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道(タオ)戦略的老子の解釈  作者: 公心健詞
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秘めたる思い

大阪での合戦がはじまる

茶々丸は大阪城を要塞化して立てこもっていた。

 茶々丸軍はこの要塞化された大阪城の中に全員集約されているように見えた。偵察部隊が調べたところによると、周囲に人影も無い。その代わり、どこからつれてきたのが大量の野犬が徘徊しているようであった。それも数千頭という莫大な数である。

 武士は大阪駅川から大阪城に距離をつめ、天神橋筋を通って天満橋方面から大阪城に接近する策をとった。

 そして、大川にかかった橋を部隊が通過した時である。

 いきなり橋の上を通過していた部隊に敵軍が襲い掛かった。

「ユーベルトートだ!」

 誰かが叫んだ。この天満橋に向かう大川にかかる橋の下には中洲があり、その中州に下りる螺旋階段がある。その裏に少数の部隊が張り付いて隠れていたのだ。戦略上はそんな少数では意味がないが精神的衝撃は大きかった。

 しかも衝撃的だったのが、その部隊を指揮している人間がユーベルトートの格好をしていたことだ。かつて散々煮え湯を飲まされた恐怖が松平軍に蘇る。

「周囲を取り囲んで一斉に攻撃せよ!」

 指揮官の怒号が飛ぶ。兵士たちが手段でユーベルトートに襲い掛かる。

バウン!

 白い煙を上げてユーベルトートが自爆した。調べてみると吹き飛んだ首からそれは真田軍の後藤次基ごとうつぐもとだと分かった。

 ユーベルトートに偽装した死体を兵士が回収する中、兵士たちが高熱を発してバタバタと倒れた。兵士たちの体中に大量のカサブタができている。至急防疫部隊が出動し、検査した結果、炭素菌だと分かった。細菌兵器だ。

 炭素菌は動物と人間に共通に感染する。野犬を使って人に感染させる方法も使われる。

 武士は急遽軍を撤退させた。

 大久保忠子ら武黒衆は自分たちにどれだけ被害がでても大阪城を無理攻めしたいと主張したが、武士は一時撤退を命令した。部下の命には代えられない。結果、戦争をすれば人は死ぬ。しかし、その数は極力減らさなければならない。

 武士は藤林長門に命令し、大阪城内にもぐりこませ、そこで働く女官たちに接触させた。日本橋の業者を装い、少女マンガや同人誌を城内でヒマをもてあます女官たちに格安で配ったのである。それだけではなく、フォークソング歌手などを茶々丸応援隊として城内に潜入させ、反戦歌を歌わせた。拳銃から花へ。その掛け声のもと、大量の反戦、厭戦漫画を城内に搬入し、反戦歌を歌わせた。そして、ついに兵士たちまで反戦歌を口ずさむようになった。

 武士はその頃を見計らって、茶々丸に使者を送った。細菌兵器で苦しむ兵士たちを見て戦争の愚かさを悟ったと使者に告白させた。それに茶々丸は大いに共感し、真田繁子らが反対するも、武士との講和を決断した。

 武士は、大砲から花へ、のスローガンのもと、自らの持ってきた武器弾薬を大阪湾に投げ捨てた。大量の武器弾薬が大阪城の堀の中に投げ捨てられた。

 これに気をゆるした茶々丸は武士と面会することを求めた。

 武士は平身低頭して茶々丸に謝罪し、政権を明け渡すと告げた。そして武士は茶々丸とともに反戦映画を見た。

 武士はその映画を見て号泣した。その姿を見て茶々丸も武士に気を許したようであった。

 そして、武士は、「もう武器は見たくないから、武器を捨てた堀は埋め立ててしまってその上に花を植えましょう」と提案し、茶々丸はそれを快く受け入れた。

 かくして、大阪城の堀はことごとく埋め立てられた。

 大阪城の堀が埋め立てられると、武士は躊躇なく、隠し持っていた予備の武器を動員して大阪城を攻めた。

 これであっけなく大阪城は落城するはずだった。

 が、城を抜け出した真田の軍が松平本隊に突撃を開始する。しかも、その軍を指揮しているのがユーベルトートだ。

「そんな手に何どもひっかかるか!叩きのめせ!」

 武士が号令をかける。しかし、大阪各地にユーベルトートの扮装をした軍が現れ、ゲリラ戦を展開した。

 各地で勃発するゲリラの掃討作戦に手を取られ、松平軍は拡散してゆく。その状況を危惧して大久保忠子は武士を守る増援部隊を後方の予備兵力に養成した。

 しばらくして増援部隊が到着する。

 しかし、その増援部隊が突如として武士に襲い掛かった。

「しまった!真田軍だ!殿を守れ!」

 大久保忠子が叫ぶ。各地で発生するユーベルトートの軍隊、その執拗なまでの繰り返し。これによって、真田軍は必ずユーベルトートの扮装をしてやってくると松平軍に錯誤させる伏線であった。

「死ねい、松平武士!」

 間隙を縫ってすばやく真田繁子が槍をもって武士に突進する」

「もらったっ!」

 ザクッ!

 鈍い音がして鎧の隙間に槍が深く突き刺さる。

「ぐはっ……なぜだ……」

 真田繁子の口から血が流れる。繁子の前に立ちはだかり、繁子に槍を突き刺したのは矢沢頼安であった。

「信子様を守るためです。そのためなら私は鬼にでも蛇にでもなる」

 その言葉を聞いて繁子が微笑む。

「そうか、お前姉上を……」

 そういいながら真田繁子は前のめりに倒れた。

 真田繁子が死んだことが分かると、明石登全は敵中突破をはかり行方知れずとなる。

 猿飛サスケ、霧隠サイコ、浅井伊織らは敵中に切り込んで戦死。唯一、毛利永勝のみが敵中突破して大阪城の茶々丸の元に帰還した。毛利永勝以外全員死亡したことを聞いて茶々丸は絶望し、ピストル自殺した。永勝はそれを見届け、自分もピストル自殺して果てた。

 合戦が終ると、茶々丸に講和をすすめた女官たちが武士に戦勝祝いを持ってくるとともに恩賞を求めたが、武士はこれらの者らを追放した。敵を裏切るものは味方も裏切るからだ。

 そして、戦いに終止符が打たれようとした時、南のほうからけたたましい戦闘ヘリの羽音が聞こえてくる。それは、数百機のアメリカ軍の戦闘ヘリであった。

「ああ、ついにボクが殺される番が来たか。」

 武士は目をつぶり手を合わした。

 アメリカ軍のヘリは、武士に近づいてきて、ほんの100メートル近くまで接近する。しかし、そこでホバリングして動かない。

 武士は目を開いて、その光景を呆然とながめた。しばらくすると、ヘリは帰っていった。

「何が起こった……」

 そこに本多正子が駆け寄ってくる。

「いま、ニュースでミッキー・ポーカーがアメリカ大統領に選ばれたとの報道がありました!我々の勝利です!」

「ああ、そうか……ミッキー大統領の初仕事がこれか」

 武士はそうつぶやいてほくそえんだ。


そして収束へ。

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