家族への思い
妹の真田繁子が大阪方に味方したと聞き愕然とする真田信子
大阪に進軍する松平軍の中に真田信子の軍勢もあった。補給のため一時軍が停止していたときに真田信子の携帯に電話が入る。
「何?大阪方についただと?バカな!いますぐそこをはなれろ!私が何のために屈辱に耐え、松平にヒザを屈してきたと思っているのだ。お前ら家族と家臣のためではないか。それを何ゆえ捨てるのか!ユーベルトート様のため?そんなものはこの世にはいない!いますぐ帰ってこい!」
電話は切れた。
「どうなさいました!」
矢沢頼安が駆け寄る。
「繁子が……繁子が大阪方についた。いままで家族の幸せを思い、屈辱にもたえて家を守ってきたのに。それも全て家族のためではないか、それを、何が忠義か、忠義というなら幼い頃から自分を育て、はぐくんできてくれた親、家族に第一の忠義をはらうべきではないのか!ううう……」
真田信子は心労のあまりその場にうずくまってしまった。
「信子様!だれか薬師を!」
矢沢頼安が叫んだ。
「私は……妹を討てぬ、家族を討てぬ……」
体を震わせて真田信子がうめいた」
「ご安心ください、この矢沢頼安が名代として大阪には向かいます」
「待て、その事情はなんと説明する、まさか大阪に繁子がいると伝えるのではあるまいな!」
「伝えます。どうせ松平方にも伝わることです。そのまえに我らが松平方に伝えることこそお家を守ることでございます」
「それでは繁子はどうなる」
「お家のために死んでいただきます」
「そんな!お前は私の家族を殺すというのか!」
「わたしがあなたにお使えしてきたのは、ひたすらお家を守るため。中野の女、子供、老人を守るためでございます。信子様にあずけられた軍隊も、すべてはつまるところ己の家族を守るために動いておりまする」
「しかし……繁子は今となっては私のただ一人の家族。何のために室賀正子を落としいれ討ったのか。あそこまで嫌な思いをして中野をこの手にしたのも、たった一人の家族、繁子をやしなわんがため」
「おそれながら……その室賀正子にも産んだ親もいれば家族もございます。それを殺したのは、あくまでも、中野の領民をまもるため、お家を守るためでございます」
「家のためなら私も討つのか」
「はい」
矢沢頼安はそういうと真田信子を直視した。
「ならばどうなさいます。ここでこの矢沢頼安を殺しますか」
「……是非もなし」
真田信子の目から一筋の涙がながれた。
真田信子は急病を理由に松平本隊から離脱し、数人の共とともに中野に撤退し、真田軍は矢沢頼安が率いることとなった。
心労のあまり倒れる信子にかわり、大阪に向かう矢沢




