ちできるのなら、何度だって射とう。
他の逃げたクズ戦士よりできると、逃げたクズ達に思い知らせてやろう。
俺は俄然やる気出てきた。恐怖より興奮の方が強くなってきた。こんな危機的状況でどうしたんだ俺は。
俺は弓を連射する。血が少しでも出ているのが見てとれた。
「カイザ、届くかわからないけど頭の方狙ってくれないかな!」
「了解…!」
頭に照準を合わせると、ふと視界に誰かが通ったのが見えた。
俺はそれを目で追うと、女の子の姿が。危ないなと思い声をかけようと思ったが、よく見れば何か武器を持っていた。女戦士か。滅多に見ないな、そういえば。
「逃げないなんてやるな…」
女こそ怯えて逃げてそうだが、あの子は強い、とにかく強い。
あの子に見とれて、戦闘風景を見ていると、相手モンスターにすごく近付いていく。
武器は…あれは何だろう。視力悪くて見えないが結構でかい。
女の子は、両手に持ってるでかい武器を上に豪快に振り上げると、その場に竜巻ができた。
「え!?」
人間にあんなことできるのか。ますますここが何なのかがわからなくなる。
竜巻にぶつかったモンスターは少しながらもよろけた。
そのあとは、ただひたすらに切り続ける。
しかし、全然効かない。相手は平然を保っている。
やはり、初心者もどきじゃコイツなんか相手にすらできないのか。
「グルガアアアァァァァァッッッ!!」
耳が壊れそうなくらいの雄叫び。鼓膜が破れるかと思った。
すると相手は、片足を上げ、そのまま地面に思いきりぶつけた。その衝撃でこの場は揺れ、立てないほど強くて尻餅ついた。
ヤバい、これはヤバい。
モンスターが暴れだしてしまった。これは効いてた証拠なのか?
先程まで接近していた女の子が下がった。
「カイザ、これはまずい」
「どーすんの!?」
「....えっと」
「危ないっ!!!」
先程の女の子がそう叫んだ。上を見上げれば壊された家をモンスターが持っていた。それを今、俺達に落とそうとしている。
「ヤバい…!!」
できる限り俺達は逃げた。そのまま飛び込み、飛び込んだ先にある壁に思いきり背中をぶつけた。
幸いにも避けられたが、モンスターの暴走は止まらない。
戦闘開始してからどのくらい経っただろうか。案外そんなに経ってないかもしれないな。
モンスターはこちらではなく、逆方向へモンスターは歩いて行ってしまった。
「ちょっ…全力で止めろおぉぉぉ!!」
隣でサーモンが叫んだ。
すると、女の子が直ぐ様駆け付けた。向こう側にいた戦士はどうしてるのだろうか、俺達も急ぐ。
「カイザ、できるだけ足を狙った方がよかったかも」
「頭は!?」
「頭は後でいいや。足狙って歩けなくする」
「なるほど」
言われるがままに足へ連射する。
射たれ続けている足の周りは血だらけ。いっこうに怯む気配はない。
「うおらああぁぁぁっ!!」
突如上から叫び声が。見上げると、モンスターめがけて大きな剣を降り下ろそうとする男の姿。
その剣は見事に頭に命中。潔く血が飛び散る。
他にも次々と手慣れた手つきでモンスターを相手にする人々が。助けが来たのか。
「3人とも無事でしたでしょうか?」
助けに来てくれたうちの1人が俺達に声をかけてきた。
「大丈夫ですけど、他の戦士は?」
「他の戦士…?あなた方以外は見なかったですが」
「うっそ!?」
サーモンはすごい驚く。正直俺も驚く。他は死んだのか。
いや、死んだら死体くらい残るだろうか。.......もしかして食べたのか?
「他は死んだ可能性が高い。あなた方は休憩なさっててください。私共が何とかしてみせます」
頼もしい言葉を残して、男はモンスターへの元へ走った。
俺達よりもすごいダメージを与えている。
モンスターはたちまちよろけたりもしている。やはりベテランは違う。
「あの…お、お怪我はありませんでしょうか?」
「ん、あぁ。ないです…よ」
「よかった…。そ、そちらの赤髪のお方は…?」
「俺?俺は元気100倍よ」
「よかった」
果敢に攻めていた女の子がほっと胸を撫で下ろす。
「あ、君…」
「…はい?」
「あの、さっきはありがとう。危ないって言ってくれてなかったら俺達死んでたかもだし」
「そうだそうだ!お前さんには感謝してるわ俺も!」
「......あ、いえ…そんな、......どういたしまして…」
女の子は照れた様子。可愛い感じだ。
近々アナログで登場人物の絵を簡単に載せようかと思ってます